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アックスピーク
締めはやっぱりアウロさんの料理で
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みんなでお店に戻ると、緊張した表情を見せていたお店のみんなも表情を緩めました。終わった事への安堵で自然と笑みが零れて行き、緊張していた空気が緩んで行きます。
アックスピーク達は何事も無かったかの様に元気な姿を見せていました。白い羽が陽光に照らされキラキラと乱反射してとても綺麗です。キラキラと輝きながら、寄り添う親子の姿は神々しくもありました。
「お帰り」
アウロさんの短い言葉に事の終わりを感じ、安堵の笑顔を返します。モモさんもラーサさんも、フィリシアもみんな同じく安堵を覚えたのでしょう、嘆息しながらも笑顔を見せてくれました。
表玄関に回ると、ユラさんとネインさんが玄関の扉を一生懸命に直していました。ネインさんは何度もハルさんに頭を下げ、ハルさんは笑顔でネインさんの肩に手を置きます。
ハルさんに誘われ、私達は食堂へ向かいました。
カップから上がる香ばしい香りを前にして、ハルさんに注目して行きます。
ハルさんはゆっくりと頭を下げると、事の顛末についてポツポツと話し始めてくれました。
「みんな、今回はいろいろゴメンね。それとありがとう。大きな事言っておいて、みんなに怖い思いをさせちゃってゴメン。【スミテマアルバレギオ】のみんなもありがとう。おかげで助かったわ」
ハルさんも腰を下ろして、お茶をひと口。
モモさんはそれを見て、そっと手を挙げます。
「今回の件って、ハルさんがネルソンの先回りをしてた感じなのかしら?」
「かな。デルクスがネルソン家の事を教えてくれた時に凄く引っ掛かったんだよね。これはこっちに来るんじゃないかって。デルクスは同時に、対処法のヒントもくれた。健全な有力者と繋がる事が抑止となるってね。それで、身近な有力者って誰? って考えた時に真っ先に頭を過ったのが、勇者であるアルフェン。勇者以上の有力者なんていないでしょう? 直ぐにキルロへ【スミテマアルバレギオ】の傘下へ入れる様に手配を頼んだ。思ったより向こうの動きが早くて、手配している間に来ちゃったのは誤算だったわ。それにエレナが攫われたのもね、あってはいけない事が起きちゃった」
落ち込む仕草を見せるハルさんに私は首を横に振ります。
「私の不注意でした。すいません」
「まあまあ、ハルもエレナも、もういいじゃないか、その話は終わりだ。オレとフェインはハルの指示で直ぐにイスタバールに飛んで、ネルソン家を洗った。警備はズブズブだし、何を根拠にあんなに自信を持っていたのか、脇が甘すぎて笑っちまったよ。直ぐに手に入れた情報を、ハルと中央に早駆けを出した」
「余裕でしたですよ」
隣に座るフェインさんが、ニッコリ微笑んでくれました。
「結局ネルソン家ってのは何だったんだ?」
ラーサさんは頬杖をつきながら、マッシュさんに首を傾げて見せます。気疲れから解放されたラーサさんの表情は穏やかでした。
「イスタバールにミスリルの鉱山を持っていて、それを元手に一大リゾートを展開。それでデカイ財を成した成金野郎だ。一声掛ければ、何十人ってチンピラ共をかき集められるんだ、胡散臭いヤツだって分かるだろう」
「確かに」
マッシュさんの言葉にラーサさんは納得されます。
お金を一杯持っているのに何でこんな事をするのでしょうか? お金が一杯あるのだから、美味しい物を食べたりとか⋯⋯あとは何でしょう? 私の頭では思いつきませんが、少なくとも井戸のお水でお腹を膨らませる様な事はしなくていいはずです⋯⋯。何の不安も無く生きていけるのに、何でそんなに欲しがるのでしょうか? 分かりませんね。
「エレナさん、どうかされましたか?」
私が腕を組んで唸っていたら、ネインさんがいつもと同じ柔らかな表情を向けてくれました。
「お金が一杯あって、何の不自由も無いのにどうしてこんな事をするのかな? と、ちょっと思っちゃいました」
「⋯⋯なるほど。私も分かりませんが、きっと勘違いしたのでしょう。言えば何でも手に入る。実際今までそうだったのでしょうね。感覚が麻痺して善悪の判断が曖昧になり、自分の欲望だけに従うようになってしまった。それを止める人間は現れず、それどころか、おこぼれを貰おうとハメスみたいな人間が彼の欲望を煽って行く⋯⋯。そうやって歯止めが効かなくなってしまったのかも知れませんね」
「何だか寂しいです。ダメな物をダメと言ってくれる人がいないなんて」
「ですよね。私の場合、良く怒られますから、ネルソンよりだいぶ幸せなのかも知れません」
「え!? ネインさんでも、怒られるのですか?」
「フフ。怒れられますよ。副団長殿やユラに“盾の使い方が違う! こうだ!”と良く言われています。でも、そう言って貰う度に少しずつ成長出来ているのかなと思っています」
「成長⋯⋯」
「そうです。出来る事が増えるのですから、成長ではないですか?」
「はい。そうですね。おっしゃる通りだと思います。あ! ネインさん、お店を守ってくれてありがとうございました」
「い、いえいえ。ま、守るのは私の務めですから、責務を全うしただけです⋯⋯」
ネインさんは少し照れた笑みを浮かべながら、視線を外に向けてしまいました。
ネインさんの言葉はいつも私に前を向く気付きと勇気をくれます。少し照れた微笑みに私も微笑みを返しました。
「あ! そうだ。キルロ! 終わったから【ハルヲンテイム】を傘下からまた外しておいてね」
「え?! やっとの思いで手続き終わったのに?! 嘘だろう?」
「何でそんなしょうもない嘘をつくのよ。【スミテマアルバレギオ】の傘下って、何だかあんたの下にいるみたいでイヤじゃない。みんなもイヤでしょう?」
何とも答え辛い質問をハルさんは投げ掛けて来ました。多分、みんなそんなのイヤじゃないよって感じだと思うのですが⋯⋯。
ここでそんな態度をみんなで取ってしまったら、ハルさんむくれちゃうかも知れないです。
みんな一斉に下を向いて、ハルさんの視線から逃れて行きます。この時のフィリシアの反応速度は尋常ではありません。出遅れた私とハルさんの目が合いました。
こ、これは⋯⋯。ハルさんの青い瞳が見つけたと言わんばかりに輝いた感じがしました。
「エレナ。イヤよね? ね? ね?」
ハルさんの圧!? 私の視線は泳ぎまくりです。
正解が分かりません。ど、どうしましょう⋯⋯。イヤと答えればキルロさんの事を悪く言うみたいな感じになりますし、言わなければハルさんのご機嫌は急勾配の斜めを見せてしまいます⋯⋯。
「あ、いや、その、何ですかね⋯⋯。あぁ! わ、私はほら、【スミテマアルバレギオ】の団員ですから、どちらに転んでも変わりませんので⋯⋯何とも⋯⋯ですか⋯⋯ね⋯⋯。ハハ⋯⋯」
「そっか。そうよね。まぁ、何でもいいや。あんた頼んだわよ、傘下から外しておいてよ」
「うわぁ~。また、あの面倒臭い手続きしなくちゃかよ~」
最後は乾いた笑いで誤魔化してしまいましょう。キルロさんは頭を抱えていますが、ハルさんの中で答えが出ているのですから、それで進めてくれればいいのですよ。
キルロさん、頑張って。
アウロさんがいつもみたく、みんなにご飯を振る舞ってくれました。わいわいがやがやと賑やかなご飯に舌鼓を打って行きます。緊張から解放されたみんなの舌は滑らかで、笑いは絶えません。
「ラーサ! ストップ!」
「ニャハハハハ」
モモさんがラーサさんのカップを取り上げましたが、時すでに遅しです。ラーサさん、明日の点滴決定ですね。
楽しい時間はあっという間。キノとユラさんなんて、競い合うように目の前のお皿を平らげて行きます。静かにアルコールを入れて行く人、黙々と食べる人、ずっと笑っている人⋯⋯。
緩やかで心地の良い空間を共有し、みんなが自然と笑顔になって行きます。
そんな幸せな時間が【ハルヲンテイム】に流れ、私達はただただ、身を委ねて行きました。
アックスピーク達は何事も無かったかの様に元気な姿を見せていました。白い羽が陽光に照らされキラキラと乱反射してとても綺麗です。キラキラと輝きながら、寄り添う親子の姿は神々しくもありました。
「お帰り」
アウロさんの短い言葉に事の終わりを感じ、安堵の笑顔を返します。モモさんもラーサさんも、フィリシアもみんな同じく安堵を覚えたのでしょう、嘆息しながらも笑顔を見せてくれました。
表玄関に回ると、ユラさんとネインさんが玄関の扉を一生懸命に直していました。ネインさんは何度もハルさんに頭を下げ、ハルさんは笑顔でネインさんの肩に手を置きます。
ハルさんに誘われ、私達は食堂へ向かいました。
カップから上がる香ばしい香りを前にして、ハルさんに注目して行きます。
ハルさんはゆっくりと頭を下げると、事の顛末についてポツポツと話し始めてくれました。
「みんな、今回はいろいろゴメンね。それとありがとう。大きな事言っておいて、みんなに怖い思いをさせちゃってゴメン。【スミテマアルバレギオ】のみんなもありがとう。おかげで助かったわ」
ハルさんも腰を下ろして、お茶をひと口。
モモさんはそれを見て、そっと手を挙げます。
「今回の件って、ハルさんがネルソンの先回りをしてた感じなのかしら?」
「かな。デルクスがネルソン家の事を教えてくれた時に凄く引っ掛かったんだよね。これはこっちに来るんじゃないかって。デルクスは同時に、対処法のヒントもくれた。健全な有力者と繋がる事が抑止となるってね。それで、身近な有力者って誰? って考えた時に真っ先に頭を過ったのが、勇者であるアルフェン。勇者以上の有力者なんていないでしょう? 直ぐにキルロへ【スミテマアルバレギオ】の傘下へ入れる様に手配を頼んだ。思ったより向こうの動きが早くて、手配している間に来ちゃったのは誤算だったわ。それにエレナが攫われたのもね、あってはいけない事が起きちゃった」
落ち込む仕草を見せるハルさんに私は首を横に振ります。
「私の不注意でした。すいません」
「まあまあ、ハルもエレナも、もういいじゃないか、その話は終わりだ。オレとフェインはハルの指示で直ぐにイスタバールに飛んで、ネルソン家を洗った。警備はズブズブだし、何を根拠にあんなに自信を持っていたのか、脇が甘すぎて笑っちまったよ。直ぐに手に入れた情報を、ハルと中央に早駆けを出した」
「余裕でしたですよ」
隣に座るフェインさんが、ニッコリ微笑んでくれました。
「結局ネルソン家ってのは何だったんだ?」
ラーサさんは頬杖をつきながら、マッシュさんに首を傾げて見せます。気疲れから解放されたラーサさんの表情は穏やかでした。
「イスタバールにミスリルの鉱山を持っていて、それを元手に一大リゾートを展開。それでデカイ財を成した成金野郎だ。一声掛ければ、何十人ってチンピラ共をかき集められるんだ、胡散臭いヤツだって分かるだろう」
「確かに」
マッシュさんの言葉にラーサさんは納得されます。
お金を一杯持っているのに何でこんな事をするのでしょうか? お金が一杯あるのだから、美味しい物を食べたりとか⋯⋯あとは何でしょう? 私の頭では思いつきませんが、少なくとも井戸のお水でお腹を膨らませる様な事はしなくていいはずです⋯⋯。何の不安も無く生きていけるのに、何でそんなに欲しがるのでしょうか? 分かりませんね。
「エレナさん、どうかされましたか?」
私が腕を組んで唸っていたら、ネインさんがいつもと同じ柔らかな表情を向けてくれました。
「お金が一杯あって、何の不自由も無いのにどうしてこんな事をするのかな? と、ちょっと思っちゃいました」
「⋯⋯なるほど。私も分かりませんが、きっと勘違いしたのでしょう。言えば何でも手に入る。実際今までそうだったのでしょうね。感覚が麻痺して善悪の判断が曖昧になり、自分の欲望だけに従うようになってしまった。それを止める人間は現れず、それどころか、おこぼれを貰おうとハメスみたいな人間が彼の欲望を煽って行く⋯⋯。そうやって歯止めが効かなくなってしまったのかも知れませんね」
「何だか寂しいです。ダメな物をダメと言ってくれる人がいないなんて」
「ですよね。私の場合、良く怒られますから、ネルソンよりだいぶ幸せなのかも知れません」
「え!? ネインさんでも、怒られるのですか?」
「フフ。怒れられますよ。副団長殿やユラに“盾の使い方が違う! こうだ!”と良く言われています。でも、そう言って貰う度に少しずつ成長出来ているのかなと思っています」
「成長⋯⋯」
「そうです。出来る事が増えるのですから、成長ではないですか?」
「はい。そうですね。おっしゃる通りだと思います。あ! ネインさん、お店を守ってくれてありがとうございました」
「い、いえいえ。ま、守るのは私の務めですから、責務を全うしただけです⋯⋯」
ネインさんは少し照れた笑みを浮かべながら、視線を外に向けてしまいました。
ネインさんの言葉はいつも私に前を向く気付きと勇気をくれます。少し照れた微笑みに私も微笑みを返しました。
「あ! そうだ。キルロ! 終わったから【ハルヲンテイム】を傘下からまた外しておいてね」
「え?! やっとの思いで手続き終わったのに?! 嘘だろう?」
「何でそんなしょうもない嘘をつくのよ。【スミテマアルバレギオ】の傘下って、何だかあんたの下にいるみたいでイヤじゃない。みんなもイヤでしょう?」
何とも答え辛い質問をハルさんは投げ掛けて来ました。多分、みんなそんなのイヤじゃないよって感じだと思うのですが⋯⋯。
ここでそんな態度をみんなで取ってしまったら、ハルさんむくれちゃうかも知れないです。
みんな一斉に下を向いて、ハルさんの視線から逃れて行きます。この時のフィリシアの反応速度は尋常ではありません。出遅れた私とハルさんの目が合いました。
こ、これは⋯⋯。ハルさんの青い瞳が見つけたと言わんばかりに輝いた感じがしました。
「エレナ。イヤよね? ね? ね?」
ハルさんの圧!? 私の視線は泳ぎまくりです。
正解が分かりません。ど、どうしましょう⋯⋯。イヤと答えればキルロさんの事を悪く言うみたいな感じになりますし、言わなければハルさんのご機嫌は急勾配の斜めを見せてしまいます⋯⋯。
「あ、いや、その、何ですかね⋯⋯。あぁ! わ、私はほら、【スミテマアルバレギオ】の団員ですから、どちらに転んでも変わりませんので⋯⋯何とも⋯⋯ですか⋯⋯ね⋯⋯。ハハ⋯⋯」
「そっか。そうよね。まぁ、何でもいいや。あんた頼んだわよ、傘下から外しておいてよ」
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最後は乾いた笑いで誤魔化してしまいましょう。キルロさんは頭を抱えていますが、ハルさんの中で答えが出ているのですから、それで進めてくれればいいのですよ。
キルロさん、頑張って。
アウロさんがいつもみたく、みんなにご飯を振る舞ってくれました。わいわいがやがやと賑やかなご飯に舌鼓を打って行きます。緊張から解放されたみんなの舌は滑らかで、笑いは絶えません。
「ラーサ! ストップ!」
「ニャハハハハ」
モモさんがラーサさんのカップを取り上げましたが、時すでに遅しです。ラーサさん、明日の点滴決定ですね。
楽しい時間はあっという間。キノとユラさんなんて、競い合うように目の前のお皿を平らげて行きます。静かにアルコールを入れて行く人、黙々と食べる人、ずっと笑っている人⋯⋯。
緩やかで心地の良い空間を共有し、みんなが自然と笑顔になって行きます。
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