43 / 180
フィリシア・ミローバの逡巡
停滞
しおりを挟む
人の倍はある門柱をくぐり手入れの行き届いた中庭を抜けると、ようやく玄関へとたどり着いた。丸みを帯びる狼人と小さなドワーフエルフが剣呑な表情で玄関の前に立つと、メイドらしきハーフ狼人が、穏やかな声色を聞かせた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか? お約束はございますか?」
「いや、約束はしていない。ギルドの監察員モーラ・ブルネと申します。至急でご主人にお話ししたい事がある。取次をお願いしたい」
モーラはギルド員の証をメイドに見せると、メイドは少し困惑して見せた。
「申し訳ありません。あいにく、ご主人様は本日出払っております。また日を改めて頂くのが宜しいかと存じますが⋯⋯」
「ねえ、奥さんでもいいのだけど? 奥さんもいない?」
子供だと思っていた小さなエルフの女性らしい低い声に少し驚いた顔を見せたが、すぐに一礼して見せた。
「確認して参ります、少々お待ち下さいませ」
扉の中へと消えて行くハーフ狼を見つめ、ハルはモーラに囁いた。
「会えないかな?」
「どうかな? 会うつもりがなかったら、ふたり揃って出払っていると言うのではないか? まぁ、ギルドの人間に会いたくない輩も多い、どう出るかな」
「ここで足踏みしたくないのよね」
「まあな」
ふたりが玄関に目を向けると、先程のハーフ狼がにこやかな笑みを湛え扉の中へと誘った。
「お会いするそうです。どうぞこちらへ」
思わぬ返答に顔を見合わせるふたりは、ハーフ狼の後ろをついて行く。
石造りの玄関が小気味良い足音を響かせる。天井の高い玄関ホールを抜けると、ベージュの絨毯を敷き詰めた廊下が足音を吸い込んで行った。シンプルながらも、森をイメージする繊細な細工が壁を彩る。華やかさは無い物の豪奢な造りの廊下。ハーフ狼が木目の美しい飾り戸を開き、一室へと誘った。
「こちらでお待ち下さい」
ハーフ狼はそれだけ言い残し、扉の外へと消えた。
通された部屋は客間として利用されているのだろうか。テーブルの上に飾られた真っ赤な花だけが派手な色合いを見せ、部屋全体は落ち着いたモノトーンで統一されている。派手さを好むタイプでは無いのが、各造りから簡単に読み取れた。
「悪趣味な感じはしないわね」
「ああ。ここまでは評判通りってとこだな」
目の前にあるカップに口をつけると、ひとりのハーフ猫人が先ほどのハーフ狼に誘われ、現れた。
年齢はそれなりにいっていると思われるが、凛とした佇まいがそれを感じさせない。年相応とはいえ目鼻立ちのはっきりとした美しい顔立ちは目を引き、嫌味の無い簡素な様相に悪印象は皆無だった。
「お待たせして、申し訳ありませんでした。私はカラウズの妻、ネルスと申します。ギルドの方がわざわざ私共に足を運ぶなど初めての事なので、弱冠の戸惑いがあるのが本当の所ですの。それで本日はいかがなさいまして?」
見た目通りの穏やかな声色に、ふたりの出鼻はくじかれる。ハルは深い溜め息を漏らし、どうしたものかと逡巡するだけだったが、モーラは顔色ひとつ変えずに訥々と話し始めた。
「奥様、突然の訪問をお許し下さい。私はギルドで監察員をしているモーラ・ブルネ、こちらは【ハルヲンテイム】店長、ハルヲンスイーバ・カラログースと申します」
「ハルとお呼び下さい」
「お時間を取らせるのも何ですので、単刀直入に申し上げます。お宅様でペットとして登録している犬豚に虐待の嫌疑がかかっています。その事について、二、三お尋ねさせて頂きたいのですが、宜しいですかな?」
モーラのストレートな物言いにネルスは、驚き困惑と動揺を隠さない。それが演技なのか本気なのか、ハルとモーラはその様子を懐疑的に見つめてはみたものの、分かる事はなかった。
「ど、どういう事ですの? ウチの⋯⋯そんな事⋯⋯。そ、それで今はどのような状況なのでしょう? ああ⋯⋯どういう事なの⋯⋯ウチの仔は大丈夫ですの??」
「ああー、ネルスさん、落ち着いて下さい。命に別状はありませんよ。ただ、かなりの深手を負っていますので、治療には相当な時間が掛かりますし⋯⋯最悪お返しする事は、ままなりません。そちらはご了承下さい」
忌憚の無いモーラの言葉に、ネルスは驚き胸に手を置いたまま固まってしまった。
「奥様!」
「大丈夫です⋯⋯」
ハーフ狼が駆け寄るのをネルスは制止すると、顔を上げ胸を張って見せた。
虚勢を張った所で不安や困惑は隠せていない。
ハルはふたりのやり取りを見つめ、この驚きと困惑に嘘は無いと感じた。
本気の困惑は、シロだと言う事。それはそれで構わない、じゃあ誰が? って話だ。
隣のモーラは顔色ひとつ変えず、淡々と話を続ける。場慣れしているというか、肝がすわっているというか、ただこの場では心強いのは間違いなかった。
「【カミオトリマー】へ、トリミングに出されたお宅様の犬豚ですが、そこの従業員が異変に気が付き、【ハルヲンテイム】へ持ち込みました。詳しく調べた所、体中に傷があり精神的にも不安定な所が見えました」
「トリミング? どういう事でしょう? ミク、この事は存知していて?」
「申し訳ありません、奥様。私共は存知しておらず、正直混乱しております」
「ちょ、ちょっと待って。トリミングに出した事を誰も知らないの? じゃあ、誰が出したの?」
ハルの言葉にネルスとメイドのミクは顔を見合わせ、困惑を見せるだけだった。
ミクは少しばかり言い辛そうに口を開く。
「あのう、申し上げにくいのですが、トリマーの方が傷つけたとか、そのような事は考えられないのでしょうか?」
「もちろん、ギルドとしては真っ先にそちらを疑いました。間違って傷を付けてしまったのを隠す為に虚偽の報告というのは、無い話ではありませんのでね。ただ、今回は傷を見たうえで、それは無いと確信しております。こちらのハルもそれを見越したうえでギルドに報告をしたのです」
押し黙るネルスとミク。ショックと困惑は深まる一方だった。
その姿にやはり嘘は無い、少なくともこのふたりはシロで間違いない。となると誰が【カミオトリマー】に連れて来たのかが鍵だ。
「話を整理しましょう。一番重要なのは誰がマイキーを傷つけたのか? それに伴って誰が【カミオトリマー】に連れて行ったのか?」
「マイキー? マイクの事かしら?」
ネルスは首を傾げて見せる。ハルは少し混乱し、モーラはすぐに登録書の控えを取り出した。
「⋯⋯マイクだ。ペットの名まで偽名を使っている」
「連れて来たヤツが間違いなくクロね。そいつが分かれば万事オーケー。それで、ネルスさん、こちらにヒューマンの女性はいらっしゃいますか? やせ型で、年齢はそれなりにいっている方です。マイキ⋯⋯マイクを【カミオトリマー】に連れて来た人間です」
ネルスは即座に首を横に振ります。表情はさらに曇り混迷を深めていきました。
「この屋敷には基本ハーフしかおりませんの。私がハーフですので、無用なトラブルを避ける為にそうしております。女性にいったっては、全員がハーフです」
「奥様は職にあぶれてしまっているハーフを率先して雇ってくれております。私共は感謝こそすれ、それに仇をなす行為などするわけがありません。ましてや、大事にされているペットに手を掛けるなど⋯⋯ありえません」
ミクは感情的になりそうな自分を押さえ、言葉を零した。ミクの言葉より、ネルスの言葉がハルとモーラを思考の迷路に誘い込んで行く。
ハーフしかいない。
連れて来たのは誰?
ハルはフィリシアの言葉を思い出す。いつも同じ人が定期的にトリミングに来ていた。
グラウダと名乗る年配の女性。
押し黙る四人。
部屋の空気は混沌とし、真実を隠して行く。
ここに来れば見えると思った物が、逆に見え辛くなった。真実に掛かる黒い霧は濃くなる一方。ハルはこめかみを指で揉み、厳しい表情を見せる。
進むべき道がいきなり分断され、思考は停滞していった。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか? お約束はございますか?」
「いや、約束はしていない。ギルドの監察員モーラ・ブルネと申します。至急でご主人にお話ししたい事がある。取次をお願いしたい」
モーラはギルド員の証をメイドに見せると、メイドは少し困惑して見せた。
「申し訳ありません。あいにく、ご主人様は本日出払っております。また日を改めて頂くのが宜しいかと存じますが⋯⋯」
「ねえ、奥さんでもいいのだけど? 奥さんもいない?」
子供だと思っていた小さなエルフの女性らしい低い声に少し驚いた顔を見せたが、すぐに一礼して見せた。
「確認して参ります、少々お待ち下さいませ」
扉の中へと消えて行くハーフ狼を見つめ、ハルはモーラに囁いた。
「会えないかな?」
「どうかな? 会うつもりがなかったら、ふたり揃って出払っていると言うのではないか? まぁ、ギルドの人間に会いたくない輩も多い、どう出るかな」
「ここで足踏みしたくないのよね」
「まあな」
ふたりが玄関に目を向けると、先程のハーフ狼がにこやかな笑みを湛え扉の中へと誘った。
「お会いするそうです。どうぞこちらへ」
思わぬ返答に顔を見合わせるふたりは、ハーフ狼の後ろをついて行く。
石造りの玄関が小気味良い足音を響かせる。天井の高い玄関ホールを抜けると、ベージュの絨毯を敷き詰めた廊下が足音を吸い込んで行った。シンプルながらも、森をイメージする繊細な細工が壁を彩る。華やかさは無い物の豪奢な造りの廊下。ハーフ狼が木目の美しい飾り戸を開き、一室へと誘った。
「こちらでお待ち下さい」
ハーフ狼はそれだけ言い残し、扉の外へと消えた。
通された部屋は客間として利用されているのだろうか。テーブルの上に飾られた真っ赤な花だけが派手な色合いを見せ、部屋全体は落ち着いたモノトーンで統一されている。派手さを好むタイプでは無いのが、各造りから簡単に読み取れた。
「悪趣味な感じはしないわね」
「ああ。ここまでは評判通りってとこだな」
目の前にあるカップに口をつけると、ひとりのハーフ猫人が先ほどのハーフ狼に誘われ、現れた。
年齢はそれなりにいっていると思われるが、凛とした佇まいがそれを感じさせない。年相応とはいえ目鼻立ちのはっきりとした美しい顔立ちは目を引き、嫌味の無い簡素な様相に悪印象は皆無だった。
「お待たせして、申し訳ありませんでした。私はカラウズの妻、ネルスと申します。ギルドの方がわざわざ私共に足を運ぶなど初めての事なので、弱冠の戸惑いがあるのが本当の所ですの。それで本日はいかがなさいまして?」
見た目通りの穏やかな声色に、ふたりの出鼻はくじかれる。ハルは深い溜め息を漏らし、どうしたものかと逡巡するだけだったが、モーラは顔色ひとつ変えずに訥々と話し始めた。
「奥様、突然の訪問をお許し下さい。私はギルドで監察員をしているモーラ・ブルネ、こちらは【ハルヲンテイム】店長、ハルヲンスイーバ・カラログースと申します」
「ハルとお呼び下さい」
「お時間を取らせるのも何ですので、単刀直入に申し上げます。お宅様でペットとして登録している犬豚に虐待の嫌疑がかかっています。その事について、二、三お尋ねさせて頂きたいのですが、宜しいですかな?」
モーラのストレートな物言いにネルスは、驚き困惑と動揺を隠さない。それが演技なのか本気なのか、ハルとモーラはその様子を懐疑的に見つめてはみたものの、分かる事はなかった。
「ど、どういう事ですの? ウチの⋯⋯そんな事⋯⋯。そ、それで今はどのような状況なのでしょう? ああ⋯⋯どういう事なの⋯⋯ウチの仔は大丈夫ですの??」
「ああー、ネルスさん、落ち着いて下さい。命に別状はありませんよ。ただ、かなりの深手を負っていますので、治療には相当な時間が掛かりますし⋯⋯最悪お返しする事は、ままなりません。そちらはご了承下さい」
忌憚の無いモーラの言葉に、ネルスは驚き胸に手を置いたまま固まってしまった。
「奥様!」
「大丈夫です⋯⋯」
ハーフ狼が駆け寄るのをネルスは制止すると、顔を上げ胸を張って見せた。
虚勢を張った所で不安や困惑は隠せていない。
ハルはふたりのやり取りを見つめ、この驚きと困惑に嘘は無いと感じた。
本気の困惑は、シロだと言う事。それはそれで構わない、じゃあ誰が? って話だ。
隣のモーラは顔色ひとつ変えず、淡々と話を続ける。場慣れしているというか、肝がすわっているというか、ただこの場では心強いのは間違いなかった。
「【カミオトリマー】へ、トリミングに出されたお宅様の犬豚ですが、そこの従業員が異変に気が付き、【ハルヲンテイム】へ持ち込みました。詳しく調べた所、体中に傷があり精神的にも不安定な所が見えました」
「トリミング? どういう事でしょう? ミク、この事は存知していて?」
「申し訳ありません、奥様。私共は存知しておらず、正直混乱しております」
「ちょ、ちょっと待って。トリミングに出した事を誰も知らないの? じゃあ、誰が出したの?」
ハルの言葉にネルスとメイドのミクは顔を見合わせ、困惑を見せるだけだった。
ミクは少しばかり言い辛そうに口を開く。
「あのう、申し上げにくいのですが、トリマーの方が傷つけたとか、そのような事は考えられないのでしょうか?」
「もちろん、ギルドとしては真っ先にそちらを疑いました。間違って傷を付けてしまったのを隠す為に虚偽の報告というのは、無い話ではありませんのでね。ただ、今回は傷を見たうえで、それは無いと確信しております。こちらのハルもそれを見越したうえでギルドに報告をしたのです」
押し黙るネルスとミク。ショックと困惑は深まる一方だった。
その姿にやはり嘘は無い、少なくともこのふたりはシロで間違いない。となると誰が【カミオトリマー】に連れて来たのかが鍵だ。
「話を整理しましょう。一番重要なのは誰がマイキーを傷つけたのか? それに伴って誰が【カミオトリマー】に連れて行ったのか?」
「マイキー? マイクの事かしら?」
ネルスは首を傾げて見せる。ハルは少し混乱し、モーラはすぐに登録書の控えを取り出した。
「⋯⋯マイクだ。ペットの名まで偽名を使っている」
「連れて来たヤツが間違いなくクロね。そいつが分かれば万事オーケー。それで、ネルスさん、こちらにヒューマンの女性はいらっしゃいますか? やせ型で、年齢はそれなりにいっている方です。マイキ⋯⋯マイクを【カミオトリマー】に連れて来た人間です」
ネルスは即座に首を横に振ります。表情はさらに曇り混迷を深めていきました。
「この屋敷には基本ハーフしかおりませんの。私がハーフですので、無用なトラブルを避ける為にそうしております。女性にいったっては、全員がハーフです」
「奥様は職にあぶれてしまっているハーフを率先して雇ってくれております。私共は感謝こそすれ、それに仇をなす行為などするわけがありません。ましてや、大事にされているペットに手を掛けるなど⋯⋯ありえません」
ミクは感情的になりそうな自分を押さえ、言葉を零した。ミクの言葉より、ネルスの言葉がハルとモーラを思考の迷路に誘い込んで行く。
ハーフしかいない。
連れて来たのは誰?
ハルはフィリシアの言葉を思い出す。いつも同じ人が定期的にトリミングに来ていた。
グラウダと名乗る年配の女性。
押し黙る四人。
部屋の空気は混沌とし、真実を隠して行く。
ここに来れば見えると思った物が、逆に見え辛くなった。真実に掛かる黒い霧は濃くなる一方。ハルはこめかみを指で揉み、厳しい表情を見せる。
進むべき道がいきなり分断され、思考は停滞していった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる