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友達(キノ)
初めの一歩
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翌日になってもキルロさんは目覚めませんでした。左肩は動かせないように石膏でガチガチに固めています。起きたらびっくりしそうですね。
点滴を交換していると、キルロさんの足元で丸くなっていたキノが頭をもたげ、大きなあくびを見せました。
「キノ、おはよう。ごはん食べる?」
何だかまだ寝むそう。
それでも、私が病室を出るとキノも一緒について来ました。
食堂でキノの食べられそうな物を身繕い、一緒に食べていきます。
食欲旺盛って感じ。
元気なるのは食べて寝るが基本。これなら安心ですね。
◇◇◇◇
「エレナー! ちょっと来てー!」
「はーい」
キノと一緒に雑用をこなしているとハルさんに呼ばれました。
ハルさんの呼ぶ方へと小走りで向かいます。小動物達のいる大きな部屋の前、ハルさんが杖を突きながら立っていました。キルロさんの肩みたく、ハルさんの左足は包帯でグルグルと固定され、痛々しい姿を見せます。
「ハルさん、足は大丈夫なのですか?」
「これでしょう、大袈裟なのよ。大丈夫、大丈夫。外すとモモにねぇ⋯⋯ほら⋯⋯」
「フフフ。怒られる?」
「それよ、それ」
ハルさんが少し大仰に顔をしかめて、私は笑ってしまいました。ハルさんが元気だと確認出来た嬉しさもあります。ハルさんが扉を開け中へ、私も中へ進むとキノもそれに続きました。
扉の中はとても広い空間が広がっています。天井はそこまで高くはないけど、病室を何部屋も潰して広間を作ったのが部屋に残る柱から見て取れました。奥と左右の壁には人工的に作った岩壁や、天井に届きそうな大木の幹が無造作に立て掛けられ、大木と大木を繋ぐロープが天井からたくさん垂れています。森と岸壁を人工的に再現されていて、私は部屋の中を感嘆の声をあげながら見回してしまいました。
一番大きな動物でも1Mi程の大型兎達。あとはいろいろな種類の犬や猫達を筆頭に小さな猿や、鳥類もチラホラ。
「たくさんいますねぇ⋯⋯喧嘩しないのですか?」
「大怪我するような喧嘩は大丈夫。たまに小さな傷を作っている仔がいるけど、まぁ、ちょっとやんちゃってくらいかな。種類ごとに自然と縄張りが出来ているから、そこを邪魔しない限りは怒る仔はいないわよ」
「この仔達の中でルールが出来ているのですね」
「そうそう、そんな感じ。ほら、大型兎や犬豚みたいな犬達は下でのんびりしているでしょう。イスタルキャットやオルンモンキーなんかは壁の上の方で固まっているの⋯⋯分かる? 自然と自分達で棲み分けが出来ているのよ」
「みんな賢いですね」
「そう、人間なんかよりよっぽど賢いわよ」
ハルさんがいたずらっぽく笑って見せました。ハルさんの動物達を見つめる青い瞳はとても優しく、私は見入ってしまいます。動物達も心なしかのんびりとしています。住環境が良く出来ているのでしょうね。
「凄いですね、なんかみんな満足しているみたい。人工的に作った所なのに」
「それはアウロのおかげね。アウロが調べて考えて実行して、また考えて。どうすればストレスフリーになるのか思考錯誤してこの形になったのよ。まぁ、また何か気が付けば改善するんじゃない。それはそうと、エレナは初めに言った言葉覚えている?」
「初めですか?」
「そう。ここで何をしたいって聞いたでしょう」
「あ、はい。覚えています。みんなと友達になりたいって⋯⋯」
「ちゃんと覚えているわね」
「はい」
改めて言われて少し気恥ずかしさを覚えてしまいますが、その思いに変わりはありません。
「それじゃ、エレナ。まずはこの部屋の仔と友達になって頂戴。私もこの足だとたいした事できないし、そろそろいいでしょう。ここを担当してちょうだい。分からない事はどんどん周りの人間に聞きなさい。些細な変化にも目を配りなさい。みんなに仲良くして貰って、いろいろ学びなさい。しばらくは私と一緒に世話をしましょう。ビシバシ指示をだすから、エレナ頑張ってね」
「は、はい、頑張ります!」
「フフフ、そんなに固くならずリラックスしていきましょう。まずは掃除。人と同じ、不衛生が病気を蔓延させてしまう原因になるのでしっかりね。まずは上。オルンモンキーの寝床からやりましょうか。そこのクローゼットに掃除道具が一式入っているわ」
クローゼットを開けると大小の箒やちりとり、モップにバケツや毛繕いの為のブラシなどが綺麗に置かれています。
「まずは、はたきと小さい箒とちりとり。ベルトに差して⋯⋯そう。それじゃあ、上から掃除開始ね。必ず声掛けてから始めるのよ」
「わかりました。ちょっとゴメンね。綺麗にするからどいてくれる」
二本の尾を持つオルンモンキーの小さな顔が怪訝な表情を向けて来ました。頭の先や手足の先だけ黒くて体は鮮やかな黄色を見せています。30Mc程しかない小さな体は愛らしく、群れで生活を行う習性だそうです。一見臆病そうに見えて好奇心旺盛。大きな目をくりくりと私に向けて来ました。
点滴を交換していると、キルロさんの足元で丸くなっていたキノが頭をもたげ、大きなあくびを見せました。
「キノ、おはよう。ごはん食べる?」
何だかまだ寝むそう。
それでも、私が病室を出るとキノも一緒について来ました。
食堂でキノの食べられそうな物を身繕い、一緒に食べていきます。
食欲旺盛って感じ。
元気なるのは食べて寝るが基本。これなら安心ですね。
◇◇◇◇
「エレナー! ちょっと来てー!」
「はーい」
キノと一緒に雑用をこなしているとハルさんに呼ばれました。
ハルさんの呼ぶ方へと小走りで向かいます。小動物達のいる大きな部屋の前、ハルさんが杖を突きながら立っていました。キルロさんの肩みたく、ハルさんの左足は包帯でグルグルと固定され、痛々しい姿を見せます。
「ハルさん、足は大丈夫なのですか?」
「これでしょう、大袈裟なのよ。大丈夫、大丈夫。外すとモモにねぇ⋯⋯ほら⋯⋯」
「フフフ。怒られる?」
「それよ、それ」
ハルさんが少し大仰に顔をしかめて、私は笑ってしまいました。ハルさんが元気だと確認出来た嬉しさもあります。ハルさんが扉を開け中へ、私も中へ進むとキノもそれに続きました。
扉の中はとても広い空間が広がっています。天井はそこまで高くはないけど、病室を何部屋も潰して広間を作ったのが部屋に残る柱から見て取れました。奥と左右の壁には人工的に作った岩壁や、天井に届きそうな大木の幹が無造作に立て掛けられ、大木と大木を繋ぐロープが天井からたくさん垂れています。森と岸壁を人工的に再現されていて、私は部屋の中を感嘆の声をあげながら見回してしまいました。
一番大きな動物でも1Mi程の大型兎達。あとはいろいろな種類の犬や猫達を筆頭に小さな猿や、鳥類もチラホラ。
「たくさんいますねぇ⋯⋯喧嘩しないのですか?」
「大怪我するような喧嘩は大丈夫。たまに小さな傷を作っている仔がいるけど、まぁ、ちょっとやんちゃってくらいかな。種類ごとに自然と縄張りが出来ているから、そこを邪魔しない限りは怒る仔はいないわよ」
「この仔達の中でルールが出来ているのですね」
「そうそう、そんな感じ。ほら、大型兎や犬豚みたいな犬達は下でのんびりしているでしょう。イスタルキャットやオルンモンキーなんかは壁の上の方で固まっているの⋯⋯分かる? 自然と自分達で棲み分けが出来ているのよ」
「みんな賢いですね」
「そう、人間なんかよりよっぽど賢いわよ」
ハルさんがいたずらっぽく笑って見せました。ハルさんの動物達を見つめる青い瞳はとても優しく、私は見入ってしまいます。動物達も心なしかのんびりとしています。住環境が良く出来ているのでしょうね。
「凄いですね、なんかみんな満足しているみたい。人工的に作った所なのに」
「それはアウロのおかげね。アウロが調べて考えて実行して、また考えて。どうすればストレスフリーになるのか思考錯誤してこの形になったのよ。まぁ、また何か気が付けば改善するんじゃない。それはそうと、エレナは初めに言った言葉覚えている?」
「初めですか?」
「そう。ここで何をしたいって聞いたでしょう」
「あ、はい。覚えています。みんなと友達になりたいって⋯⋯」
「ちゃんと覚えているわね」
「はい」
改めて言われて少し気恥ずかしさを覚えてしまいますが、その思いに変わりはありません。
「それじゃ、エレナ。まずはこの部屋の仔と友達になって頂戴。私もこの足だとたいした事できないし、そろそろいいでしょう。ここを担当してちょうだい。分からない事はどんどん周りの人間に聞きなさい。些細な変化にも目を配りなさい。みんなに仲良くして貰って、いろいろ学びなさい。しばらくは私と一緒に世話をしましょう。ビシバシ指示をだすから、エレナ頑張ってね」
「は、はい、頑張ります!」
「フフフ、そんなに固くならずリラックスしていきましょう。まずは掃除。人と同じ、不衛生が病気を蔓延させてしまう原因になるのでしっかりね。まずは上。オルンモンキーの寝床からやりましょうか。そこのクローゼットに掃除道具が一式入っているわ」
クローゼットを開けると大小の箒やちりとり、モップにバケツや毛繕いの為のブラシなどが綺麗に置かれています。
「まずは、はたきと小さい箒とちりとり。ベルトに差して⋯⋯そう。それじゃあ、上から掃除開始ね。必ず声掛けてから始めるのよ」
「わかりました。ちょっとゴメンね。綺麗にするからどいてくれる」
二本の尾を持つオルンモンキーの小さな顔が怪訝な表情を向けて来ました。頭の先や手足の先だけ黒くて体は鮮やかな黄色を見せています。30Mc程しかない小さな体は愛らしく、群れで生活を行う習性だそうです。一見臆病そうに見えて好奇心旺盛。大きな目をくりくりと私に向けて来ました。
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