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番外 ※ 時間軸はランダムです。結婚後の話もあります。
プールデートしよう 1
しおりを挟むこの伊織を見て、否と応えるなど私には絶対に出来ない。最早、不可能と云う言葉など生温い程だ。
・・・否と応じられる者は、進み出るが良い。私が自ら、その存在ごと消去してやろう。
「イルファン、えっと、その、聞きたいって言うか・・・お願い?しても良い?」
私の目の前の、視線をやや下げた其処には。
その可愛い顔を少し不安げに、それでいて何かを期待するかの様に少し頬を染めた、天使がいた。
・・・いや、大変に可愛らしい庇護欲を掻き立てられる愛らしい表情の伊織がいた。
私の愛する唯一で無二の存在。私の伴侶。
彼の望む事は全て叶えてやりたい。望む物は全て私が与えてやりたい。伊織の幸福も喜びも全てを守り、その顔を曇らせるモノを徹底的に排除し寄せ付けぬ様に護るのは、誰にも譲れぬ私だけの特権だ。
そして滅多にない、伊織の願いが。彼の“おねだり”が聞けるのだ。
伊織が何かをねだってくれるなど、私にとっては喜びでしかない。どんなに尋ねても、彼はいじらしい程に謙虚な、それでいて本心であるとわかる綺麗な笑顔で云うのだ。
「俺の願いは毎日叶ってるから・・・今は、他に欲しいものなんて無いんだよ?」
・・・天使か?!
いや、私の伴侶だ。
そんな伊織だから、こんな姿を目にするのも貴重なのだ、うむ。
さて、何をその唇から聞かせてくれるのか、私こそが楽しみにしていたのだが。
「えっとね、俺・・・泳げなくて。だから、イルファンに教えて貰いたいんだ。えっと、プールでも海でもいいんだけど、泳ぎに行ける所ってあるかな?」
む?水泳をしたいが泳げぬから、私に教えて欲しい、と・・・。そのような事で、良いのか?ああ勿論、伊織の願いは全て叶えよう。
“お願い”と、愛らしく恥じらっていたが。
何と可愛らしい願いか・・・いや、これは寧ろ・・・私への褒美か?!可愛らしいおねだりを、その姿を・・・さらには私を必要とし、私の能力を求められるなど。伴侶として、その冥利に尽きる上に同伴の誘いではないか?!
・・・いかん、あまりの僥倖に内心を大いに取り乱した。
んんっ・・・ふむ、泳ぐのであれば王族専用のプライベートビーチか王宮内の室内泳場かと脳内を検索し、迂闊にも私はそこで重大な、大変に重要な事柄に思い至ったのだ。
“泳ぐ”と云う事、そして水に入る際の姿に思い至り、伊織のおねだりに舞い上がっていた思考に衝撃が走る。
・・・伊織の肌を晒す・・・だとっ・・?!寝室の、褥ではなく、開かれた広く・・・他の人間の視線がいつ向けられるかも知れない、そのような場所で。私の大切な伊織の肌を・・・そのしなやかで綺麗な肢体を・・・?!
「なっ・・・っ!!」
伊織の肌を・・・最小限の肌しか隠さず、綺麗な胸とその愛らしい果実を、無駄の無いなだらかな腹部を、滑らかな腕を脚を・・・細くしなやかな腰と可愛らしい丸みを持つ双丘の形を露にし、衆目に曝すような事など・・・
断じて許す事など出来よう筈が無い!!
そこまで思い至り、目の前の伊織に目を向け・・・向ければ、荒れ狂う内心と断固拒絶する意思など、全くもって無きにも等しく。
「ああ、勿論。伊織の望むままに」
「わぁ!本当に?!やったーイルファンとプールデートだぁ!!」
ぱぁっと花が咲くように綺麗な笑顔と、可愛らしいその言葉に。私の心は瞬きする間に沸き上がり、伊織の愛おしさとその躰を腕の中に包み込む事しか考えられなくなっていた。
こうして早急に王宮の泳場の使用許可及び警備の配置の指示、そして私の宮の敷地内プール建設の計画が、現時点から私の急務となったのだ。
それにしても、今日の伊織も愛らしい事この上ない。そして、無邪気に喜ぶこの上なく可愛らしい伊織をこのままこの部屋から・・・私の腕の中から出したくないと、理性と自制を持ち全力で抗わねばならぬ事態に見舞われたのだが。
伊織の願いと伴侶の特権を実現するため、彼を執務室にエスコートする事で何とか自身を抑えるに至ったのだ。
side 侍従その4
殿下のやる気スイッチが・・・今現在進行形で連打されている。
つい一刻半前に本日の業務を開始されたばかりなのに、本日分の業務の大半が終了されているのは、どのような神業でしょうか・・・そして、俺のデスクに積み上がっていく本日分の書類及び資料を捌ききれるか、試されてはいないと思いたいですが。
今朝、執務室に御出座しになった時点で、もうそういう雰囲気を醸されていた。
俺以外の皆も感じ取っていたと思う。即臨戦態勢に・・・各々のデスクに着くと本日分の業務を開始した。それは正しい判断でもあり、本日の過激勤務の幕開けでもあったんだけど、まぁ・・・ね。
そのイルファン殿下は、今日と明日そして明後日分の業務を本日1日にぶっ込・・・いや、不敬発言ではない。違います殿下。不甲斐ない我々為に業務を凝縮し、我々侍従のレベルアップ及び修練の場を与えて頂けた訳だけど。
・・・その他に、王宮の室内プールの個人利用及び、立ち入り拒絶及び警備配置の通達。あと、殿下の宮に室内プールの設置手配を追加でぶっ込む鬼ち・・・んんっ、徹底ぶり。
大っっ変に非ど・・・有り難い限りです。はい。鍛えて頂いた分、ご期待に添えるように精進いたします・・・はぁ・・・俺は今日、帰れるのか?
ともあれ一連の手配の内容やご様子から、妃殿下と水遊びに興じるお考えなのだろう。でも、連休を取得される勢いの詰め込み業務は何故なのか?
そして、泳場に配備する警護のスケジュールと人員を見る限り、ただの水遊びだとするには些か・・・いや大変に過分であると云わざるを得ないんだけど?
・・・どんなに考えても、殿下のお考えは分からないし、仕事も溜まるだけだ。
俺は、聖域でいつもよりもにこにこと機嫌良さげに、ばっさばっさと仕事を捌きまくるイオリをちらっと見てから、雑念を振り切ると、終わりが全く見えない仕事に取りかかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いえいえ、ただの水遊びですよ(笑)
“side 侍従その4”は、“ある侍従の証言”の彼です。
改めまして、大っっっ~変にご無沙汰しておりますm(_ _)m💦
私のポカミス及びうっかりで、亀どころか更新が出来ておらず・・・
二人のらぶいちゃは、次のお話で炸裂(?)する予定です。
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