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~桜の咲く街で~
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シーン75
仙台市街地 裏通り (~プロポーズ~シーン34で弁護士事務所からの帰りに歩いた道)
荏原は歩いている
荏原来た道を振り返り何かを思い出しフッと笑う
前に歩いていく荏原
シーン76
宮城県仙台市柳生 裏道(~プロポーズ~ シーン37で自分とリオの幻を見た道路)
マンションが見える
荏原の手にはペットボトルのジュース
荏原は後ろを振り返るが視線の先には誰もおらず、ただ田んぼと山々が見える
遠くの山々を見る
一つ息を吐く荏原
何事かを考えている
荏原はまた歩き出す
シーン77
レッスン場 昼
入口付近にはホワイトボード
ホワイトボードには張り紙がしてある
張り紙「講師変更のお知らせ」
ホワイトボードの前でユリ、アヤ、セイヤ、サチコがその張り紙を見ている
ユリ「先生のことじゃないよね?」
セイヤ「結構前にボイトレの先生変わった時も同じようなの貼ってあったし、誰か変わるんじゃないの?」
アヤ「先生が私たちに何も言わないってことないでしょ。」
アヤとサチコはロッカールームへ向かう
そこへ玲奈と拓真が来る
玲奈「おはよう!」
ユリ「あっ玲奈おはよう!」
拓真「おはよう…ございます…。」
ユリ「拓ちゃん、自分から声かけれるようになったんだね!」
セイヤ「拓ちゃん随分変わったよね…。」
拓真「せ、先生の…おかげで…みんなも…優しいし…」
ウンウンと頷く玲奈 自分のおかげだみたいな表情
セイヤ「なんでお前が勝ち誇ってんの笑」
玲奈「だってぇ…って何見てんの?」
ユリ「講師が変更しますってお知らせがあったから。」
玲奈「誰?」
ユリ「書いてないんだよね。」
玲奈「うちの事務所はいつも書かないよね!誰が変わるのかわかんないだろって!」
他にも入ってくる生徒達
ユリ「私達もロッカーに荷物置いてきちゃお!」
玲奈「うん!行こう、拓ちゃん!」
と言って玲奈が拓真の方を見ると その後ろから講師が入ってくる
講師「もうレッスン始まるよ!」
玲奈の驚いた表情
シーン78
チヒロ自宅 自室 (~mental health+er~ シーン71の電話の続き)
チヒロの部屋は滅茶苦茶になっている
荏原からの電話の後で怒り狂って部屋の中で暴れた後
チヒロ「もしもし、社長ですか?そうですチヒロです。私…荏原先生に酷いことをされて…実は前から電話やメールが頻繁にあって多い時は一晩に5回も6回も着信があって…それに先生が君は特別だからって体の関係も迫られて…あまりにも迫られるので…ついついそういう関係になってしまって…レッスンの度にそれに応じていたんですが…私に飽きてしまったみたいで、もう連絡をしてくるなと…はい、そうです。多分先生のクラスの玲奈さんやユリさん達とも私と同じく体の関係なんだと思います…プロダクションとしてきちんと対応して下さい。私悔しくて…もしプロダクションがきちんとしてくれないならSNSからも発信して真実を明かにしたいです…」
シーン79
プロダクション社長室
電話の対応をする社長
電話の相手はチヒロ
社長「貴方の仰られることはわかりました。会社として然るべき処置をお約束致します。では失礼致します。」
電話を切る社長
一つ息を吐き改めて電話をかける社長
社長「もしもし、荏原先生ですか?お話があるので社長室まで来てください。」
シーン80
BAR 夜 (~プロポーズ~ で訪れた店)
客は誰もおらず、グラスを磨いているマスター
ドアの開く音が聞こえる
マスター「いらっしゃい…おぉ…久しぶりだな…まぁ座れよ。」
シーン81
同日 BAR
荏原はカウンターに座っている
店内に客はおらずマスターも荏原の隣に座っている
荏原は飲み終わって氷しか入ってないグラスを手で弄んでいる
マスターは軽い笑みを浮かべながら
マスター「ふーん…そんなことがあった割には飲んだくれてないな笑」
荏原「オレ飲んだくれたことあったっけ?」
マスター「よく言うよ…ってきり発泡酒の2、3本も飲んでんのかと思ったら素面だもんな笑」
荏原は人差し指を左右に振りながら
荏原「チッチッチッ!お酒は美味しく飲むものでしょー笑」
マスターはその荏原を見て
マスター「大丈夫そうだな。」
荏原「……また来るよ。」
外へ出ようとする荏原に声をかける
マスター「お前、今日のお代は?」
荏原「また来るから、ツケといて笑」
出ていく荏原
マスター「ったく…あいつは…。」
苦虫を噛み潰したような表情のマスター
だが嬉しそうでもあるマスターの表情
シーン82
レッスン場 昼
レッスン終盤
講師「次回のレッスンまで今日読み合わせした台本を覚えておくようにして下さい。お疲れ様でした。」
生徒達「お疲れ様でしたー!」
玲奈は講師の元へ向かう
玲奈「お疲れ様です。」
講師「お疲れ様。」
玲奈「あの…先生はこれからも映像演技クラスの担当に…?」
講師「私は代理だよ。詳しいことはわからないけど、暫くの間このクラスも受け持ってほしいと社長からの伝令でね。」
玲奈「そうなんですか…。」
講師「私も元々は声優クラスの講師だからずっと受け持つわけではないよ、新しい先生が来るまでの代理だと思う。」
玲奈「新しい先生…ありがとうございました。」
不思議そうな顔で玲奈の後ろ姿を見る講師
シーン83
同日 レッスン場 ロッカールーム
ロッカールームの中ではユリ、アヤ、サチコ、セイヤ、拓真が玲奈を待っている
玲奈が肩を落として入ってくる
ユリ「どうだった?」
アヤ「なんて言ってた?」
玲奈「あの先生は代理なんだって…」
セイヤ「じゃあ先生は…」
玲奈「新しい先生が来るまでの代理なんだって…。」
ユリ「うそ!先生辞めるわけないじゃん!」
セイヤ「黙って辞めていくわけないよ!」
玲奈は少々イラッとした感じで
玲奈「でも暫くはあの先生が担当して、新しい先生が来たらその新しい先生に変わるんだって!」
拓真「……せ、先生には…も、もう会えな…い?」
玲奈「………。」
ロッカールーム全員がガッカリして肩を落とす
シーン84
プロダクション 社長室入口
玲奈とユリは社長室の前に立っている
玲奈とユリはお互い顔を見合わせて頷く
玲奈ドアをノックする
玲奈ドアを開ける
玲奈「失礼しまーす。」
ユリも失礼しまーすと続いて入室する
社長が座っている
社長「珍しい組み合わせだな…どうした?」
玲奈「荏原先生のことで…。」
社長「その話か…。」
ユリ「先生は辞めたんですか?もうここには来ないんですか?」
社長「…役員会の決定があるまでは何も話すことは出来ない。」
玲奈「そんな…何でですか?」
ユリ「先生何かしたんですか?教えて下さい!」
社長「何も話すことはない…帰りなさい。私も仕事があるんだ。」
パソコンに目を落とす社長
落胆の二人
シーン85
仙台市内 レッスン場近く 勾当台公園ベンチ
(~mental health+er~シーン50)と同じ並び同じポジションでユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、玲奈、拓真
ユリと玲奈はベンチに座っている
ユリ「拓ちゃんも座りな。」
拓真「…そっそっそこは先生の席…ボ、ボクはここ…。」
ユリ「良いんだよ…今日は先生いないから…。」
拓真「…せ、せ、先生の席。」
玲奈「拓ちゃんは席とか並びにこだわりがあるから…」
拓真を優しく見る玲奈とユリ
サチコ「…私、ショックで。先生は私との約束も守ってくれた…私達の味方だって言ってくれてた…いなくならないと思ってた…。」
セイヤ「それはオレ達も同じだよ…こういうこと言ったらいけないけど、先生以外から演技教わるなんて想像もつかないよ…。」
そこへ突然声がかかる
「やっぱりここだと思ったー。」
セイヤ、アヤ、サチコは後ろを振り返る
ユリと玲奈は視線を上げる
チヒロが立っている
チヒロ「あれー?今日は先生いないの?」
わざとらしい意地の悪い笑み
セイヤ「お前のことは相手にしないっていってるだろ?」
玲奈「何しに来たんだよ?帰れよ。」
サチコ「……あんたの顔なんか…みたくもない。」
拓真は呟いている
拓真「…ピ、ピ、ピンク…ピンク…」
睨みつけるアヤ
ユリ「みんな行こう…気分が悪い。」
立ち上がるユリと玲奈
チヒロ「へぇー、良いの?」
無視するセイヤ
チヒロ「聞きたくないの?みんなの大好きな先生がどうなるか?」
全員がチヒロを睨みつける
シーン86
同日 仙台市内 勾当台公園ベンチ
玲奈、拓真、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコそしてチヒロ
チヒロはとても気分が良さそう
玲奈「お前が何知ってんだよ?」
ユリ「あんた先生のストーカーしてんじゃないの?」
チヒロ「そんなことしない。ただ、社長に言っただけなの…。」
セイヤ「何を言ったんだよ。」
チヒロ「聞きたい?」
サチコ「…言いたくて来たくせに。」
チヒロ「荏原先生に体を弄ばれて捨てられたって…初めは先生の方からしつこく迫ってきて、メールや電話も何件も届いて怖かったけど…しつこく迫られてるうち体の関係になっちゃったって…」
玲奈「全部ウソじゃん!!」
チヒロ「体の関係を続けてたのに、ポイ捨てされたって…きっと玲奈さんもユリさんも先生とは体の関係があるから…私とは遊びだったんだろうって…だからプロダクションとして然るべき対応をお願いしますって…きっとクビよ、クビ。」
ユリ「そんなの誰も信じないよ!」
チヒロ「本当にそう思う?今はね電車に乗っててお尻触られたって声を出せば…証拠がなくても捕まっちゃう時代なの…証拠ならね…先生からの着信履歴…残してあるの。」
玲奈「それはお前がリスカの画像送ったから心配して…。」
チヒロ「でもそんなの書いてないもの…着信履歴には…リスカが心配で電話しましたなんて書いてないの履歴には…ただ先生から一晩に5回も6回も着信があった履歴があるだけなの…だから先生に体を要求されて、それに応えたらポイ捨てされたって言えば…それが本当になるんだよ!」
大笑いするチヒロ
チヒロ「あいつクビだぜ、絶対!ザマァミロ!罰だよ、罰!あいつやお前らに罰を与えてやったんだよ!」
玲奈「なんでそんなことするの?」
チヒロは急に真顔になり手首のキズを掻きだす
チヒロ「……あいつがオレを受け入れなかったから…オレを受け入れて抱いてくれなかったから…お前らはオレを見下して…お前らだけで先生を独占してたから…これからSNSであいつはこういうことしたって広めてやる。あいつの評判を落としてもう演技なんか教えられなくしてやる…そうしたら…そうしたら…反省してオレの所に来るよ…」
ニンマリと狂った笑顔を向けるチヒロ
一同を舐め回すように見る
チヒロ「反省して戻ってきたら…許してあげるんだ…そして今度こそ二人で…私って…優しいでしょ?」
玲奈「許さない。」
チヒロ「許さないの?どうやって?ねぇ…悔しい?悔しいでしょ?自分達だけ楽しい人生送りやがってよー…悔しいだろ?」
チヒロの正気ではない表情のアップ
シーン87
荏原の自宅 リビング
テーブルにはノートパソコンが置いてある
その前に座って何やらパソコンに打ち込んでいる荏原
荏原「今はさー、パソコンで履歴書を作る時代だもんなー…オレの若い時は手書きで何回も書き直ししたなぁ…。」
若い時を思い浮かべる荏原
荏原「まぁ、そんなことより…えーと生年月日は…198…と3月…3日生まれ…と…両さんかっていう笑」
一人くだらないことで笑う荏原
荏原「先は長いなぁ…。」
シーン88
プロダクション社長室
社長はパソコンで作業しているとスマートフォンが鳴る
社長「はい、もしもし…はい、かしこまりました。はい、今確認しております…」
パソコンをチェックしている。
社長「確認致しました。その旨…はい、申し伝えて…かしこまりました…はい、ありがとうございます…お疲れ様です。」
電話をきる社長
パソコンの画面を見て一息つく
頷く社長
シーン89
荏原自宅 リビング 夜
パソコンの前に座って作業する荏原
荏原「…えっーと、これを保存して…そしてアップして……確認っと…。」
パソコンの画面を見る荏原
荏原「……良いんじゃない?」
荏原はニヤッと笑う
シーン90
チヒロの自宅 自室
デスクにはノートパソコンが置いてある
チヒロ椅子に座りスマホで何かを打ち込んでいる
チヒロ「荏原って講師は女だったら誰でも手を出す、女癖の悪い男だ…っと」
パソコンの方を向き、入力し始める
チヒロ「体を売って講師に気に入られてる女とゲイの動画なんか誰がみたいと思うんだっと…。」
チヒロはニヤニヤ笑っている
ベッドに体を投げ出し
チヒロ「…早く先生謝ってこないかなぁ…許してあげるのに…素直じゃないなぁ…」
チヒロはニヤニヤしながら手首の傷を見る
デスクの引き出しからカミソリを出して刃を見つめている
シーン91
アパートの一室 2DK 夜
生活感はあるがとても綺麗に片付けられた部屋
30代前半の非常に綺麗な女性がパソコンに向かっている
その傍には三歳位の女の子が絵本を読んで座っている
女の子は母親に似てとても可愛い
パソコンで何かを見てる女性
女性はパソコンを見ながら
女性「…あの人…また何かに巻き込まれてる」
ふふっと懐かしそうに笑う
女性はパソコンを操作して別の画面へ
女性はえっ!と驚いた表情
女性「宮城アクティング・スタジオ…生徒募集…」
女の子も女性の後ろからパソコンを覗き込む
女性「母子家庭…父子家庭…応援…」
女の子「ねぇ、ママ…この人だぁれ?」
女性「…この人はね…ママが昔好きだった俳優さん」
女の子「俳優さん?あっ見たことあるー!」
カメラはテレビの横にあるDVDの棚を捉える
そこには若い日の荏原が出演したDVDが置かれている
シーン92
レッスン場 ロッカールーム 昼
ユリとアヤはロッカールームで話してる
アヤ「うちの事務所のサイト見た?。」
ユリ「見たよ…酷すぎる…先生のことあることない事書いて…事務所クビになったとか…」
アヤ「それにうちらのチャンネルまで誹謗中傷きてるよ…」
ユリ「私だけの事じゃなく、セイヤのことまで書いてあった。」
玲奈入ってくる
玲奈「おはよー。」
ユリ「玲奈も見た?」
玲奈「何を?」
ユリ「事務所のサイト。」
玲奈「えっー見てない…」
ユリはスマホを操作して
ユリ「これ…見て…。」
アヤ「これは私らのチャンネルのコメント欄…」
玲奈はスマホを見るが読めない
玲奈「…ちょっと読んで…」
ユリはスマホを見ながら
ユリ「…女癖が悪くて、すぐレッスン生に手を出す…って」
玲奈「もう許せない…」
セイヤ「おはよ!みんな見た?」
玲奈「今見た!」
玲奈はロッカールームを飛び出していく
後に続くユリ
セイヤ「どこ行くんだよ…何で怒ってんだ?」
シーン93
社長室のドアをノックもせずに開ける玲奈
続いて入室するユリとアヤ
ジロリと三人を睨む社長
社長「ノックもしないで──」
玲奈「社長!何で荏原先生をクビにしたんですか?」
ユリ「先生より、私達より…チヒロのことを信用したんですか?」
社長「……。」
ユリ「見てください。」
ユリとアヤはスマホを社長に渡す
内容を見る社長
玲奈「チヒロが書いたに決まってる!」
アヤ「会社はこれを真実だって判断して辞めさせたんですか?」
社長はため息をつく
玲奈「答えて下さい!」
ユリとアヤ同時に「社長!」
社長は少し呆れ顔
社長「お前ら…ウチは荏原先生を辞めさせてないよ。」
玲奈「えっ!?でも…」
社長「確かにチヒロからは電話はきたよ…荏原先生から体を要求されたとか捨てられたとか言っていた…」
ユリ「そんなのウソだよ!」
玲奈「先生はそんなことしないよ!」
社長「知ってるよ。」
ユリ「えっ!?」
玲奈「なんで…?」
社長「玲奈とチヒロがケンカしてた駐車場…お前達はオレの車の後ろでケンカしてたんだよ。」
フラッシュバック挿入(~mental health+er シーン67)
言い争う玲奈とチヒロ
白いセダンの中の社長はバックミラーで二人の姿を確認する
フラッシュバックから戻る
社長「全部聞いてたよ…それに…」
社長はスマホを見せる
スマホを操作すると玲奈とチヒロの言い争う声が聞こえてくる
社長「録音してある。」
ユリ「でも事務所が然るべき対応をするってこの前チヒロが…。」
社長「オレはね、こういう迷惑行為や全く事実無根の誹謗中傷をする者に対しては然るべき対応をするっていうことを言っただけ。向こうがどう捉えて判断しようとこちらは関知しない。うちの所属タレントに対してこういう誹謗中傷をした場合は法的手段も取らせてもらうよ。」
玲奈「じゃあ何で先生をクビにしたの?」
社長「クビにはしてないよ…荏原先生は自分で辞められたんだよ…もちろん引き止めたよ。」
黙って話を聞く三人
社長「先生はね、理由がどうであれレッスン生に対してアドレスを教えたりするのは間違えていた…もしあそこで自分がきちんと線引き出来ていればチヒロもこうはならなかったかもしれない…今回のことで玲奈、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、拓真…それだけじゃなく沢山のレッスン生達にも迷惑をかけてしまった…だから責任を取って辞めさせてほしいと…私も非常に残念だったよ…。」
玲奈「迷惑なんて…かけてないのに…。」
ユリ「じゃあ先生は…もうここでは…。」
社長「…ここではもう教えることはないよ…ここでは。」
シーン94
BAR 店内 夜
荏原がカウンターに座っている
マスターはグラスを磨いている
荏原店内を見渡し
荏原「相変わらずお客さんいないね…」
マスター「余計なお世話だよ。」
荏原「こっちは市内と違って人が少ないもんね…」
マスター「何でお前、ここで始めようと思ったんだ?仙台駅周辺の方が人も集まり易いだろ?」
荏原「…うん…正直それは考えた…でもさオレこっちに帰ってきて初めて住んだここで…」
荏原の脳裏のフラッシュバック挿入
(~プロポーズ~ シーン37 発泡酒を飲みながら歩くシーン)
(~プロポーズ~ シーン37 自分とリオの幻を見るシーン)
( シーン76 田んぼの中で山々を見るシーン)
荏原「ここでまた一から始めてみようと思って…」
マスター「……これがお前のやりたかった事なのか?」
荏原「…オレさ…昔親が離婚して…どっちにも引き取ってもらえなくて…自分って何で生まれてきたんだろう?オレは本当は要らない人間じゃないのか?ってそう思ってきたんだ…」
マスター「…」
荏原「東京に出てから…役者やりたいって言っても金がないから、劇団にもプロダクションにも入れなくてさ…新聞配達しながらバイト掛け持ちして、やっとスタートラインに立てた…舞台に立つのもチケットノルマで金が掛かるし…そりゃ苦労したよ」
マスターニヤリと笑う
荏原はそれを見て話を続ける
荏原「母子家庭で金がないから夢を目指せない…父子家庭で負担をかけたくないからやりたい事を我慢する…それは違うと思うんだ…どんな環境にあっても夢を目指してほしい…そしてこの環境であったからこそ、良かった…そう思える人生にしてほしい…」
マスター「そうか…」
荏原「語っちゃったね…酔ったかな…そろそろ帰るよ…。」
マスター「まてよ…これ飲んでけよ。」
マスターは(~プロポーズ~ シーン48で出した)ボトルを棚から取り出す
荏原「えっ、でも今日は持ち合わせがないよ。」
マスター「良いんだ、今日のは全部奢りだ。」
マスターはグラスにスコッチ・ウイスキーを注ぐ
荏原の前にグラスを置く
マスター「お前の人生はさ…ギャンブルみたいなもんだろ?これからここで新しくまた出発するんだろ?」
荏原「…うん。」
マスター「ゲンかつぎだよ…出銭はゲンが悪い…。」
荏原はスコッチ・ウイスキーを飲み
荏原「…ありがとう。」
マスターは頷いてグラスを磨いている
シーン95
宮城県内 BARのある駅前 4月 昼
県内でも有数の桜の名所
桜まつりで駅前は人で賑わっている
駅からは沢山の人が出てきて桜まつりの会場へ向かう
シーン96
仙台駅 新幹線ホーム
新幹線が止まりたくさんの人が下車する
新幹線改札口
背が高く髪の長い女性と手を繋いで歩く女の子の後ろ姿
コロコロカバンを引いて歩いていく
シーン97
チヒロの自宅 自室
チヒロは自室のベッドに座っている
部屋の外から母親の声
母親「チヒロ…あなたに手紙が届いてるけど…。」
チヒロ「ドアの前に置いとけよ!」
母親「早く見た方が良いと思うけど…」
チヒロ「わかったよ!置いとけよ!」
チヒロは面倒くさそうに舌打ちしながらドアを開けて封筒を取る
封筒のアップ
封筒は二枚
一枚目「株式会社24プロダクション」
二枚目の封筒を脇に挟みプロダクションからの封筒を開く
中の書類のアップ
「契約解除通達書」
チヒロは一瞬考えてから手紙を投げ捨て二枚目の封筒を見る
二枚目の封筒のアップ
「仙台法律事務所」
チヒロは封筒を乱暴にあけて書類を読む
チヒロ「私を…訴えるって…損害賠償って…」
青ざめてへたり込むチヒロ
シーン98
新しいレッスン場
荏原は窓を見ている
荏原はため息をつきながら
荏原「…失敗したなぁ…何で桜まつりの初日にレッスン開始にしたんだろうなぁ…」
時計を見る荏原
時計は10:30
荏原「30分前なのに誰も来ない…」
椅子に座る荏原
シーン99
荏原は相変わらず窓の外を眺めている
後ろの方でドアが開く音
荏原が振り返ると
ドアを開き押さえるセイヤ
カメラを構えて後ろ向きに入ってくるサチコ
ユリ「今日のユリチャンネルは私達の先生が演技教室を開くということで取材にきましたー!」
玲奈「玲奈もいるよ!」
カメラに手を振る玲奈
ユリ「今日は玲奈も一緒なんだよね!」
玲奈「ゲスト出演!」
ユリ「玲奈は私の同期です!」
荏原「お前ら…」
ユリ「今日は先生が…私達の先生が!新しくレッスン教室を開く…母子家庭や父子家庭、ひとり親のお子さんはレッスン料無料でその子達の夢を支援するという企画の意図や今後の計画を聞きたく、アポ無しで突撃取材を敢行しました!」
玲奈とユリは荏原の方を振り返る
玲奈とユリ近づいてくる
カメラを向けるサチコ
玲奈「先生、私達怒ってるんだよ…何も言わないで…」
ユリ「黙っていなくなって…」
セイヤ「そうだよ!心配したんだよ!」
アヤ「クビにされたのかと思って…」
玲奈「…何で言ってくれないの?…」
荏原「…悪い…」
玲奈「ホントに悪いよ!ちゃんと聞かせてよ!」
ユリ「先生は私達のこと世界に通用する役者にするって約束したよね?」
荏原「…したよ…」
玲奈「じゃあちゃんと最後までレッスンしてよ!」
荏原「事務所との契約は…」
セイヤ「社長がさ…」
回想シーン挿入
社長「うちでは荏原先生以上の演技講師を見つけることは出来ないから、映像演技がやりたい人は全員荏原先生の教室でレッスンを受けてもらう。その許可も役員会で下りてる。」
回想シーンから戻り
セイヤ「と社長は言ってました…オレ達は気持ち決まってるよ…」
玲奈「良いでしょ!?先生!」
荏原は少し考えて
荏原「…わかった!これからも教えていくよ…その代わりオレは厳しいよ?これからはウチの生徒になるんだから…」
玲奈「わかった!」
アヤとセイヤはハイタッチする
ユリと玲奈も手を握り合う
サチコはそれを撮影してる
再びドアの開く音
拓真と拓真の父吉岡、後ろには数人の若者
荏原「拓ちゃん…吉岡さん…」
サチコはカメラを吉岡達に向ける
吉岡は皮肉めいた笑みを浮かべて
吉岡「先生…拓真は受けさせてもらえないんですか?」
荏原「それは…」
吉岡「私はね、先生以外に拓真を預ける気はないんですよ…それに…先生は人が悪い…」
荏原「…」
吉岡「言ったでしょう?独立して教室を開く時はウチが全面的に協力すると。」
荏原「吉岡さん…」
拓真は玲奈と荏原の傍に歩み寄る
拓真は荏原に手を差し出す
拓真「…先生の…レッスン…受ける…」
手を握る荏原
荏原「…うん、またレッスンしような拓ちゃん…」
吉岡はその言葉を聞き
吉岡「これから君たちの演技講師を担当してくださる荏原先生だ、挨拶しなさい。」
吉岡の後ろの若者達「荏原先生、よろしくお願いします!」
荏原「こちらこそ、よろしく!」
サチコは全てをカメラの映像におさめている
吉岡を見る荏原
荏原「吉岡さんありがとうございます!」
吉岡は軽く手を上げて部屋を出ていく
シーン100
新レッスン場のあるビル内
吉岡は出口へ向かって歩いている
子供を連れた女性とすれ違う
吉岡は何気なくその女性の顔を見る
軽く頭を下げて通り過ぎる女性
吉岡は数歩進んで立ち止まり
何となく振り返るが女性と子供の姿はない
出口へ向かい歩き始める吉岡
シーン101
新レッスン場
ユリのチャンネルの取材はまだ続いている
ユリ「先生の真意を聞かせて下さい!」
荏原「…オレはね、子供の頃に両親が離婚して養子に出された…母親…父親…どちらからも引き取ってもらえなかった…オレは要らない人間だと思った…オレを認めてほしかった…親も誰も必要としないオレを必要としてくれたのは演劇だった…オレにしか出来ない表現がそこにあった…」
玲奈「…先生…」
荏原「演劇はオレの経験…オレしかわからない痛み…全てを必要としてくれた……オレはね…」
ゆっくり玲奈、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、拓真、そして若者達を見渡し
各役者のアップをカットに入れながら
荏原「それぞれに悩み、苦しみ…本当の自分を表現したい…普通とは違う自分を…本当はわかってほしいけど表には出せない本当の自分…それを知ってほしいと願う…そういう若い人達の為に手助けがしたい…片親だから…家が貧乏だから…みんなと同じじゃないから…そんなことで夢を諦めようとしている子達…その子達に知ってほしいのは…そういう環境だからこそわかることがある…痛みを知った人間しか表せない表現がある…その場を作りたい……そしてその喜びを知った子達の表情を親御さんに見てもらいたい…そういう気持ちでこれを始めようと思ったんだ。」
シーン102
新レッスン場
ユリチャンネルのインタビュー後
荏原は奥のテーブルでノートを出したり台本を出したりしている
レッスン場内ではレッスン生達が椅子を出したり台本を出したりしている
非常に騒がしい
玲奈が椅子を出している
そこへ続々と親子連れの人達が入ってくる
女性「レッスン会場はこちらで間違いないですか?」
玲奈「はい…ここですよ!見学ですか?」
軽く笑みを浮かべて頷く女性
玲奈は騒がしい場内の声に負けない大きな声で荏原に知らせる
玲奈「先生ー!!見学の方が来ましたよー!」
荏原は入口の方向を見る
荏原「どうぞ、お入り下さい!」
ユリ「凄い!こんなに沢山の人が来てくれるなんて…」
玲奈「私達の先生のやる事だもん…当たり前だよ!」
そこへ女性と女の子が入ってくる
女性「荏原先生の教室はこちらでしょうか?」
玲奈「はい、そうです!お知り合いの方ですか?」
女性は曖昧に頷く
玲奈「先生!お知り合いの方が来ましたよ!」
荏原はその女性を見る
その女性の姿を見た瞬間
騒がしかった場内の音が荏原の耳には入らなくなる
荏原だけ時間が止まる
荏原の様子を見て生徒達がシーンとなる
場内へゆっくり歩みを進める女性と女の子
コツコツという歩く音だけが場内に響く
荏原「……どうして?」
リオ「…娘に演技を教えてほしくて…」
女の子は荏原を指さし
女の子「この人おうちのDVDで見たことあるー!」
荏原はしゃがんで女の子と同じ目線にする
荏原「お名前は?」
女の子「…」
荏原「恥ずかしいのかな?」
リオ「…桜…」
荏原「さくら?」
リオ「…私の憧れていた…大好きな俳優が桜の季節に生まれた人なんです…」
荏原「……桜ちゃん?」
頷く桜
桜「三歳だよ…。」
荏原「そっか…三歳になるのか…よろしくね」
荏原が手を差し出すとその荏原の人差し指をゆっくりとおずおず握る桜
ユリと玲奈は肘で小突きあって
ユリ「何あの人?」
玲奈「知らない?」
ユリ「良いの?」
玲奈「何がよ?」
みたいな会話を小声でしている
荏原「………演技…したいの?」
桜「…いつもテレビ見てるから…出来るよ…」
荏原「…そうなの?」
桜「…お前のだよ!」
突然のお前呼ばわりに驚く荏原とその周囲
みんな笑い出す
荏原は立ち上がり
荏原「リオと桜は椅子に座って見学してて。」
後方の椅子へ向かうリオと桜
その後ろ姿を見つめる荏原
荏原は手を叩きながら
荏原「じゃあレッスンを開始します!よろしくお願いします!」
生徒達「よろしくお願いしまーす!」
その荏原の姿を嬉しそうな表情で見つめるリオ
シーン103
新レッスン場の入口
ドアを開けて花束を持ち廊下を走ってくるヒロと大輔
ヒロ「お前が寝坊するから…」
大輔「ヒロさんが昨日夜遅くまで行こうかな?行かないかな?兄ちゃん怒ってるかなぁって電話してくるからですよ!」
ヒロがふと横を見る
髪の毛はボサボサでヨレヨレのTシャツを着た小学生の兄弟が二人立っている
弟「…兄ちゃん…行かないの?」
兄「…行くけど…入れてくれるかな…」
ヒロはその兄弟を見つめて何か胸に去来する
ヒロはゆっくりとその兄弟に近づく
ヒロ「レッスン受けに来たの?」
兄「…うん…でも母さん働きに行ってるから…オレ達だけで入れてくれるかな?」
弟はずっと兄の手を握っている
ヒロ「…一緒に行こうか?お兄ちゃん達が一緒に中に入ってあげるよ。」
兄「…いいの?」
ヒロ「…先生は優しい人だからきっと入れてくれると思うよ。」
ヒロは兄弟の兄へ手を差し伸べる
ヒロ「行こう!」
ヒロの手を握る兄弟の兄
兄「うん!」
弟は喜んだ表情
大輔は弟に手を差し出す
大輔の手を握る弟
四人が並んでビル内のホールをレッスン場へ向かって歩いている
画面は切り替わり
川沿いの満開の桜と行き交う楽しそうな人々
back beat 「完全版」 end
仙台市街地 裏通り (~プロポーズ~シーン34で弁護士事務所からの帰りに歩いた道)
荏原は歩いている
荏原来た道を振り返り何かを思い出しフッと笑う
前に歩いていく荏原
シーン76
宮城県仙台市柳生 裏道(~プロポーズ~ シーン37で自分とリオの幻を見た道路)
マンションが見える
荏原の手にはペットボトルのジュース
荏原は後ろを振り返るが視線の先には誰もおらず、ただ田んぼと山々が見える
遠くの山々を見る
一つ息を吐く荏原
何事かを考えている
荏原はまた歩き出す
シーン77
レッスン場 昼
入口付近にはホワイトボード
ホワイトボードには張り紙がしてある
張り紙「講師変更のお知らせ」
ホワイトボードの前でユリ、アヤ、セイヤ、サチコがその張り紙を見ている
ユリ「先生のことじゃないよね?」
セイヤ「結構前にボイトレの先生変わった時も同じようなの貼ってあったし、誰か変わるんじゃないの?」
アヤ「先生が私たちに何も言わないってことないでしょ。」
アヤとサチコはロッカールームへ向かう
そこへ玲奈と拓真が来る
玲奈「おはよう!」
ユリ「あっ玲奈おはよう!」
拓真「おはよう…ございます…。」
ユリ「拓ちゃん、自分から声かけれるようになったんだね!」
セイヤ「拓ちゃん随分変わったよね…。」
拓真「せ、先生の…おかげで…みんなも…優しいし…」
ウンウンと頷く玲奈 自分のおかげだみたいな表情
セイヤ「なんでお前が勝ち誇ってんの笑」
玲奈「だってぇ…って何見てんの?」
ユリ「講師が変更しますってお知らせがあったから。」
玲奈「誰?」
ユリ「書いてないんだよね。」
玲奈「うちの事務所はいつも書かないよね!誰が変わるのかわかんないだろって!」
他にも入ってくる生徒達
ユリ「私達もロッカーに荷物置いてきちゃお!」
玲奈「うん!行こう、拓ちゃん!」
と言って玲奈が拓真の方を見ると その後ろから講師が入ってくる
講師「もうレッスン始まるよ!」
玲奈の驚いた表情
シーン78
チヒロ自宅 自室 (~mental health+er~ シーン71の電話の続き)
チヒロの部屋は滅茶苦茶になっている
荏原からの電話の後で怒り狂って部屋の中で暴れた後
チヒロ「もしもし、社長ですか?そうですチヒロです。私…荏原先生に酷いことをされて…実は前から電話やメールが頻繁にあって多い時は一晩に5回も6回も着信があって…それに先生が君は特別だからって体の関係も迫られて…あまりにも迫られるので…ついついそういう関係になってしまって…レッスンの度にそれに応じていたんですが…私に飽きてしまったみたいで、もう連絡をしてくるなと…はい、そうです。多分先生のクラスの玲奈さんやユリさん達とも私と同じく体の関係なんだと思います…プロダクションとしてきちんと対応して下さい。私悔しくて…もしプロダクションがきちんとしてくれないならSNSからも発信して真実を明かにしたいです…」
シーン79
プロダクション社長室
電話の対応をする社長
電話の相手はチヒロ
社長「貴方の仰られることはわかりました。会社として然るべき処置をお約束致します。では失礼致します。」
電話を切る社長
一つ息を吐き改めて電話をかける社長
社長「もしもし、荏原先生ですか?お話があるので社長室まで来てください。」
シーン80
BAR 夜 (~プロポーズ~ で訪れた店)
客は誰もおらず、グラスを磨いているマスター
ドアの開く音が聞こえる
マスター「いらっしゃい…おぉ…久しぶりだな…まぁ座れよ。」
シーン81
同日 BAR
荏原はカウンターに座っている
店内に客はおらずマスターも荏原の隣に座っている
荏原は飲み終わって氷しか入ってないグラスを手で弄んでいる
マスターは軽い笑みを浮かべながら
マスター「ふーん…そんなことがあった割には飲んだくれてないな笑」
荏原「オレ飲んだくれたことあったっけ?」
マスター「よく言うよ…ってきり発泡酒の2、3本も飲んでんのかと思ったら素面だもんな笑」
荏原は人差し指を左右に振りながら
荏原「チッチッチッ!お酒は美味しく飲むものでしょー笑」
マスターはその荏原を見て
マスター「大丈夫そうだな。」
荏原「……また来るよ。」
外へ出ようとする荏原に声をかける
マスター「お前、今日のお代は?」
荏原「また来るから、ツケといて笑」
出ていく荏原
マスター「ったく…あいつは…。」
苦虫を噛み潰したような表情のマスター
だが嬉しそうでもあるマスターの表情
シーン82
レッスン場 昼
レッスン終盤
講師「次回のレッスンまで今日読み合わせした台本を覚えておくようにして下さい。お疲れ様でした。」
生徒達「お疲れ様でしたー!」
玲奈は講師の元へ向かう
玲奈「お疲れ様です。」
講師「お疲れ様。」
玲奈「あの…先生はこれからも映像演技クラスの担当に…?」
講師「私は代理だよ。詳しいことはわからないけど、暫くの間このクラスも受け持ってほしいと社長からの伝令でね。」
玲奈「そうなんですか…。」
講師「私も元々は声優クラスの講師だからずっと受け持つわけではないよ、新しい先生が来るまでの代理だと思う。」
玲奈「新しい先生…ありがとうございました。」
不思議そうな顔で玲奈の後ろ姿を見る講師
シーン83
同日 レッスン場 ロッカールーム
ロッカールームの中ではユリ、アヤ、サチコ、セイヤ、拓真が玲奈を待っている
玲奈が肩を落として入ってくる
ユリ「どうだった?」
アヤ「なんて言ってた?」
玲奈「あの先生は代理なんだって…」
セイヤ「じゃあ先生は…」
玲奈「新しい先生が来るまでの代理なんだって…。」
ユリ「うそ!先生辞めるわけないじゃん!」
セイヤ「黙って辞めていくわけないよ!」
玲奈は少々イラッとした感じで
玲奈「でも暫くはあの先生が担当して、新しい先生が来たらその新しい先生に変わるんだって!」
拓真「……せ、先生には…も、もう会えな…い?」
玲奈「………。」
ロッカールーム全員がガッカリして肩を落とす
シーン84
プロダクション 社長室入口
玲奈とユリは社長室の前に立っている
玲奈とユリはお互い顔を見合わせて頷く
玲奈ドアをノックする
玲奈ドアを開ける
玲奈「失礼しまーす。」
ユリも失礼しまーすと続いて入室する
社長が座っている
社長「珍しい組み合わせだな…どうした?」
玲奈「荏原先生のことで…。」
社長「その話か…。」
ユリ「先生は辞めたんですか?もうここには来ないんですか?」
社長「…役員会の決定があるまでは何も話すことは出来ない。」
玲奈「そんな…何でですか?」
ユリ「先生何かしたんですか?教えて下さい!」
社長「何も話すことはない…帰りなさい。私も仕事があるんだ。」
パソコンに目を落とす社長
落胆の二人
シーン85
仙台市内 レッスン場近く 勾当台公園ベンチ
(~mental health+er~シーン50)と同じ並び同じポジションでユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、玲奈、拓真
ユリと玲奈はベンチに座っている
ユリ「拓ちゃんも座りな。」
拓真「…そっそっそこは先生の席…ボ、ボクはここ…。」
ユリ「良いんだよ…今日は先生いないから…。」
拓真「…せ、せ、先生の席。」
玲奈「拓ちゃんは席とか並びにこだわりがあるから…」
拓真を優しく見る玲奈とユリ
サチコ「…私、ショックで。先生は私との約束も守ってくれた…私達の味方だって言ってくれてた…いなくならないと思ってた…。」
セイヤ「それはオレ達も同じだよ…こういうこと言ったらいけないけど、先生以外から演技教わるなんて想像もつかないよ…。」
そこへ突然声がかかる
「やっぱりここだと思ったー。」
セイヤ、アヤ、サチコは後ろを振り返る
ユリと玲奈は視線を上げる
チヒロが立っている
チヒロ「あれー?今日は先生いないの?」
わざとらしい意地の悪い笑み
セイヤ「お前のことは相手にしないっていってるだろ?」
玲奈「何しに来たんだよ?帰れよ。」
サチコ「……あんたの顔なんか…みたくもない。」
拓真は呟いている
拓真「…ピ、ピ、ピンク…ピンク…」
睨みつけるアヤ
ユリ「みんな行こう…気分が悪い。」
立ち上がるユリと玲奈
チヒロ「へぇー、良いの?」
無視するセイヤ
チヒロ「聞きたくないの?みんなの大好きな先生がどうなるか?」
全員がチヒロを睨みつける
シーン86
同日 仙台市内 勾当台公園ベンチ
玲奈、拓真、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコそしてチヒロ
チヒロはとても気分が良さそう
玲奈「お前が何知ってんだよ?」
ユリ「あんた先生のストーカーしてんじゃないの?」
チヒロ「そんなことしない。ただ、社長に言っただけなの…。」
セイヤ「何を言ったんだよ。」
チヒロ「聞きたい?」
サチコ「…言いたくて来たくせに。」
チヒロ「荏原先生に体を弄ばれて捨てられたって…初めは先生の方からしつこく迫ってきて、メールや電話も何件も届いて怖かったけど…しつこく迫られてるうち体の関係になっちゃったって…」
玲奈「全部ウソじゃん!!」
チヒロ「体の関係を続けてたのに、ポイ捨てされたって…きっと玲奈さんもユリさんも先生とは体の関係があるから…私とは遊びだったんだろうって…だからプロダクションとして然るべき対応をお願いしますって…きっとクビよ、クビ。」
ユリ「そんなの誰も信じないよ!」
チヒロ「本当にそう思う?今はね電車に乗っててお尻触られたって声を出せば…証拠がなくても捕まっちゃう時代なの…証拠ならね…先生からの着信履歴…残してあるの。」
玲奈「それはお前がリスカの画像送ったから心配して…。」
チヒロ「でもそんなの書いてないもの…着信履歴には…リスカが心配で電話しましたなんて書いてないの履歴には…ただ先生から一晩に5回も6回も着信があった履歴があるだけなの…だから先生に体を要求されて、それに応えたらポイ捨てされたって言えば…それが本当になるんだよ!」
大笑いするチヒロ
チヒロ「あいつクビだぜ、絶対!ザマァミロ!罰だよ、罰!あいつやお前らに罰を与えてやったんだよ!」
玲奈「なんでそんなことするの?」
チヒロは急に真顔になり手首のキズを掻きだす
チヒロ「……あいつがオレを受け入れなかったから…オレを受け入れて抱いてくれなかったから…お前らはオレを見下して…お前らだけで先生を独占してたから…これからSNSであいつはこういうことしたって広めてやる。あいつの評判を落としてもう演技なんか教えられなくしてやる…そうしたら…そうしたら…反省してオレの所に来るよ…」
ニンマリと狂った笑顔を向けるチヒロ
一同を舐め回すように見る
チヒロ「反省して戻ってきたら…許してあげるんだ…そして今度こそ二人で…私って…優しいでしょ?」
玲奈「許さない。」
チヒロ「許さないの?どうやって?ねぇ…悔しい?悔しいでしょ?自分達だけ楽しい人生送りやがってよー…悔しいだろ?」
チヒロの正気ではない表情のアップ
シーン87
荏原の自宅 リビング
テーブルにはノートパソコンが置いてある
その前に座って何やらパソコンに打ち込んでいる荏原
荏原「今はさー、パソコンで履歴書を作る時代だもんなー…オレの若い時は手書きで何回も書き直ししたなぁ…。」
若い時を思い浮かべる荏原
荏原「まぁ、そんなことより…えーと生年月日は…198…と3月…3日生まれ…と…両さんかっていう笑」
一人くだらないことで笑う荏原
荏原「先は長いなぁ…。」
シーン88
プロダクション社長室
社長はパソコンで作業しているとスマートフォンが鳴る
社長「はい、もしもし…はい、かしこまりました。はい、今確認しております…」
パソコンをチェックしている。
社長「確認致しました。その旨…はい、申し伝えて…かしこまりました…はい、ありがとうございます…お疲れ様です。」
電話をきる社長
パソコンの画面を見て一息つく
頷く社長
シーン89
荏原自宅 リビング 夜
パソコンの前に座って作業する荏原
荏原「…えっーと、これを保存して…そしてアップして……確認っと…。」
パソコンの画面を見る荏原
荏原「……良いんじゃない?」
荏原はニヤッと笑う
シーン90
チヒロの自宅 自室
デスクにはノートパソコンが置いてある
チヒロ椅子に座りスマホで何かを打ち込んでいる
チヒロ「荏原って講師は女だったら誰でも手を出す、女癖の悪い男だ…っと」
パソコンの方を向き、入力し始める
チヒロ「体を売って講師に気に入られてる女とゲイの動画なんか誰がみたいと思うんだっと…。」
チヒロはニヤニヤ笑っている
ベッドに体を投げ出し
チヒロ「…早く先生謝ってこないかなぁ…許してあげるのに…素直じゃないなぁ…」
チヒロはニヤニヤしながら手首の傷を見る
デスクの引き出しからカミソリを出して刃を見つめている
シーン91
アパートの一室 2DK 夜
生活感はあるがとても綺麗に片付けられた部屋
30代前半の非常に綺麗な女性がパソコンに向かっている
その傍には三歳位の女の子が絵本を読んで座っている
女の子は母親に似てとても可愛い
パソコンで何かを見てる女性
女性はパソコンを見ながら
女性「…あの人…また何かに巻き込まれてる」
ふふっと懐かしそうに笑う
女性はパソコンを操作して別の画面へ
女性はえっ!と驚いた表情
女性「宮城アクティング・スタジオ…生徒募集…」
女の子も女性の後ろからパソコンを覗き込む
女性「母子家庭…父子家庭…応援…」
女の子「ねぇ、ママ…この人だぁれ?」
女性「…この人はね…ママが昔好きだった俳優さん」
女の子「俳優さん?あっ見たことあるー!」
カメラはテレビの横にあるDVDの棚を捉える
そこには若い日の荏原が出演したDVDが置かれている
シーン92
レッスン場 ロッカールーム 昼
ユリとアヤはロッカールームで話してる
アヤ「うちの事務所のサイト見た?。」
ユリ「見たよ…酷すぎる…先生のことあることない事書いて…事務所クビになったとか…」
アヤ「それにうちらのチャンネルまで誹謗中傷きてるよ…」
ユリ「私だけの事じゃなく、セイヤのことまで書いてあった。」
玲奈入ってくる
玲奈「おはよー。」
ユリ「玲奈も見た?」
玲奈「何を?」
ユリ「事務所のサイト。」
玲奈「えっー見てない…」
ユリはスマホを操作して
ユリ「これ…見て…。」
アヤ「これは私らのチャンネルのコメント欄…」
玲奈はスマホを見るが読めない
玲奈「…ちょっと読んで…」
ユリはスマホを見ながら
ユリ「…女癖が悪くて、すぐレッスン生に手を出す…って」
玲奈「もう許せない…」
セイヤ「おはよ!みんな見た?」
玲奈「今見た!」
玲奈はロッカールームを飛び出していく
後に続くユリ
セイヤ「どこ行くんだよ…何で怒ってんだ?」
シーン93
社長室のドアをノックもせずに開ける玲奈
続いて入室するユリとアヤ
ジロリと三人を睨む社長
社長「ノックもしないで──」
玲奈「社長!何で荏原先生をクビにしたんですか?」
ユリ「先生より、私達より…チヒロのことを信用したんですか?」
社長「……。」
ユリ「見てください。」
ユリとアヤはスマホを社長に渡す
内容を見る社長
玲奈「チヒロが書いたに決まってる!」
アヤ「会社はこれを真実だって判断して辞めさせたんですか?」
社長はため息をつく
玲奈「答えて下さい!」
ユリとアヤ同時に「社長!」
社長は少し呆れ顔
社長「お前ら…ウチは荏原先生を辞めさせてないよ。」
玲奈「えっ!?でも…」
社長「確かにチヒロからは電話はきたよ…荏原先生から体を要求されたとか捨てられたとか言っていた…」
ユリ「そんなのウソだよ!」
玲奈「先生はそんなことしないよ!」
社長「知ってるよ。」
ユリ「えっ!?」
玲奈「なんで…?」
社長「玲奈とチヒロがケンカしてた駐車場…お前達はオレの車の後ろでケンカしてたんだよ。」
フラッシュバック挿入(~mental health+er シーン67)
言い争う玲奈とチヒロ
白いセダンの中の社長はバックミラーで二人の姿を確認する
フラッシュバックから戻る
社長「全部聞いてたよ…それに…」
社長はスマホを見せる
スマホを操作すると玲奈とチヒロの言い争う声が聞こえてくる
社長「録音してある。」
ユリ「でも事務所が然るべき対応をするってこの前チヒロが…。」
社長「オレはね、こういう迷惑行為や全く事実無根の誹謗中傷をする者に対しては然るべき対応をするっていうことを言っただけ。向こうがどう捉えて判断しようとこちらは関知しない。うちの所属タレントに対してこういう誹謗中傷をした場合は法的手段も取らせてもらうよ。」
玲奈「じゃあ何で先生をクビにしたの?」
社長「クビにはしてないよ…荏原先生は自分で辞められたんだよ…もちろん引き止めたよ。」
黙って話を聞く三人
社長「先生はね、理由がどうであれレッスン生に対してアドレスを教えたりするのは間違えていた…もしあそこで自分がきちんと線引き出来ていればチヒロもこうはならなかったかもしれない…今回のことで玲奈、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、拓真…それだけじゃなく沢山のレッスン生達にも迷惑をかけてしまった…だから責任を取って辞めさせてほしいと…私も非常に残念だったよ…。」
玲奈「迷惑なんて…かけてないのに…。」
ユリ「じゃあ先生は…もうここでは…。」
社長「…ここではもう教えることはないよ…ここでは。」
シーン94
BAR 店内 夜
荏原がカウンターに座っている
マスターはグラスを磨いている
荏原店内を見渡し
荏原「相変わらずお客さんいないね…」
マスター「余計なお世話だよ。」
荏原「こっちは市内と違って人が少ないもんね…」
マスター「何でお前、ここで始めようと思ったんだ?仙台駅周辺の方が人も集まり易いだろ?」
荏原「…うん…正直それは考えた…でもさオレこっちに帰ってきて初めて住んだここで…」
荏原の脳裏のフラッシュバック挿入
(~プロポーズ~ シーン37 発泡酒を飲みながら歩くシーン)
(~プロポーズ~ シーン37 自分とリオの幻を見るシーン)
( シーン76 田んぼの中で山々を見るシーン)
荏原「ここでまた一から始めてみようと思って…」
マスター「……これがお前のやりたかった事なのか?」
荏原「…オレさ…昔親が離婚して…どっちにも引き取ってもらえなくて…自分って何で生まれてきたんだろう?オレは本当は要らない人間じゃないのか?ってそう思ってきたんだ…」
マスター「…」
荏原「東京に出てから…役者やりたいって言っても金がないから、劇団にもプロダクションにも入れなくてさ…新聞配達しながらバイト掛け持ちして、やっとスタートラインに立てた…舞台に立つのもチケットノルマで金が掛かるし…そりゃ苦労したよ」
マスターニヤリと笑う
荏原はそれを見て話を続ける
荏原「母子家庭で金がないから夢を目指せない…父子家庭で負担をかけたくないからやりたい事を我慢する…それは違うと思うんだ…どんな環境にあっても夢を目指してほしい…そしてこの環境であったからこそ、良かった…そう思える人生にしてほしい…」
マスター「そうか…」
荏原「語っちゃったね…酔ったかな…そろそろ帰るよ…。」
マスター「まてよ…これ飲んでけよ。」
マスターは(~プロポーズ~ シーン48で出した)ボトルを棚から取り出す
荏原「えっ、でも今日は持ち合わせがないよ。」
マスター「良いんだ、今日のは全部奢りだ。」
マスターはグラスにスコッチ・ウイスキーを注ぐ
荏原の前にグラスを置く
マスター「お前の人生はさ…ギャンブルみたいなもんだろ?これからここで新しくまた出発するんだろ?」
荏原「…うん。」
マスター「ゲンかつぎだよ…出銭はゲンが悪い…。」
荏原はスコッチ・ウイスキーを飲み
荏原「…ありがとう。」
マスターは頷いてグラスを磨いている
シーン95
宮城県内 BARのある駅前 4月 昼
県内でも有数の桜の名所
桜まつりで駅前は人で賑わっている
駅からは沢山の人が出てきて桜まつりの会場へ向かう
シーン96
仙台駅 新幹線ホーム
新幹線が止まりたくさんの人が下車する
新幹線改札口
背が高く髪の長い女性と手を繋いで歩く女の子の後ろ姿
コロコロカバンを引いて歩いていく
シーン97
チヒロの自宅 自室
チヒロは自室のベッドに座っている
部屋の外から母親の声
母親「チヒロ…あなたに手紙が届いてるけど…。」
チヒロ「ドアの前に置いとけよ!」
母親「早く見た方が良いと思うけど…」
チヒロ「わかったよ!置いとけよ!」
チヒロは面倒くさそうに舌打ちしながらドアを開けて封筒を取る
封筒のアップ
封筒は二枚
一枚目「株式会社24プロダクション」
二枚目の封筒を脇に挟みプロダクションからの封筒を開く
中の書類のアップ
「契約解除通達書」
チヒロは一瞬考えてから手紙を投げ捨て二枚目の封筒を見る
二枚目の封筒のアップ
「仙台法律事務所」
チヒロは封筒を乱暴にあけて書類を読む
チヒロ「私を…訴えるって…損害賠償って…」
青ざめてへたり込むチヒロ
シーン98
新しいレッスン場
荏原は窓を見ている
荏原はため息をつきながら
荏原「…失敗したなぁ…何で桜まつりの初日にレッスン開始にしたんだろうなぁ…」
時計を見る荏原
時計は10:30
荏原「30分前なのに誰も来ない…」
椅子に座る荏原
シーン99
荏原は相変わらず窓の外を眺めている
後ろの方でドアが開く音
荏原が振り返ると
ドアを開き押さえるセイヤ
カメラを構えて後ろ向きに入ってくるサチコ
ユリ「今日のユリチャンネルは私達の先生が演技教室を開くということで取材にきましたー!」
玲奈「玲奈もいるよ!」
カメラに手を振る玲奈
ユリ「今日は玲奈も一緒なんだよね!」
玲奈「ゲスト出演!」
ユリ「玲奈は私の同期です!」
荏原「お前ら…」
ユリ「今日は先生が…私達の先生が!新しくレッスン教室を開く…母子家庭や父子家庭、ひとり親のお子さんはレッスン料無料でその子達の夢を支援するという企画の意図や今後の計画を聞きたく、アポ無しで突撃取材を敢行しました!」
玲奈とユリは荏原の方を振り返る
玲奈とユリ近づいてくる
カメラを向けるサチコ
玲奈「先生、私達怒ってるんだよ…何も言わないで…」
ユリ「黙っていなくなって…」
セイヤ「そうだよ!心配したんだよ!」
アヤ「クビにされたのかと思って…」
玲奈「…何で言ってくれないの?…」
荏原「…悪い…」
玲奈「ホントに悪いよ!ちゃんと聞かせてよ!」
ユリ「先生は私達のこと世界に通用する役者にするって約束したよね?」
荏原「…したよ…」
玲奈「じゃあちゃんと最後までレッスンしてよ!」
荏原「事務所との契約は…」
セイヤ「社長がさ…」
回想シーン挿入
社長「うちでは荏原先生以上の演技講師を見つけることは出来ないから、映像演技がやりたい人は全員荏原先生の教室でレッスンを受けてもらう。その許可も役員会で下りてる。」
回想シーンから戻り
セイヤ「と社長は言ってました…オレ達は気持ち決まってるよ…」
玲奈「良いでしょ!?先生!」
荏原は少し考えて
荏原「…わかった!これからも教えていくよ…その代わりオレは厳しいよ?これからはウチの生徒になるんだから…」
玲奈「わかった!」
アヤとセイヤはハイタッチする
ユリと玲奈も手を握り合う
サチコはそれを撮影してる
再びドアの開く音
拓真と拓真の父吉岡、後ろには数人の若者
荏原「拓ちゃん…吉岡さん…」
サチコはカメラを吉岡達に向ける
吉岡は皮肉めいた笑みを浮かべて
吉岡「先生…拓真は受けさせてもらえないんですか?」
荏原「それは…」
吉岡「私はね、先生以外に拓真を預ける気はないんですよ…それに…先生は人が悪い…」
荏原「…」
吉岡「言ったでしょう?独立して教室を開く時はウチが全面的に協力すると。」
荏原「吉岡さん…」
拓真は玲奈と荏原の傍に歩み寄る
拓真は荏原に手を差し出す
拓真「…先生の…レッスン…受ける…」
手を握る荏原
荏原「…うん、またレッスンしような拓ちゃん…」
吉岡はその言葉を聞き
吉岡「これから君たちの演技講師を担当してくださる荏原先生だ、挨拶しなさい。」
吉岡の後ろの若者達「荏原先生、よろしくお願いします!」
荏原「こちらこそ、よろしく!」
サチコは全てをカメラの映像におさめている
吉岡を見る荏原
荏原「吉岡さんありがとうございます!」
吉岡は軽く手を上げて部屋を出ていく
シーン100
新レッスン場のあるビル内
吉岡は出口へ向かって歩いている
子供を連れた女性とすれ違う
吉岡は何気なくその女性の顔を見る
軽く頭を下げて通り過ぎる女性
吉岡は数歩進んで立ち止まり
何となく振り返るが女性と子供の姿はない
出口へ向かい歩き始める吉岡
シーン101
新レッスン場
ユリのチャンネルの取材はまだ続いている
ユリ「先生の真意を聞かせて下さい!」
荏原「…オレはね、子供の頃に両親が離婚して養子に出された…母親…父親…どちらからも引き取ってもらえなかった…オレは要らない人間だと思った…オレを認めてほしかった…親も誰も必要としないオレを必要としてくれたのは演劇だった…オレにしか出来ない表現がそこにあった…」
玲奈「…先生…」
荏原「演劇はオレの経験…オレしかわからない痛み…全てを必要としてくれた……オレはね…」
ゆっくり玲奈、ユリ、アヤ、セイヤ、サチコ、拓真、そして若者達を見渡し
各役者のアップをカットに入れながら
荏原「それぞれに悩み、苦しみ…本当の自分を表現したい…普通とは違う自分を…本当はわかってほしいけど表には出せない本当の自分…それを知ってほしいと願う…そういう若い人達の為に手助けがしたい…片親だから…家が貧乏だから…みんなと同じじゃないから…そんなことで夢を諦めようとしている子達…その子達に知ってほしいのは…そういう環境だからこそわかることがある…痛みを知った人間しか表せない表現がある…その場を作りたい……そしてその喜びを知った子達の表情を親御さんに見てもらいたい…そういう気持ちでこれを始めようと思ったんだ。」
シーン102
新レッスン場
ユリチャンネルのインタビュー後
荏原は奥のテーブルでノートを出したり台本を出したりしている
レッスン場内ではレッスン生達が椅子を出したり台本を出したりしている
非常に騒がしい
玲奈が椅子を出している
そこへ続々と親子連れの人達が入ってくる
女性「レッスン会場はこちらで間違いないですか?」
玲奈「はい…ここですよ!見学ですか?」
軽く笑みを浮かべて頷く女性
玲奈は騒がしい場内の声に負けない大きな声で荏原に知らせる
玲奈「先生ー!!見学の方が来ましたよー!」
荏原は入口の方向を見る
荏原「どうぞ、お入り下さい!」
ユリ「凄い!こんなに沢山の人が来てくれるなんて…」
玲奈「私達の先生のやる事だもん…当たり前だよ!」
そこへ女性と女の子が入ってくる
女性「荏原先生の教室はこちらでしょうか?」
玲奈「はい、そうです!お知り合いの方ですか?」
女性は曖昧に頷く
玲奈「先生!お知り合いの方が来ましたよ!」
荏原はその女性を見る
その女性の姿を見た瞬間
騒がしかった場内の音が荏原の耳には入らなくなる
荏原だけ時間が止まる
荏原の様子を見て生徒達がシーンとなる
場内へゆっくり歩みを進める女性と女の子
コツコツという歩く音だけが場内に響く
荏原「……どうして?」
リオ「…娘に演技を教えてほしくて…」
女の子は荏原を指さし
女の子「この人おうちのDVDで見たことあるー!」
荏原はしゃがんで女の子と同じ目線にする
荏原「お名前は?」
女の子「…」
荏原「恥ずかしいのかな?」
リオ「…桜…」
荏原「さくら?」
リオ「…私の憧れていた…大好きな俳優が桜の季節に生まれた人なんです…」
荏原「……桜ちゃん?」
頷く桜
桜「三歳だよ…。」
荏原「そっか…三歳になるのか…よろしくね」
荏原が手を差し出すとその荏原の人差し指をゆっくりとおずおず握る桜
ユリと玲奈は肘で小突きあって
ユリ「何あの人?」
玲奈「知らない?」
ユリ「良いの?」
玲奈「何がよ?」
みたいな会話を小声でしている
荏原「………演技…したいの?」
桜「…いつもテレビ見てるから…出来るよ…」
荏原「…そうなの?」
桜「…お前のだよ!」
突然のお前呼ばわりに驚く荏原とその周囲
みんな笑い出す
荏原は立ち上がり
荏原「リオと桜は椅子に座って見学してて。」
後方の椅子へ向かうリオと桜
その後ろ姿を見つめる荏原
荏原は手を叩きながら
荏原「じゃあレッスンを開始します!よろしくお願いします!」
生徒達「よろしくお願いしまーす!」
その荏原の姿を嬉しそうな表情で見つめるリオ
シーン103
新レッスン場の入口
ドアを開けて花束を持ち廊下を走ってくるヒロと大輔
ヒロ「お前が寝坊するから…」
大輔「ヒロさんが昨日夜遅くまで行こうかな?行かないかな?兄ちゃん怒ってるかなぁって電話してくるからですよ!」
ヒロがふと横を見る
髪の毛はボサボサでヨレヨレのTシャツを着た小学生の兄弟が二人立っている
弟「…兄ちゃん…行かないの?」
兄「…行くけど…入れてくれるかな…」
ヒロはその兄弟を見つめて何か胸に去来する
ヒロはゆっくりとその兄弟に近づく
ヒロ「レッスン受けに来たの?」
兄「…うん…でも母さん働きに行ってるから…オレ達だけで入れてくれるかな?」
弟はずっと兄の手を握っている
ヒロ「…一緒に行こうか?お兄ちゃん達が一緒に中に入ってあげるよ。」
兄「…いいの?」
ヒロ「…先生は優しい人だからきっと入れてくれると思うよ。」
ヒロは兄弟の兄へ手を差し伸べる
ヒロ「行こう!」
ヒロの手を握る兄弟の兄
兄「うん!」
弟は喜んだ表情
大輔は弟に手を差し出す
大輔の手を握る弟
四人が並んでビル内のホールをレッスン場へ向かって歩いている
画面は切り替わり
川沿いの満開の桜と行き交う楽しそうな人々
back beat 「完全版」 end
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中学三年生の高野美咲は父の不倫とそれを苦に自殺を計った母に悩み精神的に荒れて、通っていた中学校で友人との喧嘩による騒ぎを起こし、受験まで後三カ月に迫った一月に隣町に住む伯母の家に引き取られ転校した。
その中学で美咲は篠原太陽という、同じクラスの少し不思議な男子と出会う。彼は誰かがいる所では美咲に話しかけて来なかったが何かと助けてくれ、美咲は好意以上の思いを抱いた。が、彼には好きな子がいると彼自身の口から聞き、思いを告げられないでいた。
自分ではどうしようもない家庭の不和に傷ついた多感な少女に起こるファンタジー。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
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「あの人、私が
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
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退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうございます!
書いていて荏原含めた登場人物達が勝手に会話しだしているという不思議な感覚がありました。
楽しそうだなと書きながら私も思いましたよ(笑)
玲奈と拓真は私も思い入れがあるキャラクターなのでとても嬉しく思います。
ありがとうございます!
You Tubeという表面的なものを作成しようとする人々や役者としてやっていく人々が、それぞれの悩みや事情を抱えながらも、目的を果たすとき、成功=有名になる
という目標をおくと思う。
目的は同じでもその人達が
チームになるときどこまでわかりあえているか。を問われる作品だと思う。
薄っぺらな関係だけでもきっと面白いものはできる。でも相手を深く知り理解しあえた人たちが作るYou Tubeにはきっと有名になるや売れること以上の価値が生まれる。
そして、だからこその魅力も生まれるのではないかとこれからの、You Tubeや映画に関わる人々がなくてもできるが、忘れてはいけないことがこの作品にあるとおもった。
感想ありがとうございます。
確かに「成功する=有名になる」という部分に目標をおいて活動している方が多いと思いますし、若い頃の私もそうでした。
目標を達成する為に必要となる原動力は「何の為に目標達成=有名になりたいの?」という理由があると思います。
この作品を書いて賞にエントリーするに辺り、「目標→受賞する→何のために?」という「何の為に?」という部分に突き動かされて書ききったように思います。
私はこの作品が映画化されたとしても私自身が出演する気はありません。
出来れば制作に加わることもしない方向でいきたいと思っています。
それはこの作品が受賞して映画化することにより出演する人達や制作を志している若者のチャンスやステップアップや経験にしてもらうことが目的だからです。
もちろん監修は必要だと思っていますので、そちらはプロの方にお願いしようかとは思っています。
どうなるかは現在は未定です(笑)
コンテストの結果が出たら、詳しく企画の意図等を近況ボード等で書いていこうかなと思っています。
感想頂きましてありがとうございました。