9 / 11
第9話 とある国王の受難
しおりを挟む
「ううむ……これは困ったことになった。各方面から問い合わせの伝達が届き続けているし……この事態、いったいどのように収集すればいいのだろうか?」
ーー王の間での呟き。国王以外の誰ひとりとしていないその一室での呟きに、国王は自身で蒔いた種の思わぬ反響を憂ていた。
問題が起きたのは昨日の召喚の儀式。あの時あの場にいた魔導士、勇者召喚と異世界の関係に精通している研究者であるアルドナル・クローサーもあの異常な魔力反応を感じていたのだが……ハッキリ言って、あの召喚は何から何まで異常なことの連発だったのだ。
そもそもの話、大規模な勇者召喚を行うはずが……実際に魔法陣から出てきたのは、優秀ではあるがたったの4人だけであったし、あの異常な魔力反応はあの後すぐにかき消えてしまった。そのこともあり、急いで異常な魔力反応の存在を捜索させているが……今のところは、見つかったとの報告は届いていない。
ーーしかし、困った話なのはそれだけではないのだ。……と言うよりもむしろ、それ以上に困っていると言っても過言ではない事態が今現在起きている。
「(それはーー人族以外の他種族からの問い合わせが相次いでいることよな……。ハッキリ言って、あの魔力反応の持ち主がいれば戦況だって一瞬でひっくり返るし、何より……その存在がこの世界に友好的でない場合、間違いなく最悪な結末が待っておるしな。)」
そういう事情も相まって、現在我が国に対して、莫大な魔力の正体を説明して欲しいとの声があちこちから湧き出ており、その対応に追われているというのが目下のワシの悩みなのだ。(しかも、その魔力の持ち主が行方不明の正体不明ときているうえにでだ。)
しかし他国に対して、流石に「そんなことワシの方が知りたいわ!」などと、逆ギレすることも出来ず……結果的に他種族の国家と緊張状態になっているのが、何とも悩ましい今の国家間での実情である。
ーーコンコン、「失礼します!」
「国王陛下、陛下がお探しになっておられた莫大な魔力の対象ですが……残念ながら、その正体を発見することは出来ませんでした。そしてそれとは別に、王国の周辺の魔物の動きが活発になっていることがギルド冒険者から報告されております。現在調査中ですが、何やら強力な魔物の目撃報告もありますので、周辺に対して警戒を強めておくようにと指揮系統に命じておきました。」
「うむ、ご苦労であった。魔物の発生にあたって、冒険者ギルドとの連携も視野に警戒を強めておけ。だが……魔力元の特定に関して引き続き捜索をよろしく頼む。」
「はっ!了解です!それでは失礼します。」
すると、突如として一人の騎士長が王の間に訪ねてきたかと思えば……あまり嬉しくない内容の報告をしてきた。
もちろんなのだが、その報告自体、事実をありのまま伝えただけだろうが……このような悩ましい現状では、少しくらい良い内容の報告が欲しいところではある。
「ううむ……現状では他国からの進行も一時的に停止しているようだし、一概に悪い状況ではないのだろうか?だが……魔物の活発な動きが気になるところではあるな。少し早いかもしれぬが……そうだの。冒険者でも数少ない、セントレアでたった5人しかいないあの者たちを呼び戻すとするか。まあーー2人以上でも集まればいいのだがな……。」
そうして国王の名の下、人族の中でも有力な冒険者たち5名に対して、緊急の招集命令が出されたのだが……結果としてこちらに帰ってくると確認出来たのは、その中でも比較的良識のある3名だけであった。
残り2名と言えば、色んな意味で面倒な冒険者たちなので、そう考えてみると案外悪くない集まり方なのかもしれない。
……本音を言えば、国王の命令は絶対なので、全員集まって欲しいのだけれども。
「だがまあ……良識ある者の中でもあの女だ。エルフのあの娘が問題を起こさなければいいのだが。やはり人族の中にエルフが混じると……何かしら問題が起きてしまうからの。」
ーーそう呟いた王の声は誰にも聞かれる事なく、王の間にてぽつりと呟かれたのだが、その後国王は知ることになる……自分の何となくした悪い直感は、意外にもしっかりと当たってしまうということを。
ーー王の間での呟き。国王以外の誰ひとりとしていないその一室での呟きに、国王は自身で蒔いた種の思わぬ反響を憂ていた。
問題が起きたのは昨日の召喚の儀式。あの時あの場にいた魔導士、勇者召喚と異世界の関係に精通している研究者であるアルドナル・クローサーもあの異常な魔力反応を感じていたのだが……ハッキリ言って、あの召喚は何から何まで異常なことの連発だったのだ。
そもそもの話、大規模な勇者召喚を行うはずが……実際に魔法陣から出てきたのは、優秀ではあるがたったの4人だけであったし、あの異常な魔力反応はあの後すぐにかき消えてしまった。そのこともあり、急いで異常な魔力反応の存在を捜索させているが……今のところは、見つかったとの報告は届いていない。
ーーしかし、困った話なのはそれだけではないのだ。……と言うよりもむしろ、それ以上に困っていると言っても過言ではない事態が今現在起きている。
「(それはーー人族以外の他種族からの問い合わせが相次いでいることよな……。ハッキリ言って、あの魔力反応の持ち主がいれば戦況だって一瞬でひっくり返るし、何より……その存在がこの世界に友好的でない場合、間違いなく最悪な結末が待っておるしな。)」
そういう事情も相まって、現在我が国に対して、莫大な魔力の正体を説明して欲しいとの声があちこちから湧き出ており、その対応に追われているというのが目下のワシの悩みなのだ。(しかも、その魔力の持ち主が行方不明の正体不明ときているうえにでだ。)
しかし他国に対して、流石に「そんなことワシの方が知りたいわ!」などと、逆ギレすることも出来ず……結果的に他種族の国家と緊張状態になっているのが、何とも悩ましい今の国家間での実情である。
ーーコンコン、「失礼します!」
「国王陛下、陛下がお探しになっておられた莫大な魔力の対象ですが……残念ながら、その正体を発見することは出来ませんでした。そしてそれとは別に、王国の周辺の魔物の動きが活発になっていることがギルド冒険者から報告されております。現在調査中ですが、何やら強力な魔物の目撃報告もありますので、周辺に対して警戒を強めておくようにと指揮系統に命じておきました。」
「うむ、ご苦労であった。魔物の発生にあたって、冒険者ギルドとの連携も視野に警戒を強めておけ。だが……魔力元の特定に関して引き続き捜索をよろしく頼む。」
「はっ!了解です!それでは失礼します。」
すると、突如として一人の騎士長が王の間に訪ねてきたかと思えば……あまり嬉しくない内容の報告をしてきた。
もちろんなのだが、その報告自体、事実をありのまま伝えただけだろうが……このような悩ましい現状では、少しくらい良い内容の報告が欲しいところではある。
「ううむ……現状では他国からの進行も一時的に停止しているようだし、一概に悪い状況ではないのだろうか?だが……魔物の活発な動きが気になるところではあるな。少し早いかもしれぬが……そうだの。冒険者でも数少ない、セントレアでたった5人しかいないあの者たちを呼び戻すとするか。まあーー2人以上でも集まればいいのだがな……。」
そうして国王の名の下、人族の中でも有力な冒険者たち5名に対して、緊急の招集命令が出されたのだが……結果としてこちらに帰ってくると確認出来たのは、その中でも比較的良識のある3名だけであった。
残り2名と言えば、色んな意味で面倒な冒険者たちなので、そう考えてみると案外悪くない集まり方なのかもしれない。
……本音を言えば、国王の命令は絶対なので、全員集まって欲しいのだけれども。
「だがまあ……良識ある者の中でもあの女だ。エルフのあの娘が問題を起こさなければいいのだが。やはり人族の中にエルフが混じると……何かしら問題が起きてしまうからの。」
ーーそう呟いた王の声は誰にも聞かれる事なく、王の間にてぽつりと呟かれたのだが、その後国王は知ることになる……自分の何となくした悪い直感は、意外にもしっかりと当たってしまうということを。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる