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第9話 とある国王の受難

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「ううむ……これは困ったことになった。各方面から問い合わせの伝達が届き続けているし……この事態、いったいどのように収集すればいいのだろうか?」


ーー王の間での呟き。国王以外の誰ひとりとしていないその一室での呟きに、国王は自身で蒔いた種の思わぬ反響を憂ていた。

問題が起きたのは昨日の召喚の儀式。あの時あの場にいた魔導士、勇者召喚と異世界の関係に精通している研究者であるアルドナル・クローサーもあの異常な魔力反応を感じていたのだが……ハッキリ言って、あの召喚は何から何まで異常なことの連発だったのだ。

そもそもの話、大規模な勇者召喚を行うはずが……実際に魔法陣から出てきたのは、優秀ではあるが4人だけであったし、あの異常な魔力反応はあの後すぐにかき消えてしまった。そのこともあり、急いで異常な魔力反応の存在を捜索させているが……今のところは、見つかったとの報告は届いていない。


ーーしかし、困った話なのはそれだけではないのだ。……と言うよりもむしろ、それ以上に困っていると言っても過言ではない事態が今現在起きている。


「(それはーー人族以外の他種族からの問い合わせが相次いでいることよな……。ハッキリ言って、あの魔力反応の持ち主がいれば戦況だって一瞬でひっくり返るし、何より……その存在が友好的でない場合、間違いなく最悪な結末が待っておるしな。)」


そういう事情も相まって、現在我が国に対して、莫大な魔力の正体を説明して欲しいとの声があちこちから湧き出ており、その対応に追われているというのが目下のワシの悩みなのだ。(しかも、その魔力の持ち主が行方不明の正体不明ときているうえにでだ。)


しかし他国に対して、流石に「そんなことワシの方が知りたいわ!」などと、逆ギレすることも出来ず……結果的に他種族の国家と緊張状態になっているのが、何とも悩ましい今の国家間での実情である。


ーーコンコン、「失礼します!」


「国王陛下、陛下がお探しになっておられた莫大な魔力の対象ですが……残念ながら、その正体を発見することは出来ませんでした。そしてそれとは別に、王国の周辺の魔物の動きが活発になっていることがギルド冒険者から報告されております。現在調査中ですが、何やら強力な魔物の目撃報告もありますので、周辺に対して警戒を強めておくようにと指揮系統に命じておきました。」

「うむ、ご苦労であった。魔物の発生にあたって、冒険者ギルドとの連携も視野に警戒を強めておけ。だが……魔力元の特定に関して引き続き捜索をよろしく頼む。」

「はっ!了解です!それでは失礼します。」


すると、突如として一人の騎士長が王の間に訪ねてきたかと思えば……あまり嬉しくない内容の報告をしてきた。

もちろんなのだが、その報告自体、事実をありのまま伝えただけだろうが……このような悩ましい現状では、少しくらい良い内容の報告が欲しいところではある。


「ううむ……現状では他国からの進行も一時的に停止しているようだし、一概に悪い状況ではないのだろうか?だが……魔物の活発な動きが気になるところではあるな。少し早いかもしれぬが……そうだの。冒険者でも数少ない、セントレアでたった5人しかいないあの者たちを呼び戻すとするか。まあーー2人以上でも集まればいいのだがな……。」


そうして国王の名の下、人族の中でも有力な冒険者たち5名に対して、緊急の招集命令が出されたのだが……結果としてこちらに帰ってくると確認出来たのは、その中でも比較的良識のある3名だけであった。

残り2名と言えば、面倒な冒険者たちなので、そう考えてみると案外悪くない集まり方なのかもしれない。

……本音を言えば、国王の命令は絶対なので、全員集まって欲しいのだけれども。


「だがまあ……良識ある者の中でもだ。エルフのあの娘が問題を起こさなければいいのだが。やはり人族の中にエルフが混じると……何かしら問題が起きてしまうからの。」


ーーそう呟いた王の声は誰にも聞かれる事なく、王の間にてぽつりと呟かれたのだが、その後国王は知ることになる……自分の何となくした悪い直感は、意外にもしっかりと当たってしまうということを。
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