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【12】悪役令嬢は祝福される

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その後の事について話そう。

王太子の座を剥奪されたノルベルト殿下は、しばらく塞ぎ込んでいたが、徐々に平常を取戻しつつある。
やはり王太子の位というのは、殿下にとっては相当の重荷だったのだろう。
そして新しくイングリッドと婚約した。
王太子の座を剥奪された殿下と、ニコル様にプロポーズを断られたイングリッド。
落ち込んでいた二人が一緒になったのだ。
イングリッドは持前の明るさで殿下を励ましているし、殿下は殿下でイングリッドの発明品に興味を示されている。お似合いのカップルになるだろう。

ノルベルト殿下の護衛には引続きニコル様が担当される事となった。
既に女性とわかったので男装を解いて通常の女性騎士姿をしているが、時々イングリッドにお願いされて不承不承ながら男装もしているらしい。これには殿下もあまり良い顔をしないらしいが。


そのニコル様だが、イーノット様に対し、

「剣力が強い私と魔法力が強いイーノット様。
私たちが一緒になれば最強の子供が授かれるのではないでしょうか?」

と、プロポーズともとれる事を言われたとか。
もしこれが本当となれば、イングリッドにとってはプロポーズを断られたニコル様が兄嫁となってしまう。
その時の心中は如何なものだろう?


私は魔法の授業、こと実習については他の生徒達とあまりにもレベルが違い過ぎるとして免除になった。
しかし、なにぶん独学によるものなので荒削りであり、イーノット様に教えを請う事になった。
そしてイーノット様の助手として後輩達の指導にもあたっている。


ステラは私の世話の傍ら王国騎士団の詰所に出向く様になった。
彼女が控えているので、騎士団長のナイジェル様は「これで心おきなく厳しい演習が出来る!」と喜んだそうだが、反面ステラに癒してもらいたいと、わざと怪我をする騎士が続出し、どちらが良いのか痛い問題になっているらしい。
こんな状態なので、ステラを巡って若い騎士たちの間で熱い争奪戦を繰り広げているとの事。


隠居した父ウィリアムは、ワイツウェル公爵領地の経営を熱心に行っている。
しかし、領地館の家臣は母イライザの息のかかった者ばかり。
さぞや居辛い環境だとは思うが、ヴァイオレット様の助けもあってがんばってほしい。


兄ウォーレンの宰相としての仕事も徐々に軌道に乗りつつある。
その兄に「残るは兄上とソフィア様だけですね」と冗談混じりに言ってみた。

「でも、ソフィア様は次期大神官としてのお役目を終わってからです。
結婚するにしても、ずっと先になってしまいますね」

「それでも待っているさ」

兄がそう答えたところをみると、案外脈はあるのかもしれない。





鐘の音が鳴る。

私は貴族学校を卒業すると共に、王太子となられたマーヴィン殿下と結婚の運びとなった。
私達だけでは無い。ノルベルト殿下とイングリッドの二人もだ。

シェフィールド公爵にして大神官でもあるソリティア様から祝言を受ける。

二組のロイヤルカップルの誕生に、国中が祝賀ムードに沸立った。


そんな祝福の喧騒を、ウィチタだけは牢屋の中からどんな思いで見詰めているのだろうか?
私達の結婚で恩赦が与えられ、牢屋から出る事は出来るかもしれない。
それでも不自由な生活を送る事には変わりは無い。


前世においては私は逆の立場だった。
牢屋に禁固中、私が漏れ聞いたのは「国が荒れ始めた」「あちこちで飢饉が発生した」という悪い噂ばかり。
そして私は厄介払いをするかの様に殺された。
その先はどうなったかは私は知らない。
国が弱体化した隙を突いて他国に侵略されたのかもしれない。


現世においては、国をそんな風にはさせない。させない自信もある。より良くしようとも思う。
何よりも今の私にはマーヴィン殿下をはじめ多くの仲間がいる。


ミッドガルド王国に栄光あれ!






これにて完結です。どうにか9月中に終わらせられました。
午前中に旅行から帰ってきて、急いで最終話を書き上げました。
ですから充分に推敲出来てませんので、まだ完結処理はしないでおきます。

拝読していただき、ありがとうございました!


【追記】
10月2日にウェディング姿の挿絵を追加し完結処理をしました。
柔和な表情だと何か幼い雰囲気が変わってしまいました。
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