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仕組まれた呪い。
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食われる?ぶちょ―(疑惑)に?
思っても見なかった忠告に戸惑いつつ、目の前にある太い前足をなんとなく撫でる。
もふもふ。
しょうがないな、という顔をしながらこちらを見下ろす巨体に、どうしたら危機感など抱けるのだろうか。
むしろこちらが保護されてる感が半端ない。
竜児の言った台詞ではないが、子熊にでもなった気分です。
しかし名前か。
ぶちょ―、っていうのはやっぱり駄目だよなぁ。
流石にこの狼が部長本人だと思っている訳ではないのだが、妙にしっくり来るのは否めない。
「名前ならありますよ」
「え?」
しれっと答える竜児を思わず二度見したが、その表情は全くと言っていいほど変わらない。
「なんだ隠し名か。見た目によらず用心深いな、嬢ちゃん」
「……隠し名」
いや、隠すもなにも名前があるっていうのも初耳なんですが。
竜児は勝手なことを言っているし、龍一は龍一で何をしているのか視界にはいないしーーーー。
「どうですかぶちょ―(未定)」
『?』
―――わからないそうです。
ですよね!
「いくら部長に似てるからって、相談相手にまではなってくれないよなぁ」
がっくりと肩を落とし、どうしようかと考える。
やはり聞くならこの場合竜児だろう。
でも、竜児の事だから男を騙すために適当な嘘を言っている、ということも十分にありえる。
だとしたらこの場で竜児を問い詰めるのは得策ではないだろう。
とりあえず、話を流しておくか。
なんかいい感じに勘違いしてくれたみたいだし。
うんうん、と頭の中を整理し終えたところで再び、「ほら、なにもしねぇって」と言いながら謎の玉を要求し始める男。
見せるかどうするか。
悩んでいるところに、ひょいと背後から突然現れた腕が素手のままにその玉をつまみ上げた。
「あ」
「ーーーーーーーこれは、呪物だな」
「あぁ、やっぱりか。お前さんところのお得意だろ?こういうの」
「ちょ!?」
取り上げた犯人は龍一。
その龍一の手元をごく自然な様子で覗き込んでいるのは男だ。
「いいの!?竜児!」
横から取り上げられたけど!と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら文句を言えば、全く気にしていないどころか、「いいんじゃありませんか?餅は餅屋ですよ」と押し付ける気満々の竜児。
「ーーーーーー処分に困っただけとかいう?」
「それもありますね」
絶対そっちが本音だな、と高瀬は確信した。
「でも、呪物……って?」
「ーーーーー文字通り、呪いに使う道具だ」
「道具……」
なんでそんなものがお坊さんから出てくるんだ。
「まさかこれを手に入れる為に依頼を受けたのか……?」
「ありうるなぁ。どこでこんなもんを知るんだかわからねぇが、あいつのこった」
何とも言えない苦々しい表情で珠を見下ろす龍一と、どこかスッキリした様子の男。
「これはな、嬢ちゃん。
人間の負の感情を増幅させて魂の核とすることができるんだ。
つまり、悪霊を育てるための器だな」
「悪霊を、育てる………?
って、それもしかしてさっき言ってた不比等って人の仕業……!?」
なんてことをしてくれるんだ、と憤慨仕掛けた高瀬。
だが。
「あぁ、違う違う。確かにあいつも相当性質の悪い奴だが、こいつはもっと古い時代の代物だ」
なにげにやりそうな人間であることは肯定しつつも、これは違う、と。
「ーーーー古い時代」
それがいつなのかはわからないが、ニュアンス的なものを考えればなんとなく言いたいことの想像はつく。
ってことは、なにか。
「このお坊さん、始めから誰かに騙されてた……?」
「……ま、そういうことになるだろうな。
いつの段階で仕込まれたもんだがわからんが、即身仏の成り立ちから言って、死後に与えられた物ってわけじゃない」
「―――失敗するのを見越してた?」
「もしくは、初めから故意に失敗させられたか、だな。
そのあたりの事情を聞くにゃ、今更ちと遅いが」
そもそも話し合いなど出来る状態ではなかったのでそれは仕方ない、だが……。
「俺が言うのもなんだが、気の毒な坊主だよな、まったく」
憐れむような言葉を口にしながらも、男の口元にはうっすらとした微笑みが浮かぶ。
「少しも気の毒そうには見えませんね」
「ん?そうか?まぁ、結局は自業自得だからな」
自己責任、ってやつだろ、と容赦ないセリフを吐く男。
「そ、そうだ!!とにかく、さっきの僧侶がいなくなったってことは、呪いはとけたと思っていいってこと!?」
「あ?まぁ、大丈夫じゃねぇか?」
「ーーーーー軽い!」
本当に大丈夫!?と、ぐるりと首を曲げて龍一を見れば、渋い表情ながらも同意するように頷く。
「ーーーーーあぁなってしまえば、あれにはもはや意思はない。意思がなければ自ら人を呪うこともないだろう」
「……呪わない?」
「そんな感情自体がなくなってしまっているということだ」
含みは多分に感じるものの、どうやら呪い自体は解けているという解釈で間違いないらしい。
だとしたら、高瀬としては一応の目的を達したことになる。
ーーーーーーなぁんか、いろいろ気になるけど……。
とりあえず、今しなくてはならないことは二人の安否確認だ。
竜児を急かし、主任へと電話をかけさせる。
これで二人が目を覚ましていれば一安心だ。
「んじゃ、これにてめでたく解散、だな?」
男は既に呪いが解けたことを確信しているようだが、確証が取れるまでは、まだ逃がすわけにはいかない。
「そういや名前」
「ん?隠し名を教えてくれるのか?」
「いや、狼の名前じゃなくて、おっさんの名前」
いい加減ここまで来たら名前くらい名乗って行くのが礼儀ではあるまいかと追求すれば、さらっと。
「頼我でいいぞ」
「……らいが?」
「我に頼れ、で頼我だな。かっこいいだろ?」
にやりと満面の笑みを浮かべる男ーーーーーもとい頼我のおっさん。
「芸名?」
「なんだよ芸って。本名に決まってんだろ?」
「おぉ……」
これまた、パンチの聞いた名前だ。
おっさんを頼る気には全くなれないが、偉そうな感じはそこはかとなく伝わって来る。
「なんなら嬢ちゃんには名刺もサービスしてやろうか?困ったことがあったら連絡してこいよ」
「いや現在進行形でむしろおっさんに困らされてるんですけど」
「おぉ、うまいこと言うな嬢ちゃん」
「そこは反省しろ」
普段はボケ担当の高瀬すら素で突っ込んだ。
このオヤジ、天然なのか天然を装った養殖なのか微妙である。
「ってか、結局その呪物を仕掛けた人は結局何がしたかったの?」
あと、なんでそんなにあっさり龍一と和解してんのかがものすごく気になるんですが。
「あぁ?」
「ーーー和解した覚えはないぞ」
二人で顔を突き合わせて仲良さげに見えたといえば、明らかに不服そうな龍一。
しかし男は満更でもない様子で、バンバンと龍一の背中を叩く。
「そうそう、和解和解!
どうやらお互いの目的も達したようだし、さっさと帰ろうぜ!」
な?といいながら、さりげなく龍一の手元から珠を奪いわ自らの懐へとしまい込む男。
「……おい!」
「どうせお前が持ってても処分に困る代物だろ?こっちで始末しといてやるよ」
飄々とした態度でそのままその場から去ろうとするが、そうは問屋が卸さない。
「それ、どうするの」
「ん?嬢ちゃんも興味あんのか?でもあんたにゃ必要ないだろ、これは」
あんたには。
ということは、だ。
「じゃあ、それを必要とするのは誰?」
「ん~。そうだなぁ。悪い奴、かな」
ーーーーーー悪い、やつ?
余計に意味がわからない。
んじゃな、と例のブツをネコババしたまま踵を返す頼我。
「ちょ、待った!!連絡先とかまだ貰ってないし!!あの美少女とお友達になって欲しいんでしょ!?」
「あ~、なるほど確かにそうだったな。俺の名刺もまだ渡せてねぇし。
ちょっとまってろよ?あぁ、どこにいったか………」
苦し紛れの高瀬の言葉に足を止め、そのままごそごそとポケットの中から名刺を探し始める頼我。
ーーーーーよし、足止め成功!
美少女という餌で頼我を釣りあげた高瀬は、龍一のそばにかけより、すぐさま緊急ミーティングを開始する。
「ねぇあれ!おっさんに渡して大丈夫なの!?」
「大丈夫なはずがない。あいつとあの男が組んでいるとするなら、恐らく今回の件はあの男があれを手に入れるために仕組んだ罠だ」
「罠!?」
「……どこの時点であれの存在に気づいたかはわからないが、知らなかったとは到底思えない」
悔しげな口調の龍一は、今回の黒幕に関して相当な屈託がある様子。
「……どう使うのかは知らないけど、まともな事じゃなさそうだね………」
「聞かないほうがいい。ーーーー不愉快になるだけだ」
決して関わるなよ、と念を押され、神妙に頷く高瀬。
「でも、今回のことは……?」
「呪いは解けたんだ。お前はこれ以上首を突っ込むな。
後は俺が何とかしておく」
「……なんとかって……」
なんかいろいろ不安なんだけど、大丈夫だろうか。
満足そうな表情の頼我から距離を撮り、こそこそと話し合う二人。
なかなか電話がつながらないらしく、少し苛立った様子でスマホを握り締めていた竜児もそばに寄ってきたので、仲間に入れてそのまま三人で輪を作る。
その直後。
「ーーーーーもしもし?」
どうやら主任への電話がつながったらしい。
思わず聞き耳を立てる高瀬。
話の感じを聞くに、どうも何やらあちらはまだ慌ただしい様子だが、呪いが解けていないのだろうか?
「ねぇ、本当に大丈夫なの……?」
不安になって訪ねてれば、問題ないだろうという適当な答え。
「それよりお前、そいつをどうするつもりだ?」
「へ?」
「そのデカブツだよ。ーーーーーどこで手に入れたのか知らんが、本当に飼ってるのか?」
「あ」
『ガル………』
慌てて振り返った高瀬に対し、『ん?』といった様子で僅かに首をかしげる狼。
あまりの安定感にぶちょー(愛称です)の事をすっかり忘れてた!!
さすがぶちょー、巨体の割に存在感がナチュラルだ!!
思っても見なかった忠告に戸惑いつつ、目の前にある太い前足をなんとなく撫でる。
もふもふ。
しょうがないな、という顔をしながらこちらを見下ろす巨体に、どうしたら危機感など抱けるのだろうか。
むしろこちらが保護されてる感が半端ない。
竜児の言った台詞ではないが、子熊にでもなった気分です。
しかし名前か。
ぶちょ―、っていうのはやっぱり駄目だよなぁ。
流石にこの狼が部長本人だと思っている訳ではないのだが、妙にしっくり来るのは否めない。
「名前ならありますよ」
「え?」
しれっと答える竜児を思わず二度見したが、その表情は全くと言っていいほど変わらない。
「なんだ隠し名か。見た目によらず用心深いな、嬢ちゃん」
「……隠し名」
いや、隠すもなにも名前があるっていうのも初耳なんですが。
竜児は勝手なことを言っているし、龍一は龍一で何をしているのか視界にはいないしーーーー。
「どうですかぶちょ―(未定)」
『?』
―――わからないそうです。
ですよね!
「いくら部長に似てるからって、相談相手にまではなってくれないよなぁ」
がっくりと肩を落とし、どうしようかと考える。
やはり聞くならこの場合竜児だろう。
でも、竜児の事だから男を騙すために適当な嘘を言っている、ということも十分にありえる。
だとしたらこの場で竜児を問い詰めるのは得策ではないだろう。
とりあえず、話を流しておくか。
なんかいい感じに勘違いしてくれたみたいだし。
うんうん、と頭の中を整理し終えたところで再び、「ほら、なにもしねぇって」と言いながら謎の玉を要求し始める男。
見せるかどうするか。
悩んでいるところに、ひょいと背後から突然現れた腕が素手のままにその玉をつまみ上げた。
「あ」
「ーーーーーーーこれは、呪物だな」
「あぁ、やっぱりか。お前さんところのお得意だろ?こういうの」
「ちょ!?」
取り上げた犯人は龍一。
その龍一の手元をごく自然な様子で覗き込んでいるのは男だ。
「いいの!?竜児!」
横から取り上げられたけど!と、ぴょんぴょん飛び跳ねながら文句を言えば、全く気にしていないどころか、「いいんじゃありませんか?餅は餅屋ですよ」と押し付ける気満々の竜児。
「ーーーーーー処分に困っただけとかいう?」
「それもありますね」
絶対そっちが本音だな、と高瀬は確信した。
「でも、呪物……って?」
「ーーーーー文字通り、呪いに使う道具だ」
「道具……」
なんでそんなものがお坊さんから出てくるんだ。
「まさかこれを手に入れる為に依頼を受けたのか……?」
「ありうるなぁ。どこでこんなもんを知るんだかわからねぇが、あいつのこった」
何とも言えない苦々しい表情で珠を見下ろす龍一と、どこかスッキリした様子の男。
「これはな、嬢ちゃん。
人間の負の感情を増幅させて魂の核とすることができるんだ。
つまり、悪霊を育てるための器だな」
「悪霊を、育てる………?
って、それもしかしてさっき言ってた不比等って人の仕業……!?」
なんてことをしてくれるんだ、と憤慨仕掛けた高瀬。
だが。
「あぁ、違う違う。確かにあいつも相当性質の悪い奴だが、こいつはもっと古い時代の代物だ」
なにげにやりそうな人間であることは肯定しつつも、これは違う、と。
「ーーーー古い時代」
それがいつなのかはわからないが、ニュアンス的なものを考えればなんとなく言いたいことの想像はつく。
ってことは、なにか。
「このお坊さん、始めから誰かに騙されてた……?」
「……ま、そういうことになるだろうな。
いつの段階で仕込まれたもんだがわからんが、即身仏の成り立ちから言って、死後に与えられた物ってわけじゃない」
「―――失敗するのを見越してた?」
「もしくは、初めから故意に失敗させられたか、だな。
そのあたりの事情を聞くにゃ、今更ちと遅いが」
そもそも話し合いなど出来る状態ではなかったのでそれは仕方ない、だが……。
「俺が言うのもなんだが、気の毒な坊主だよな、まったく」
憐れむような言葉を口にしながらも、男の口元にはうっすらとした微笑みが浮かぶ。
「少しも気の毒そうには見えませんね」
「ん?そうか?まぁ、結局は自業自得だからな」
自己責任、ってやつだろ、と容赦ないセリフを吐く男。
「そ、そうだ!!とにかく、さっきの僧侶がいなくなったってことは、呪いはとけたと思っていいってこと!?」
「あ?まぁ、大丈夫じゃねぇか?」
「ーーーーー軽い!」
本当に大丈夫!?と、ぐるりと首を曲げて龍一を見れば、渋い表情ながらも同意するように頷く。
「ーーーーーあぁなってしまえば、あれにはもはや意思はない。意思がなければ自ら人を呪うこともないだろう」
「……呪わない?」
「そんな感情自体がなくなってしまっているということだ」
含みは多分に感じるものの、どうやら呪い自体は解けているという解釈で間違いないらしい。
だとしたら、高瀬としては一応の目的を達したことになる。
ーーーーーーなぁんか、いろいろ気になるけど……。
とりあえず、今しなくてはならないことは二人の安否確認だ。
竜児を急かし、主任へと電話をかけさせる。
これで二人が目を覚ましていれば一安心だ。
「んじゃ、これにてめでたく解散、だな?」
男は既に呪いが解けたことを確信しているようだが、確証が取れるまでは、まだ逃がすわけにはいかない。
「そういや名前」
「ん?隠し名を教えてくれるのか?」
「いや、狼の名前じゃなくて、おっさんの名前」
いい加減ここまで来たら名前くらい名乗って行くのが礼儀ではあるまいかと追求すれば、さらっと。
「頼我でいいぞ」
「……らいが?」
「我に頼れ、で頼我だな。かっこいいだろ?」
にやりと満面の笑みを浮かべる男ーーーーーもとい頼我のおっさん。
「芸名?」
「なんだよ芸って。本名に決まってんだろ?」
「おぉ……」
これまた、パンチの聞いた名前だ。
おっさんを頼る気には全くなれないが、偉そうな感じはそこはかとなく伝わって来る。
「なんなら嬢ちゃんには名刺もサービスしてやろうか?困ったことがあったら連絡してこいよ」
「いや現在進行形でむしろおっさんに困らされてるんですけど」
「おぉ、うまいこと言うな嬢ちゃん」
「そこは反省しろ」
普段はボケ担当の高瀬すら素で突っ込んだ。
このオヤジ、天然なのか天然を装った養殖なのか微妙である。
「ってか、結局その呪物を仕掛けた人は結局何がしたかったの?」
あと、なんでそんなにあっさり龍一と和解してんのかがものすごく気になるんですが。
「あぁ?」
「ーーー和解した覚えはないぞ」
二人で顔を突き合わせて仲良さげに見えたといえば、明らかに不服そうな龍一。
しかし男は満更でもない様子で、バンバンと龍一の背中を叩く。
「そうそう、和解和解!
どうやらお互いの目的も達したようだし、さっさと帰ろうぜ!」
な?といいながら、さりげなく龍一の手元から珠を奪いわ自らの懐へとしまい込む男。
「……おい!」
「どうせお前が持ってても処分に困る代物だろ?こっちで始末しといてやるよ」
飄々とした態度でそのままその場から去ろうとするが、そうは問屋が卸さない。
「それ、どうするの」
「ん?嬢ちゃんも興味あんのか?でもあんたにゃ必要ないだろ、これは」
あんたには。
ということは、だ。
「じゃあ、それを必要とするのは誰?」
「ん~。そうだなぁ。悪い奴、かな」
ーーーーーー悪い、やつ?
余計に意味がわからない。
んじゃな、と例のブツをネコババしたまま踵を返す頼我。
「ちょ、待った!!連絡先とかまだ貰ってないし!!あの美少女とお友達になって欲しいんでしょ!?」
「あ~、なるほど確かにそうだったな。俺の名刺もまだ渡せてねぇし。
ちょっとまってろよ?あぁ、どこにいったか………」
苦し紛れの高瀬の言葉に足を止め、そのままごそごそとポケットの中から名刺を探し始める頼我。
ーーーーーよし、足止め成功!
美少女という餌で頼我を釣りあげた高瀬は、龍一のそばにかけより、すぐさま緊急ミーティングを開始する。
「ねぇあれ!おっさんに渡して大丈夫なの!?」
「大丈夫なはずがない。あいつとあの男が組んでいるとするなら、恐らく今回の件はあの男があれを手に入れるために仕組んだ罠だ」
「罠!?」
「……どこの時点であれの存在に気づいたかはわからないが、知らなかったとは到底思えない」
悔しげな口調の龍一は、今回の黒幕に関して相当な屈託がある様子。
「……どう使うのかは知らないけど、まともな事じゃなさそうだね………」
「聞かないほうがいい。ーーーー不愉快になるだけだ」
決して関わるなよ、と念を押され、神妙に頷く高瀬。
「でも、今回のことは……?」
「呪いは解けたんだ。お前はこれ以上首を突っ込むな。
後は俺が何とかしておく」
「……なんとかって……」
なんかいろいろ不安なんだけど、大丈夫だろうか。
満足そうな表情の頼我から距離を撮り、こそこそと話し合う二人。
なかなか電話がつながらないらしく、少し苛立った様子でスマホを握り締めていた竜児もそばに寄ってきたので、仲間に入れてそのまま三人で輪を作る。
その直後。
「ーーーーーもしもし?」
どうやら主任への電話がつながったらしい。
思わず聞き耳を立てる高瀬。
話の感じを聞くに、どうも何やらあちらはまだ慌ただしい様子だが、呪いが解けていないのだろうか?
「ねぇ、本当に大丈夫なの……?」
不安になって訪ねてれば、問題ないだろうという適当な答え。
「それよりお前、そいつをどうするつもりだ?」
「へ?」
「そのデカブツだよ。ーーーーーどこで手に入れたのか知らんが、本当に飼ってるのか?」
「あ」
『ガル………』
慌てて振り返った高瀬に対し、『ん?』といった様子で僅かに首をかしげる狼。
あまりの安定感にぶちょー(愛称です)の事をすっかり忘れてた!!
さすがぶちょー、巨体の割に存在感がナチュラルだ!!
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