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語り継がれる禁忌
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「手を引くって……」
それは実質、この人を見殺しにするという決断なのではなかろうか。
案の定、「そんな…!!」と悲壮な顔をする社長。
正直縁もゆかりもない相手ではあるのだが……一応、中塚女史の身内である。
「いいのよ、及川さん。葉山先生の言うとおり。あなたが危険な目にあってまで助ける価値はないわ。
……これは、自業自得なんですもの」
「……!!」
あっさりと身内である中塚女史にまで見捨てられ、がっくりと肩を落とす。
どうやら高瀬の周囲の総意としては、「見捨てる」一択という結論になりそうだ。
しかし果たしてこれでいいのか。
「……とりあえず竜児、いい加減離して欲しいんだけど」
勝手にヘッドフォン扱いしていたこともすっかり忘れて、ペシペシと竜児の腕を叩く。
そしてわずかに拘束する力が緩んだのをいいことに腕の中から抜け出し、速やかに逃げた。
――――逃亡先は、勿論安定の部長様である。
「おかえり、高瀬君」
「……主任、使い分け使い分け」
「おっと、ごめんごめん、及川くん」
――――悪びれもなく謝ってくる主任だが、果たしてこの使い分けに意味があるのかどうかは怪しくなってきた。
「相原」
「オッケー、わかってるって」
「んにゃ!?」
そんな軽い言葉とともに、部長の背後に隠れていた高瀬を拘束する主任の腕。
「あれ、高瀬君、ウエストサイズって今何センチ?」
「それ今この場で聞く意味あります!?っていうか元に戻ってる!!」
「あ、つい。んで何センチなの?」
「反省が全くない!!」
どうしてくれよう。
腰を掴むというセクハラを堂々とやってのけた挙句のパワハラ(?)発言。
やっぱりこっちにくるんじゃなかった!と失敗を悟った高瀬だが、「これも上司命令だから大人しくしててね」と囁かれ、仕方なく主任に拘束されたまま、「がるるるー!」と恨めしげに部長を見つめるにとどめた。
逃げ出してきたはずなのに、なぜかまた拘束されているのは何故なのか。
「――――そこで大人しくしているんだ」
「むぅ…」
止めの一言を部長直々にされては、社会人としては逆らいにくいところである。
竜児相手なら反抗するところであるが、部長命令とあってはこれ、素直に聞くしかない。
部長なりに、自分の手元を離れていた部下を心配していたということなのだろう。
「チッ…」
竜児の腕から逃げ出し、一目散に部長のもとに向かった高瀬に対し、明らかに舌打ちをした龍一。
見せつけるようににやりと笑う主任に猫パンチを食らわせつつも、ないなと思う。
いや、ないない。
何を期待していたのかは知らないが、寄らば大樹の陰、つまり部長の影だ。
そこでふと思い出す、
ん……。そういえば、部長の婚約者云々って話はどうなったんだろう…?
初っ端から他の男(竜児)に鮭クマ状態で拘束されていた女ってどうよ。
ファーストインパクトが最悪どころかなんかいろいろ吹っ飛びそうだが。
一応、今でも彼らの頭の中では高瀬は部長の恋人――――という設定のはずだ。
最初に言い訳をしたはずの当人、龍一には既にバレバレの設定だということが非常に惜しい。
だがなんにせよ、無事に高瀬をその手中に取り戻したことで、新たな話の主導権は部長へと移ったようだ。
高瀬としても、自分にすべてが委ねられているような状況が打破されたことでほっと息を吐く。
部長は、未だ竜児のすぐそばにいる中塚女史へと視線を定め、その名を呼んだ。
「中塚君」
「……はい、部長」
「君は、弁護士を依頼してまで何をしようとしている?」
「………」
申し訳なさそうに、すっと下げられた目線。
そうだ。
そういえば、中塚先輩が一体何を竜児に依頼したのか、それが不明だった。
高瀬に迷惑をかける身内をなんとかしたい、それだけではないはず。
互いにメリットがあったからこそ、今日この場で竜児と手を組んだというのは間違いない。
ならば、中塚女史が求めているのはなんだ?
父親の復讐――――。
一瞬、ちらりと頭をよぎったその言葉に、慌てて蓋をする。
そんなことを中塚女史が本気で考えるとは思えない。
そして意を決したように、覚悟を決めた表情で中塚女史が告げたのは、予想外の一言だった。
「例の建設予定地の、売却差し止めを要求します」
きっぱりと前を向いて――――未だ土下座したままの社長を見下ろす中塚女史。
「売却……差し止めだと……?」
思ってもみなかったことを突然突きつけられ、社長の顔色が徐々に険しくなっていく。
「そんなもの……無理に決まっているだろう…!!既に建設予定の高級マンションには買い手もついてるんだぞ……!?違約金が幾らになると……!!」
できるわけがない、と叫ぶ社長。
専務の顔も同じく険しい。
「そもそもお前にそんなことを請求する権利は……!!」
「ありますわ」
「!?」
何を馬鹿なことを、と顔に出しながら次の言葉を口にしようとし……はっと、何かに気づいたように「まさか…」とつぶやいた社長。
「思い出していただけたようですね。
――――――あの土地は、本来であれば私の父が受け継ぐはずの場所です。
中塚の家の、長男にのみ引き継がれる土地。
そもそもあなたには、あの土地を売却する正統な権利は存在しません」
「…!!」
そんな、と顔に浮かべたのは専務だ。
彼としても初耳だったのだろう。
というか、高瀬にしてもはじめてきいた。
つまり、あの土地はもともと中塚家所有の私有地だったわけだ。
それも、長男にのみ相続権が発生するという特殊な。
「む、無効だ…!!兄貴は既に死んでいるんだぞ!?私が相続をして何が悪い!!」
言い立てる社長に対して応対したのは竜児だった。
「問題は大いにありますよ」
「な…!?」
「そもそもあの土地は、あなたや、あなたの会社のものではなくあなたの兄個人の私有地。
つまり、所有者がなくなったとしても、それを相続する権利を持つのはあなたではなく――――娘である彼女だ」
本来であれば妻である中塚女史の母親にもその権利は発生するのだが、長子相続してきた土地という特殊性を考えると、やはり正統な権利を持つのは中塚女子になるらしい。
「つまりあなたは、正当な持ち主である依頼人から、不当に土地を奪い取ったということになるんですよ」
いわゆる、横領というやつだ。
れっきとした犯罪である。
その上で、竜児は言う。
「証拠は既に充分集まっています。…依頼人は、いつでもあなたを告発することができる」
告発されれば、有罪となるのは間違いないだろう。
「か……金なら払う……!!私があの土地をお前から買い取ればいい話だろう!!」
「――――――それで済めば、そもそも横領で捕まる犯人はいませんね」
人のものを勝手に奪っても、後から金を払えばそれで済むなどと、そんな虫のいいことがあるわけがない。
当然、依頼人である中塚女史もそんなことを望んでいるわけではないだろう。
「あの土地は、決して手放してはいけない土地。私は父からそう聞かされていました」
「……なんだと…?」
「やっぱりあそこに…何かあるんですか…?」
問いかけた高瀬に、中塚女史は言う。
「そもそもあの土地が、中塚の家の長子にしか引き継がれないのには理由があるのよ。
――――――いいえ、理由というよりは、禁忌、かしら」
「禁忌……?」
その重い言葉に込められた意味を知るのは、この場では中塚女史ただひとり。
そして語られたのは、次男であった中塚社長が知ることのなかった伝承。
「――――ー中塚家の長子は、先祖が犯した禁忌の罪を、償い続けなければいけない義務があるの」
それは実質、この人を見殺しにするという決断なのではなかろうか。
案の定、「そんな…!!」と悲壮な顔をする社長。
正直縁もゆかりもない相手ではあるのだが……一応、中塚女史の身内である。
「いいのよ、及川さん。葉山先生の言うとおり。あなたが危険な目にあってまで助ける価値はないわ。
……これは、自業自得なんですもの」
「……!!」
あっさりと身内である中塚女史にまで見捨てられ、がっくりと肩を落とす。
どうやら高瀬の周囲の総意としては、「見捨てる」一択という結論になりそうだ。
しかし果たしてこれでいいのか。
「……とりあえず竜児、いい加減離して欲しいんだけど」
勝手にヘッドフォン扱いしていたこともすっかり忘れて、ペシペシと竜児の腕を叩く。
そしてわずかに拘束する力が緩んだのをいいことに腕の中から抜け出し、速やかに逃げた。
――――逃亡先は、勿論安定の部長様である。
「おかえり、高瀬君」
「……主任、使い分け使い分け」
「おっと、ごめんごめん、及川くん」
――――悪びれもなく謝ってくる主任だが、果たしてこの使い分けに意味があるのかどうかは怪しくなってきた。
「相原」
「オッケー、わかってるって」
「んにゃ!?」
そんな軽い言葉とともに、部長の背後に隠れていた高瀬を拘束する主任の腕。
「あれ、高瀬君、ウエストサイズって今何センチ?」
「それ今この場で聞く意味あります!?っていうか元に戻ってる!!」
「あ、つい。んで何センチなの?」
「反省が全くない!!」
どうしてくれよう。
腰を掴むというセクハラを堂々とやってのけた挙句のパワハラ(?)発言。
やっぱりこっちにくるんじゃなかった!と失敗を悟った高瀬だが、「これも上司命令だから大人しくしててね」と囁かれ、仕方なく主任に拘束されたまま、「がるるるー!」と恨めしげに部長を見つめるにとどめた。
逃げ出してきたはずなのに、なぜかまた拘束されているのは何故なのか。
「――――そこで大人しくしているんだ」
「むぅ…」
止めの一言を部長直々にされては、社会人としては逆らいにくいところである。
竜児相手なら反抗するところであるが、部長命令とあってはこれ、素直に聞くしかない。
部長なりに、自分の手元を離れていた部下を心配していたということなのだろう。
「チッ…」
竜児の腕から逃げ出し、一目散に部長のもとに向かった高瀬に対し、明らかに舌打ちをした龍一。
見せつけるようににやりと笑う主任に猫パンチを食らわせつつも、ないなと思う。
いや、ないない。
何を期待していたのかは知らないが、寄らば大樹の陰、つまり部長の影だ。
そこでふと思い出す、
ん……。そういえば、部長の婚約者云々って話はどうなったんだろう…?
初っ端から他の男(竜児)に鮭クマ状態で拘束されていた女ってどうよ。
ファーストインパクトが最悪どころかなんかいろいろ吹っ飛びそうだが。
一応、今でも彼らの頭の中では高瀬は部長の恋人――――という設定のはずだ。
最初に言い訳をしたはずの当人、龍一には既にバレバレの設定だということが非常に惜しい。
だがなんにせよ、無事に高瀬をその手中に取り戻したことで、新たな話の主導権は部長へと移ったようだ。
高瀬としても、自分にすべてが委ねられているような状況が打破されたことでほっと息を吐く。
部長は、未だ竜児のすぐそばにいる中塚女史へと視線を定め、その名を呼んだ。
「中塚君」
「……はい、部長」
「君は、弁護士を依頼してまで何をしようとしている?」
「………」
申し訳なさそうに、すっと下げられた目線。
そうだ。
そういえば、中塚先輩が一体何を竜児に依頼したのか、それが不明だった。
高瀬に迷惑をかける身内をなんとかしたい、それだけではないはず。
互いにメリットがあったからこそ、今日この場で竜児と手を組んだというのは間違いない。
ならば、中塚女史が求めているのはなんだ?
父親の復讐――――。
一瞬、ちらりと頭をよぎったその言葉に、慌てて蓋をする。
そんなことを中塚女史が本気で考えるとは思えない。
そして意を決したように、覚悟を決めた表情で中塚女史が告げたのは、予想外の一言だった。
「例の建設予定地の、売却差し止めを要求します」
きっぱりと前を向いて――――未だ土下座したままの社長を見下ろす中塚女史。
「売却……差し止めだと……?」
思ってもみなかったことを突然突きつけられ、社長の顔色が徐々に険しくなっていく。
「そんなもの……無理に決まっているだろう…!!既に建設予定の高級マンションには買い手もついてるんだぞ……!?違約金が幾らになると……!!」
できるわけがない、と叫ぶ社長。
専務の顔も同じく険しい。
「そもそもお前にそんなことを請求する権利は……!!」
「ありますわ」
「!?」
何を馬鹿なことを、と顔に出しながら次の言葉を口にしようとし……はっと、何かに気づいたように「まさか…」とつぶやいた社長。
「思い出していただけたようですね。
――――――あの土地は、本来であれば私の父が受け継ぐはずの場所です。
中塚の家の、長男にのみ引き継がれる土地。
そもそもあなたには、あの土地を売却する正統な権利は存在しません」
「…!!」
そんな、と顔に浮かべたのは専務だ。
彼としても初耳だったのだろう。
というか、高瀬にしてもはじめてきいた。
つまり、あの土地はもともと中塚家所有の私有地だったわけだ。
それも、長男にのみ相続権が発生するという特殊な。
「む、無効だ…!!兄貴は既に死んでいるんだぞ!?私が相続をして何が悪い!!」
言い立てる社長に対して応対したのは竜児だった。
「問題は大いにありますよ」
「な…!?」
「そもそもあの土地は、あなたや、あなたの会社のものではなくあなたの兄個人の私有地。
つまり、所有者がなくなったとしても、それを相続する権利を持つのはあなたではなく――――娘である彼女だ」
本来であれば妻である中塚女史の母親にもその権利は発生するのだが、長子相続してきた土地という特殊性を考えると、やはり正統な権利を持つのは中塚女子になるらしい。
「つまりあなたは、正当な持ち主である依頼人から、不当に土地を奪い取ったということになるんですよ」
いわゆる、横領というやつだ。
れっきとした犯罪である。
その上で、竜児は言う。
「証拠は既に充分集まっています。…依頼人は、いつでもあなたを告発することができる」
告発されれば、有罪となるのは間違いないだろう。
「か……金なら払う……!!私があの土地をお前から買い取ればいい話だろう!!」
「――――――それで済めば、そもそも横領で捕まる犯人はいませんね」
人のものを勝手に奪っても、後から金を払えばそれで済むなどと、そんな虫のいいことがあるわけがない。
当然、依頼人である中塚女史もそんなことを望んでいるわけではないだろう。
「あの土地は、決して手放してはいけない土地。私は父からそう聞かされていました」
「……なんだと…?」
「やっぱりあそこに…何かあるんですか…?」
問いかけた高瀬に、中塚女史は言う。
「そもそもあの土地が、中塚の家の長子にしか引き継がれないのには理由があるのよ。
――――――いいえ、理由というよりは、禁忌、かしら」
「禁忌……?」
その重い言葉に込められた意味を知るのは、この場では中塚女史ただひとり。
そして語られたのは、次男であった中塚社長が知ることのなかった伝承。
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