ニケの宿

水無月

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番外編・ユックリスマス・イヴ

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 大きな袋を背負ったニケが現れた。

「メリーユックリスマス!」
「なにそれ」
「うん……。お前さんが知ってるわけなかったな。ユックリスマスだ」
「なにそれ」
「うん……。えっと。美味しいものを食べて好きな人とゆっくり過ごす日のことだ」

 って、姉ちゃんが言ってた。

「それとその、赤と白の着物は何か関係あるの?」

 もふもふしていてすごく可愛い。
 そっと手を伸ばして撫でてみる。ふわふわしている。ずっと触っていたい。

「これは「たんたたん」の服だ」
「リズミカルだね」
「たんたたんは全国のいい子に、プレゼントを配ってるんだ」
「全国のほっぺに? ちょっと俺もその仕事してくるわ」
「僕を置いてどこ行くんだ?」
「どこも行きません」

 戻ってきた。
 ニケはどんと胸を叩く。

「今日は僕がたんたたんだ」
「可愛い~」
「いい子にしていたフリーに、プレゼントをやろう」

 袋の中を漁る。

「ニケが欲しいです」
「黙れ。お前さんにやるのはこれだ」

 おむすび。

「おん?」
「お前さん、お米好きだろう?」
「はい」
「よしよし。プレゼントは靴下の中に入っているものだから。この新品の足袋(たび)の中に入れておくぞ」
「足袋にっ?」

 ※このあとおむすびはフリーが美味しく食べました。
 大きな袋を背負いなおす。

「さて。僕はまだまだ仕事があるから。なんたってお世話になったヒトはいっぱいいるからな。こんなこと、番外編でもなけりゃ、出来んしな」

 なんせ本編では金がない。

「じゃあな。今日はゆっくり寝るんだぞ? 遅くまで起きているなよ?」
「……」
「なんで着物を掴むんだ。仕事に行けないじゃないか。放せ」
「は?」
「……」
「まだ今日のニケをもふもふしてないよ。抱っこさせてよ! そんな可愛いかっこしといて。抱っこ出来ないとか酷いや」

 ぎゅっ。

「わああっ。ふわふわしてる。あったかいよおお。すーりすーり」
「むむ。仕事が……」

 じたばた。
 モヤシのクセに。フリーの腕の中から抜け出せない。なぜなら、

(うぐっ、あったかい……)
「ほっぺやわらかいよおお~」
「ふん! し、仕方ないな。ちょっとだけだぞ」







 キミカゲが戸を開ける。

「ニケ君? ……じゃなくて、ニケたんたたん? そろそろ行かないと、夜遅くなっちゃうよ……あら」

 お布団の中で、ニケを抱き枕にしたフリーが眠っている。ニケもつられてしまったのか、すやすやと寝息が聞こえる。

「朝から張り切ってたもんね。眠くなっちゃったか~」

 おじいちゃんはそっと戸を閉めた。
 ニケとフリーへの贈り物はまた明日、渡すとしよう。



 番外編END
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