上 下
15 / 17

第14話・ターゲットを尾行せよ!③

しおりを挟む
杉原と間堀の子分の男子生徒達が殺気を隠さずに詰め寄る中、高間は表情一つ変えずに言葉を放つ。

「別に杉原さんの面子とか俺には関係ないですし。さっきも言ったけどそっちが先に喧嘩売って来たんで買っただけっすから」
「言ってくれるねぇ、高間ちゃん。あくまで詫びる気はないって事だな?」
「必要性を感じないんで」

なんてあくまで冷静に答えるあたり、高間にはかなり余裕があるように見える。
いや、実際かなり喧嘩慣れしているのだろうとは思うんだけれど。

「おいおい、高間の奴大丈夫なのかよあれ」
「数が数だからなぁ」
「え?あれぐらいなら普通にいけるだろ」
「は?いけるって陽斗お前なに言って…って、そうだったわ。お前も普通にいける側だったわ」
「まあ、陽斗は昔から負け知らずだからなぁ。護身術に全ての武術習得しているし」

なんて会話を繰り広げている間にも、高間の状況は悪化していく。

「ならしかたねぇな。此処で落とし前付けさせてもらうぜぇ」
「それも遠慮したいんっすけど。俺暇じゃないんで」
「相手にしないってんなら仕方ねぇわな。じゃあ、代わりに高間ちゃんの可愛い幼馴染に責任取ってもらうかねぇ」

杉原の言葉に俺ははっとする。
もしかしてそれってと俺が考えるよりも早く、今日初めて高間が焦ったように声を荒げた。

「柚希は関係ないだろ!?」

ああ、やっぱりそうだ。
斎藤先輩のことも、こいつらは知っているのか。

「関係はないけどさぁ、高間ちゃんが相手してくれないなら仕方ないっしょ。幼馴染ちゃん美人で可愛いもんねぇ。獅童さんにプレゼントしたら大喜びしてくれそうだなぁ。あの人可愛ければ男も女も関係ないもんねぇ」

杉原の言葉に高間はぎりっと軽く歯ぎしりをしてから言った。

「やめろ、柚希には手を出すな!俺が相手をすればいいんだろう!?」
「分かってんじゃないのよ。そーいう事。ここで落とし前付けさせてくれれば高間ちゃんの大事な幼馴染みを巻き込んだりはしねぇから安心しなよ」
「分かった。気が済むまで相手してやる。その代わり柚希に何かしたらただでは済まさないからな」

完全に戦闘態勢に入った高間を見て、杉原はにやりといやらしい笑みを浮かべた。
それと同時に俺はまた何とも複雑な気分に陥る。
だってさ、高間のあの様子ってさ。

「なぁ、時雨さん」
「なんだい、陽斗君」
「高間のあれはどう見ます?黒ですかね?」
「あー、あれは完全に黒ですね。斎藤先輩に惚れ込んでると思われます」
「やっぱりかーっ」

時雨の言葉に俺は思わず項垂れてしまう。
完全に俺のライバルじゃないかと。
しかも相手は先輩の大事な幼馴染みで、先輩自身は恋愛感情はないって否定はしていたけれど、嫌われてしまったと思って一時は死まで考えてしまう辺り気が付いてない可能性も十分有り得る。
どう考えたって俺の方が分が悪すぎる。
それに先輩は自分が裏切ったから嫌われて距離を置かれてしまっているってあの後も言っていたけれど、高間のこの様子からして嫌っているようにはどうしたって見られない。
多分、俺の考え通りなら逆なんだろうと思う。
それにやっぱり、幼馴染って言うのは強いんだよな。
凄く、強いんだ。
そこまで考えて俺は慌てて頭を振った。
誰かの顔が一瞬脳裏をよぎった気がしたから。

まあでもまだ結ばれてないなら俺にだってまだチャンスはあるはず!
ワンチャンぐらいは!

なんて相変わらずの恋愛運の無さぶりに落ち込みそうになるのを勇気づけて様子を見守る方に専念する事にする。

「よーし、お前ら!相手は1人だ!遠慮なくボコボコにしてやんなぁ!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」

大きく杉原が声を張り上げるのと同時に唸るように声を上げる男子生徒達。
しかもその数は、またどこから湧いて出たのか、先程の倍以上になっていた。

「おいおいおい、これは流石に多いだろ…!」
「え?そうか?あれぐらいならうまく立ち回ればそんなに難しくないと思うけどな」
「いや、お前の意見は聞いてないからな陽斗」

俺達がそんな会話を繰り広げている間に喧嘩は始まってしまっていたりするんだが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件

水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。 そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。 この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…? ※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)

転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…

リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。 乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。 (あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…) 次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり… 前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた… そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。 それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。 じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。 ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!? ※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております

王道くんと、俺。

葉津緒
BL
偽チャラ男な腐男子の、王道観察物語。 天然タラシな美形腐男子くん(偽チャラ男)が、攻めのふりをしながら『王道転入生総受け生BL』を楽しく観察。 ※あくまでも本人の願望です。 現実では無自覚に周囲を翻弄中♪ BLコメディ 王道/脇役/美形/腐男子/偽チャラ男 start→2010 修正→2018 更新再開→2023

どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。 次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。 どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。 って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん
BL
******************** ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。 監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。 もう一度、やり直せたなら… そう思いながら遠のく意識に身をゆだね…… 気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。 逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。 自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。 孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。 しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ 「君は稀代のたらしだね。」 ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー! よろしくお願い致します!! ********************

処理中です...