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追記 1

多くの在来生物の命が失われ、多額の国税という大きな代償が支払われることになった。

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 実際に12年当時の民主党政権による事業仕分けにおいて、マングース防除事業も仕分け対象となり、1匹当たりの捕獲に係る経費が高すぎるとして「抜本的見直し」が言い渡され、危うく事業が止められかけたこともありました。この結果には事業関係者一同が慌てました。もし、防除の手を一時的にでも止めれば、低密度に抑えていたマングース個体群が一気に回復して、これまでの苦労が水泡と化してしまうことになります。幸い、この仕分けの結果には研究者のみならず、一般の人たちからも「生物の理屈・常識を理解しなさすぎ」との批判が多数寄せられ、事業の停止は回避されました。

 紆余曲折を経ながらも、マングースの防除事業は今日まで継続しており、昨年(2015年)夏には、部分的ではありますが沖縄本島の北部でマングース集団の根絶が成功して、ヤンバルクイナの個体数回復も確認されました。ここまでたどり着くのにかかった予算は年間およそ3億円。そしてこれからも島全体からマングースを完全に排除できる日まで、これだけの(あるいはそれ以上の)巨額の予算が投下し続けられることになります。たった1種の外来種を導入したがために、多くの在来生物の命と、多額の国税という大きな代償が支払われることになったのです。
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