上 下
304 / 464
Huluに繋がる。 BTSに繋がる。

大人の科学.net より転載

しおりを挟む

生命情報科学の源流 | WEB連載 | 大人の科学.net

https://otonanokagaku.net/issue/origin/vol8/index05.html


オッペンハイマーとローレンスの戦後
 1946年(昭和21年)7月、アラモゴールド、広島、長崎に続く史上4発めの原爆実験(プルトニウム爆弾)が太平洋マーシャル群島のビキニ環礁で行われ、戦艦「長門」以下、戦争を生き延びた旧日本海軍の艦船を対象にその威力がためされた。ソ連を含む多くの国の政治家、外交官、ジャーナリストがこの“実験”を目撃した。戦時中、原爆開発の責任者を務めたオッペンハイマーも招待されたが、出席しなかった。彼は、ドイツを対象として開発された原子爆弾が日本に対して使われた事には抵抗しなかったが、ソ連を相手とする政治的な道具に使われる事には強い抵抗を感じていた。ボーア達は原子爆弾をソ連を含めた国際管理下に置く事を提案していたが、米政府に受け入れられるはずもなかった。

 もう一人、別な敗北を味わっていたのはアーネスト・ローレンス。原爆の開発のためにブッシュと彼を補佐するハーバード大学学長のコナントの下に4つの部局が置かれたが、ローレンスは、その一つ、ウラン235の電磁的分離の責任者をつとめた。ローレンスは、サイクロトロンを改造した質量分析器(磁場の中では質量が重い元素のほうが大きな半径を描いて曲がる事を使う)でU238からU235を分離しようとした。カルトロンという名のプロトタイプ(カリフォルニア大学の“カル”)をかつてのサイクロトロンを改造して作り、ついで、米産業を総動員してこれを大量生産しようとした。原爆開発計画の資金の大半はこの計画のために使われたとされる。しかし成功しなかったのである。成功したのは、ウーレイが責任者を務めた気体拡散方式の方だった。プルトニウム生産の責任者だったウィグナーが、1943年(昭和18年)にローレンスを訪れ「進み方が遅すぎる」とこぼした時、ローレンスは「君達は原子炉を使ってプルトニウムを、私達はU235を分離する。気体拡散方式は放棄されるべきだ」。しかし予想に反して、ローレンスだけが失敗したのだ。フェルミは、最初からローレンスの成功を信じなかったという。

 もともと、気体拡散法は、バークレーでオッペンハイマーから理論物理学を学んだフィリップ・エイベルソンがワシントンの海軍研究所で自発的に開発したものだった。原子爆弾開発計画の隠蔽のため、潜水艦用の動力として原子力を応用しようとしているといった説明がしばしばなされていて、エイベルソンもそういった原子力開発のためにU235を濃縮しようとしたらしい。気体拡散方式では、ウラン化合物を気化して拡散の速さで分離する。その利点は、プロセスを繰り返して徐々に純度をあげられる事だった。一方、ローレンス達の方式では必ず少量のU235が得られるものの、天文学的な回数の試行を必要とした。当初、ローレンス達は、気体拡散で得られた純度10%前後のU235をカルトロン2号機に射ち込んで、25%前後に純度をあげていたが、1945年(昭和20年)中ごろには気体拡散の純度は限界に近づき、カルトロンからは85%の純度が得られるようになった。そして7月になると、気体拡散法の純度はさらに上昇し、カルトロンによる処理を全く必要としなくなった。このU235が、広島に投下されたリトル・ボーイの原料となったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

なぜか俺は親友に監禁されている~夏休み最後の3日間~

ha-na-ko
BL
◆R-18 エロしかありません。 苦手な方は逃げてください。 表現が卑猥、かつリアルです。18歳未満の方は絶対に読まないでください。 ---------------------- オレ、浜崎夏斗(はまさき なつと)は夏休みもあと少しで終わるという日の自分の誕生日を親友、谷垣隼人(たにがき はやと)の自宅で過ごしていた。 ハヤんちって居心地いいんだよな。 金持ちで、親はほとんど帰ってこないという高級マンションの最上階の部屋。 週に何度かハウスキーパーさんがやってくるだけで好き放題!! かなりの頻度で入り浸っている一人ではあったがオレは平凡な高校生。 この夏休みはバイトや女の子遊びでなかなかあいつとは遊べなかった。 そんな時 「ナツ、明日誕生日だろ?もし一緒に祝う彼女でも居ないなら、俺んち来いよ。」 ハヤからのメール。 ひと夏の彼女と別れたばかりのオレは夏休み最後の3日間、ハヤんちで過ごすのも悪くないと軽く返事をした。 ※こちらの作品、わたくしのただの妄想のはけ口です。 …ので稚拙な文章で表現も上手くありません。 話も辻褄が合わなかったり誤字脱字もあるかもしれません。 苦情などは一切お受けいたしませんのでご了承ください。 表紙は南ひろむ様に描いて頂きました♪ 2019.5.20 完結 2020.4.23 番外編投稿開始

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

養子の妹が、私の許嫁を横取りしようとしてきます

ヘロディア
恋愛
養子である妹と折り合いが悪い貴族の娘。 彼女には許嫁がいた。彼とは何度かデートし、次第に、でも確実に惹かれていった彼女だったが、妹の野心はそれを許さない。 着実に彼に近づいていく妹に、圧倒される彼女はとうとう行き過ぎた二人の関係を見てしまう。 そこで、自分の全てをかけた挑戦をするのだった。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

処理中です...