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宝物 1
しおりを挟む……何か調子が悪い。
最近、食欲がなくなることが増えた。食事を残してしまい、様子を聞いたシェフがわざわざ出てきて僕の皿を見る。すると、獣耳が垂れ、尻尾が弱弱しく下がってしまうのを見て僕は胸が痛む。物凄く痛む。本当にごめんなさい。
そんな姿にしているのが自分だと思うと、余計に自分が許せない。
だが最近、何だか身体もだるいし、無理に食べると吐いてしまうこともある。さすがにそんな醜態見せられないから、何とか部屋に戻るまでは我慢しているが。部屋に戻ってからトイレに駆け込む。アルエードにもさすがに言えていない。
もともと、体は丈夫な方ではあるし隠すのはわけない。…だが、少ししんどくなってきた。食事も喉を通らなくなってしまっている現状はよろしくない。病気かと疑うも、魔力の流れは変わっている様子はないし首を傾げる。基本的に、風邪をひいたり病気になったりすると、魔力の流れが乱れることが多い。それを感じられないため、一体この不調は何だろうと考える。
そして今、レンは長期で国を出ている。こんなことは珍しいが、何やら今の内に片付けることを全て終わらせてくると言って行ってしまった。
僕がこの状態になったのは、レンが国を出立してからで、今、相談できる人がいない。辛い。レンはちゃんとあの素晴らしい毛並みを保ってくれているだろうか。割と適当なところがあるからなぁ。僕が手入れするようになってからは、レンは僕以外が触れるのを嫌がるようになった。
あぁ、帰って来た時にしっかりケアしないと。そう思いながら、最近は体調不良が続いているため他の獣人の毛並みさえも堪能できていない。体調不良に拍車がかかっている理由だ。
最近は、食事を残してしまうためアルエードが疑っている。だが、昔、病人であることを笠に着て、飼っていた子たちを全員寝室に入れて皆に囲まれて寝て、看病に来た侍従の度肝を抜かせた僕。それを知っているアルは、もし病人ならこれ幸いと、レンがいないことを良いことに獣人たちを呼び寄せるだろうと考えている。
アルは絶対そう考えている。長い付き合いだ、僕には分かっている。だからアルも半信半疑なんだろう。それで何とか乗り切り、明日は治ってるかもしれないと日々を過ごしていた僕。そんな中、レンが帰国するという知らせが入った。
僕は思っていたよりも嬉しくて、待ち遠しくて、帰ってくると言われた日はそわそわしながら今か今かと待っていた。そして、外へと繋がる扉の前を何度も見に行っては、まだかなとちょろちょろしている僕を微笑ましく見ている皆。
……ちょっと恥ずかしいのだが。
でも、やっぱり気になって扉の方へと向かってしまう僕の足。そして、外から色んな声が聞こえてきた時、僕は扉の方へと走った。
「……っ今戻った。どうした、熱烈だな。……ニア、君、痩せたか?」
外から開けられた扉から入って来た人の腕の中に、迷うことなく飛び込んだ。そんな僕を危なげなく受け止めるも、予想外の出迎えに驚いた様子のレンは、僕を抱き締めるとそう言った。
「レン、お帰りなさい。レン、レン……。」
僕は自分が思っていたよりも寂しかったみたいだ。レンに抱き着いて、馴染みのある安心する匂いにずっと包まれていたい感情で心が埋め尽くされる。
そんな僕を抱き上げると、額に、頬に、口にと唇が降ってくる。そんなレンの首に腕を回してぎゅっと抱き着く。
「ニア、どうした。……おい、医者を呼べ。」
レンの声が聞こえたと思ったが、僕は安心する匂いに眠気を誘われ、瞼が下りていったのだった。
――――――
「おめでとうございます、ご懐妊されています。」
僕は言われた言葉にぽかんと口を開けた。そしてレンを見上げる。
「ニア、君は妊娠している。腹には子が宿っている。」
僕をそっと抱き締めて言ったレンの言葉を反芻する。
……子?妊娠している?
「そ、それはどっちですか?獣人でしょうか、人間でしょうか。」
人族ならば、大変でもお産は通常通りだ。だが、獣人となると人よりも頑丈なため、母体の方がお産の時に危機的状況に陥りやすいと言われている。お産の時だけではない。腹の中での成長も早く、人である母体がもたないのだ。だから基本的に、人と獣人の番で子がいるのは非常に稀だ。もし、腹の子が獣人であるならば僕は…。
「獣人でしょう。陛下のお子となると、獣人である可能性が非常に高いです。」
「大変だ!僕、これから身体作りしないと……!」
獣人と言われ、反射的にそう返し、いてもたっても居られず立ち上がる。
「毎日筋トレと走り込みと、柔軟もしないといけない!あと、あと……。」
トレーナーを雇ってもらわないといけない、後は入念な計画と、食事も考えてもらって……。
心の中の何人もの僕は、皆大慌てでティーカップをテーブルに置き、思い思いの筋トレを始めている者、献立を考えようとティースプーンを振り回している者でてんやわんやだ。
「ニア、落ち着け。何だ、筋トレに走り込みとは。そんなこと、させるわけないだろう。」
「何言ってるの!獣人の子がここにいるんだよ!この子の方が頑丈だろうし、僕がへばるわけにはいかないでしょ!なら負けないくらい身体を鍛えないと!栄養だっているし、僕がこの子の全てを担ってるんだから!」
「……いやはや、さすが陛下の番様ですなぁ。人族が獣人の子を妊娠したとなると、お産に難色を示す者が多いのですが。」
……あぁ、そうだろう。許されることではないが、人が獣人の子を孕むというのは、お産だけじゃなく経過だけでも死が隣にあるということだ。
人が産むことを希望しても、番である獣人が許可しないことが多い。最愛の人が死ぬかもしれないからだ。それほど、獣人と人との間に子をもうけるということは難しい問題なのだ。
だが、僕はレンが何を言おうと産む。それは決定事項だ。
「君が種を飲み込むと決めた時、覚悟はしていた。まさかこんなに早く妊娠するとは思ってなかったが…。だが、私は君を失うつもりはないぞ。」
そう、男同士で子を授かりたい場合、宝寿の種を飲む。それで子が育つ場所が身体の中に創られるのだ。僕はその宝寿の種を飲むまで、散々獣人の子を授かるということについて説明され勉強した。全て理解した上での決断だった。
……じゃああの体調不良は所謂つわりというものだったのか。
一人納得できてうんうんと頷いていた僕に、
「心配せずとも、ニアノール様であれば大丈夫かと思いますよ。」
医者がそう続けた。
「ニアノール様、魔力をお持ちですね?魔力持ちは人族の中でも体は頑丈です。それに、行使できるほどの魔力をお持ちであるなら、問題ないでしょう。今の時点で、通常のつわりの症状で収まっているのが証明です。一般的には、獣人の子を孕んだ人族は、安定期に入るまでは体を動かすことができない状態になります。栄養や循環したものが全て子にいくためです。だから、安定期までは全ての動作はベッド上で、栄養は点滴になります。今そんなに元気があるのは通常有り得ないのですよ。」
苦笑しつつも、どこか嬉しそうに言う医者に僕は目を見開いた。
「……そうなの?じゃあ僕、特に鍛えたりしなくてもいいの?」
「そうですね、過度に運動したりするのはお勧めしません。適度な食事、適度な運動で今のところは様子を見ていいでしょう。」
そう言われ、僕はお産に関してはさすがに初心者のため、医者の言葉に素直に頷いたのだった。
……だが。
「ニア、何処へ行く。いいか、移動する時は私が君を抱き上げるから必ず呼ぶように。転んだりしたらどうする。」
「坊ちゃん!身体を冷やすのは良くないそうですよ!これ、温かいと評判らしいので陛下に買ってもらいました!」
「ニアノール様、食べたい物のご希望はありますか?いつでも何でもおっしゃって下さい。」
「ニアノール様!俺の毛並みなんていいですから!どちらに行かれるんですか?陛下呼んでくるのでここに座って下さい。」
……どこに行くにも、何をするにも、皆が過保護過ぎる!
すでに安定期に入り、症状は落ち着いている。お腹も膨れているのが目に見えて分かるようになった。そして、バランスの良い食事に適度な運動、必要不可欠な毛並みを堪能する癒しの時間、全て行い母子ともに順調であるにも関わらず。レンに至っては、一緒にいる時は常に抱き上げられている。適度な運動が必要だって言っているのに聞きやしない。抱き上げられている間、ずっとレンの獣耳に顔を埋めている僕も僕だとラント様には呆れたように言われたが。
そんなこんなで、僕たちは皆に見守られながらすくすくと経過していった。
―――――――――――
「あ、産まれる。」
食事後、休憩していた時にいきなりそう言った僕に、周りの獣人たちは一瞬動きを止めた。その後、一目散にレンに知らせに行く者、医者を呼びに行く者、僕の身体を楽な姿勢に整える者、皆がそれぞれの役目を全うするために動く姿に、
……わぁ、皆すごいなぁ。
僕だけが一人のんきにそんなことを考えながら見ていた。すぐさま来たレンに素早く抱き上げられ、用意されていた部屋に連れて行かれる。
そしてその数分後……。
「産まれました!元気な男の子ですよ!」
そう言った医者の手には小さな命。僕は横に寝かせてもらったその子を見て、あまりの可愛らしさに死にそうになった。
真っ白な毛並みとふるふると震えている獣耳。濡れている尻尾も真っ白。閉じられている瞼が微かに開いて、見える瞳は金色だ。ふにゃあふにゃあと小さな声で泣く、僕の愛しい命。
……何だ、この可愛すぎる存在は。僕は世界の宝を産んだのか。
綺麗な湯で洗ってもらった後、ふわふわの生地で包まれたその子を腕に抱いた時、僕はこの子と会うために生まれてきたのだと理解した。
「レン、僕、世界の宝を産んじゃった……。」
呆然としたままそう言ったらしい僕に、レンは僕を心配していたのが吹き飛んだと後から笑って言われた。
―――――――――
「獣人のお産は、それほど時間がかからないのですよ。子はどこを通れば良いか分かってます故。それでも、数十分はかかるものなのですが……。いやはや、ニアノール様は規格外すぎて。いらぬ心配でしたな。」
皆、獣人の子を人族が産むということの難しさを知っているため、心配されていたらしいが、誰よりも安産をした僕に何故か拍手喝采だったらしい。
そして僕はこの腕に愛しい存在を抱いている。
……ふにゃあふにゃあ。
泣き出した子に視線を落とし、額に口付ける。
「どうしたの、ルアン。泣いてるのも可愛いね。何でそんなに可愛いの?存在してるだけで可愛いのは何?」
「坊ちゃん、そろそろ3時間です。ミルク作って来ましたよ。」
僕のその問い掛けはすでに通常運転になりつつあり、アルエードは作ってきたミルクを僕に渡す。
「あぁ、可愛い。飲んでるだけで可愛いってもうどうしたらいいの僕。ねぇ見て、可愛すぎない?」
「坊ちゃん、可愛いのは分かりました。何回聞くんですか。可愛いですよそりゃもう。可愛くないわけないじゃないですか。」
そう、アルエードも、他の王宮に勤める人たち皆、ルアンの可愛さを知っている。一目見たいと皆、色んな用事を探し出しては来訪してくる。どんどん見て欲しい。僕の宝。可愛すぎるよ、分かる。僕も、僕が産んだのって天使だっけって毎回思うもん。
「それにしても、まんま陛下ですねぇ。」
そうなのだ。毛の色も瞳の色もレン譲りだし、顔立ちもこれは美形になるだろうと誰もが言うぐらいだし、レンを小さくしたと言われても納得できるほど、レン似なのだ。
「だねぇ。可愛いねぇ。」
「……坊ちゃん、さっきから可愛いしか言ってませんよ。」
アルは呆れた顔で言っているが、僕は知っている。僕が離れた時、アルはさっと寝ているルアンの傍に行ってその姿をだらしない顔で眺めているのを。
「可愛いのは仕方ないよね、レンの血をひいてるんだもん。可愛いなぁ。この小さい耳、動いてるんだよ。こんなに小さいのに、ちゃんと動いてるの。可愛すぎない?尻尾も、指で触るときゅって絡めてくるんだよ…!こんな小さい尻尾がきゅって……!あとね、この前……。」
「坊ちゃん、そのぐらいで。ルアン様のお可愛らしさは、もう王宮どころか市井まで伝わっています。それにもう何度も聞きました。」
そう言うアルは、ほら、今日はお客様が来られるので早く着替えて下さい、と僕を急かした。
「今日は……あぁ、隣国の宰相が来るんだった。ルアン、行ってくるね。アル、よろしくね。何かあったらすぐ呼んでね。」
「……こんなに周りを魔術付与した物で囲んでおいて、何があるって言うんですか。」
苦笑しながらそう言ったアルは僕を送り出した。
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