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わたしは今光の中にいる。足が地についた感覚はないけれど、どういう原理か立っている。歩こうと思えば歩けるし、座れもする。
今日は夏休み初日で、古文の補習があった。教室で先生を待っていたら、菊ジイこと菊田先生と、スーツ姿のイケメンが入ってきた。
そのイケメンは、ぱっと見ただけで分かるほど高そうなブルーのダブルスーツを着ていて、艶やかな黒髪のオールバックに、金縁の丸メガネをかけ、燃えるような赤い瞳をしていた。彫りの深い欧米人のような顔立ちで、顔のパーツの一つ一つが大きく、作り物のように整った顔立ちはどこか浮世離れしていた。おそらく外国の方だと思う。
菊ジイは虚な目でずっと下を向いたまま何も喋らず、ただ教壇の後ろに立ち尽くしていた。
「こんにちは、お嬢さん。お名前を教えて頂いても?」
まさか外国人だと思ってたイケメンから流暢な日本語が発せられると思わなくて、びっくりして噛んでしまった。
「は、八王子 麻里恵(はちおうじ まりえ)でひゅ……す。」
「麻里恵さん、よろしくお願いしますね。」
イケメンが優しく微笑みかけてくる。なんて尊さ。
(教育実習生なのかな? だとしたら全力で推していきたいところね! 後で一緒に写真を撮ってもらってカナコちゃんに教えてあげよっと!)
色々と妄想をしていると、ドサッという音がした。菊ジイが倒れたようだ。定年近いと聞いていたし、夏の暑さにやられてしまったのかもしれない。
「菊ジイ、大丈夫!?」
慌てて駆け寄り肩を叩くが反応はない。かろうじて呼吸はしているようだ。
イケメンが菊ジイを抱き上げ、日陰に移動して横にさせる。
「大丈夫ですよ、安心して下さい。麻里恵さん一緒に来ていただけますか?」
なんだろう、保健室だろうか。
「はい、大丈夫です!」
わたしは光に包まれた。
で、今ってわけなんだけと……。
「麻里恵さん、気づいたみたいだね。」
振り返ると爽やかな笑顔のイケメンがいた。歯がキランと光るエフェクトが発生してもおかしくない。
「ここはどこなんです? 菊ジイは? 学校は?」
「まあまあ、落ち着いて。信じられないかもしれないけど、僕は神様なんだ。名前はシド。君は選ばれたんだよ、救世主にね。」
「何を言っているのか……。神様? 救世主?」
「説明させて欲しい。まず、君は異世界を救うための救世主に選ばれてしまった。どうしてと聞かれても、選ばれてしまったからとしか答えられない。」
「帰りたい! わたしを学校に戻して!」
「申し訳ないが、それはできない。ここに来てしまった以上戻ることはできないんだ。でも、君は来てくれただろう?」
「それは……。」
たしかに一緒に来てくれと言われて返事をしてしまった。でも、こんな事になると分かっていたらわたしは……。
「異世界を救ってくれたら、元の世界に戻れるんだ。しかも、願いをひとつだけ叶えてあげる。世界一の美貌、使いきれないほどの大金、不老不死、なんでもね。」
「願いを、ひとつ……。」
わたしの胸が一瞬高鳴ってしまった。一生かかっても掴み取れないものが手に入る、それがどれだけ魅力的か。
「麻里恵さんにはグリードフィルという世界に行ってもらう。そこでは人族、巨人族、獣人族、魔人族と異なる4種類の人種が国を作っていて、君は魔人族として世界を統一してもらいたい。」
「統一!? そんなの無理よ!」
「今から君の姿を変える。他の魔人より優れた力が手に入るから、麻里恵さんには難しいことではないかもしれないよ?」
シドがわたしに向かって手をかざすと、わたしの体は光に包まれた。
「うん、可愛いね。ばっちりだ。」
服が白い大蛇から作られたような袖の無い鱗模様の可愛らしいワンピースに変わり、肌の色が灰色になった。
「ちょ、ちょっと! わたしどうなったの!?」
「見てごらん?」
シドが姿見を出現させた。
ショートボブの髪型は変わらないが、髪の色はピンクに変わっており、耳の上から真上に向かって黒い角が生えている。白目は黒くなり、瞳は燃えるような赤色に染まっている。自分で言うのもなんだけど、たしかに可愛い。こういうコスプレだと思えば悪くない。
「今、君は属性に目覚めた。ステータスと念じてみて。」
(ステータス)
八王子 麻里恵
レベル:1
属性:魔
HP:100
MP:400
攻撃力:50
防御力:50
敏捷性:50
魔力:400
装備
・白蛇のワンピース
・スニーカー(白)
・革の袋(大銀貨30枚)
魔法
・テイム レベル1
「すごい! 頭の中に情報が浮かんできました!」
「ふふ、どれどれ。少し見せてね?……なっ、これは……。魔属性だと? 今まで見たことがない……。か、勝った………。」
シドが小さくブツブツと呟いている。
「勝った? 何か変なところがあったんですか?」
「い、いや。何でもない。凄く珍しい属性だったから驚いてしまったんだ。スキルは使いたい対象を決めて念じるだけで発動するよ。次に、スキルのテイムの部分を知りたいと願ってみ……まずい、タイムリミ……、いや何でもない。それじゃ頑張って!」
「え!? あの!?」
目の前が真っ白になり、気づくと見たこともない禍々しい紫色の葉の木に囲まれた森のような場所に立っていた。
今日は夏休み初日で、古文の補習があった。教室で先生を待っていたら、菊ジイこと菊田先生と、スーツ姿のイケメンが入ってきた。
そのイケメンは、ぱっと見ただけで分かるほど高そうなブルーのダブルスーツを着ていて、艶やかな黒髪のオールバックに、金縁の丸メガネをかけ、燃えるような赤い瞳をしていた。彫りの深い欧米人のような顔立ちで、顔のパーツの一つ一つが大きく、作り物のように整った顔立ちはどこか浮世離れしていた。おそらく外国の方だと思う。
菊ジイは虚な目でずっと下を向いたまま何も喋らず、ただ教壇の後ろに立ち尽くしていた。
「こんにちは、お嬢さん。お名前を教えて頂いても?」
まさか外国人だと思ってたイケメンから流暢な日本語が発せられると思わなくて、びっくりして噛んでしまった。
「は、八王子 麻里恵(はちおうじ まりえ)でひゅ……す。」
「麻里恵さん、よろしくお願いしますね。」
イケメンが優しく微笑みかけてくる。なんて尊さ。
(教育実習生なのかな? だとしたら全力で推していきたいところね! 後で一緒に写真を撮ってもらってカナコちゃんに教えてあげよっと!)
色々と妄想をしていると、ドサッという音がした。菊ジイが倒れたようだ。定年近いと聞いていたし、夏の暑さにやられてしまったのかもしれない。
「菊ジイ、大丈夫!?」
慌てて駆け寄り肩を叩くが反応はない。かろうじて呼吸はしているようだ。
イケメンが菊ジイを抱き上げ、日陰に移動して横にさせる。
「大丈夫ですよ、安心して下さい。麻里恵さん一緒に来ていただけますか?」
なんだろう、保健室だろうか。
「はい、大丈夫です!」
わたしは光に包まれた。
で、今ってわけなんだけと……。
「麻里恵さん、気づいたみたいだね。」
振り返ると爽やかな笑顔のイケメンがいた。歯がキランと光るエフェクトが発生してもおかしくない。
「ここはどこなんです? 菊ジイは? 学校は?」
「まあまあ、落ち着いて。信じられないかもしれないけど、僕は神様なんだ。名前はシド。君は選ばれたんだよ、救世主にね。」
「何を言っているのか……。神様? 救世主?」
「説明させて欲しい。まず、君は異世界を救うための救世主に選ばれてしまった。どうしてと聞かれても、選ばれてしまったからとしか答えられない。」
「帰りたい! わたしを学校に戻して!」
「申し訳ないが、それはできない。ここに来てしまった以上戻ることはできないんだ。でも、君は来てくれただろう?」
「それは……。」
たしかに一緒に来てくれと言われて返事をしてしまった。でも、こんな事になると分かっていたらわたしは……。
「異世界を救ってくれたら、元の世界に戻れるんだ。しかも、願いをひとつだけ叶えてあげる。世界一の美貌、使いきれないほどの大金、不老不死、なんでもね。」
「願いを、ひとつ……。」
わたしの胸が一瞬高鳴ってしまった。一生かかっても掴み取れないものが手に入る、それがどれだけ魅力的か。
「麻里恵さんにはグリードフィルという世界に行ってもらう。そこでは人族、巨人族、獣人族、魔人族と異なる4種類の人種が国を作っていて、君は魔人族として世界を統一してもらいたい。」
「統一!? そんなの無理よ!」
「今から君の姿を変える。他の魔人より優れた力が手に入るから、麻里恵さんには難しいことではないかもしれないよ?」
シドがわたしに向かって手をかざすと、わたしの体は光に包まれた。
「うん、可愛いね。ばっちりだ。」
服が白い大蛇から作られたような袖の無い鱗模様の可愛らしいワンピースに変わり、肌の色が灰色になった。
「ちょ、ちょっと! わたしどうなったの!?」
「見てごらん?」
シドが姿見を出現させた。
ショートボブの髪型は変わらないが、髪の色はピンクに変わっており、耳の上から真上に向かって黒い角が生えている。白目は黒くなり、瞳は燃えるような赤色に染まっている。自分で言うのもなんだけど、たしかに可愛い。こういうコスプレだと思えば悪くない。
「今、君は属性に目覚めた。ステータスと念じてみて。」
(ステータス)
八王子 麻里恵
レベル:1
属性:魔
HP:100
MP:400
攻撃力:50
防御力:50
敏捷性:50
魔力:400
装備
・白蛇のワンピース
・スニーカー(白)
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魔法
・テイム レベル1
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シドが小さくブツブツと呟いている。
「勝った? 何か変なところがあったんですか?」
「い、いや。何でもない。凄く珍しい属性だったから驚いてしまったんだ。スキルは使いたい対象を決めて念じるだけで発動するよ。次に、スキルのテイムの部分を知りたいと願ってみ……まずい、タイムリミ……、いや何でもない。それじゃ頑張って!」
「え!? あの!?」
目の前が真っ白になり、気づくと見たこともない禍々しい紫色の葉の木に囲まれた森のような場所に立っていた。
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