43 / 86
43
しおりを挟む
「初めての依頼だ。ワクワクするなー。」
鼻歌まじりに森の中を進む。広く開けた道になっており、視界は良好だった。湖を見ながらパンを食べようと考えていたヨールは、はやる気持ちがそうさせるのか、歩く速度もつられてあがる。
1時間ほど歩いた頃、右前方の森の中から唸り声が聞こえた。
グルルルル……
太い木の後ろから、覗き見るように1頭のミドルハウンドがこちらを威嚇していた。
(シャドークロー)
両手と両耳に闇の爪を纏わせ、巨大なモミアゲの童顔な少年は、目を逸らすことなくゆっくりと後退する。
(バフがあれば問題なくやれる筈だ。)
(ステータス)
黒川 夜
レベル:11
属性:闇
HP:13
MP:13
攻撃力:10
防御力:10
敏捷性:10
魔力:10
「ちょ、待っ……!?」
期待を裏切られたステータスに思わず声を出してしまう。ミドルハウンドがこちらに駆け出した。
(ま、まずい!)
慌ててスキルを解除し、服を脱ぐ。靴を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、上着を脱いだ時には、巨体の犬はこちらに飛びかかってきていた。首を庇うように咄嗟に右腕を前に出すと、獣の牙が皮膚を突き破る痛みに脳が悲鳴を上げた。
「ぐあああああ……」
獣に噛まれた時は、無理に腕を振り払ってはいけない。獣の牙は、手前から後方にかけて薄く鋭くなっている。振り払う事で後方への力がかかると、ナイフを突き立て引き裂いたように、裂傷の面積が増えてしまう。
ヨールは痛みを堪え、格闘技のパウンドのように、握りしめた左手を何度も急所の鼻に上方から叩きつけた。
ギャン! と悲鳴をあげ、怯んだ隙に牙が離れた。すかさずシャドークローを発動し、ミドルパウンドの頭を斬り飛ばした。
(やばかった……、今のはまじで危なかった。)
売ることを考え、靴下等をバッグにしまっていた事が幸いした。裸になり、ステータスが上方していなければ、恐らく右腕は食い千切られていただろう。
野生の獣の爪牙によって傷ついた箇所は化膿しやすく、破傷風にかかる心配もある。この世界でも同様であるかは分からないが、解毒ポーションを振りかけ、ポーションを飲むと、牙が突き刺さった傷跡がみるみるうちに塞がっていった。
「異世界すげぇ……。」
潰れたミドルハウンドの鼻を切り取り、それ以外の部位はシャドークローで消滅させた。骨のナイフは切れ味がそこそこで、刃先も短く使い勝手があまりよろしくなかったことから、作業はほぼ全てスキルで行った。
鼻歌まじりに森の中を進む。広く開けた道になっており、視界は良好だった。湖を見ながらパンを食べようと考えていたヨールは、はやる気持ちがそうさせるのか、歩く速度もつられてあがる。
1時間ほど歩いた頃、右前方の森の中から唸り声が聞こえた。
グルルルル……
太い木の後ろから、覗き見るように1頭のミドルハウンドがこちらを威嚇していた。
(シャドークロー)
両手と両耳に闇の爪を纏わせ、巨大なモミアゲの童顔な少年は、目を逸らすことなくゆっくりと後退する。
(バフがあれば問題なくやれる筈だ。)
(ステータス)
黒川 夜
レベル:11
属性:闇
HP:13
MP:13
攻撃力:10
防御力:10
敏捷性:10
魔力:10
「ちょ、待っ……!?」
期待を裏切られたステータスに思わず声を出してしまう。ミドルハウンドがこちらに駆け出した。
(ま、まずい!)
慌ててスキルを解除し、服を脱ぐ。靴を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、上着を脱いだ時には、巨体の犬はこちらに飛びかかってきていた。首を庇うように咄嗟に右腕を前に出すと、獣の牙が皮膚を突き破る痛みに脳が悲鳴を上げた。
「ぐあああああ……」
獣に噛まれた時は、無理に腕を振り払ってはいけない。獣の牙は、手前から後方にかけて薄く鋭くなっている。振り払う事で後方への力がかかると、ナイフを突き立て引き裂いたように、裂傷の面積が増えてしまう。
ヨールは痛みを堪え、格闘技のパウンドのように、握りしめた左手を何度も急所の鼻に上方から叩きつけた。
ギャン! と悲鳴をあげ、怯んだ隙に牙が離れた。すかさずシャドークローを発動し、ミドルパウンドの頭を斬り飛ばした。
(やばかった……、今のはまじで危なかった。)
売ることを考え、靴下等をバッグにしまっていた事が幸いした。裸になり、ステータスが上方していなければ、恐らく右腕は食い千切られていただろう。
野生の獣の爪牙によって傷ついた箇所は化膿しやすく、破傷風にかかる心配もある。この世界でも同様であるかは分からないが、解毒ポーションを振りかけ、ポーションを飲むと、牙が突き刺さった傷跡がみるみるうちに塞がっていった。
「異世界すげぇ……。」
潰れたミドルハウンドの鼻を切り取り、それ以外の部位はシャドークローで消滅させた。骨のナイフは切れ味がそこそこで、刃先も短く使い勝手があまりよろしくなかったことから、作業はほぼ全てスキルで行った。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
レベル1の最強転生者 ~勇者パーティーを追放された錬金鍛冶師は、スキルで武器が作り放題なので、盾使いの竜姫と最強の無双神器を作ることにした~
サイダーボウイ
ファンタジー
「魔物もろくに倒せない生産職のゴミ屑が! 無様にこのダンジョンで野垂れ死ねや! ヒャッハハ!」
勇者にそう吐き捨てられたエルハルトはダンジョンの最下層で置き去りにされてしまう。
エルハルトは錬金鍛冶師だ。
この世界での生産職は一切レベルが上がらないため、エルハルトはパーティーのメンバーから長い間不遇な扱いを受けてきた。
だが、彼らは知らなかった。
エルハルトが前世では魔王を最速で倒した最強の転生者であるということを。
女神のたっての願いによりエルハルトはこの世界に転生してやって来たのだ。
その目的は一つ。
現地の勇者が魔王を倒せるように手助けをすること。
もちろん勇者はこのことに気付いていない。
エルハルトはこれまであえて実力を隠し、影で彼らに恩恵を与えていたのである。
そんなことも知らない勇者一行は、エルハルトを追放したことにより、これまで当たり前にできていたことができなくなってしまう。
やがてパーティーは分裂し、勇者は徐々に落ちぶれていくことに。
一方のエルハルトはというと、さくっとダンジョンを脱出した後で盾使いの竜姫と出会う。
「マスター。ようやくお逢いすることができました」
800年間自分を待ち続けていたという竜姫と主従契約を結んだエルハルトは、勇者がちゃんと魔王を倒せるようにと最強の神器作りを目指すことになる。
これは、自分を追放した勇者のために善意で行動を続けていくうちに、先々で出会うヒロインたちから好かれまくり、いつの間にか評価と名声を得てしまう最強転生者の物語である。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです
こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。
異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。
Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。
石八
ファンタジー
主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる