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嫌だと言いましたけどね
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戦闘が終わると、兵士達が街道に散らばる緑の死体を一箇所に集め始めた。
ゴブリンの死体は食べる訳にもいかず、放置しては腐敗による悪臭や他のモンスターを呼び寄せる原因にもなる為燃やすしかないらしい。
魔法使いが火を放つと、肉の焼ける嫌な臭いが広がった。
立ち昇る黒い煙がどこか怨念を含んでいるようで、背筋に寒気を覚えた俺は、その光景を見続ける事が出来なかった。
「わっ……私は、パパの顔って可愛い? ……と思いますけどねっ!」
アルが気を遣って俺を励ましてくれたが、あんまり頭に入ってこなかった。
コメ:おい! 何か言うことがあるんじゃないか?
コメ:ふぅ。
コメ:勇太、見えてるんだろ?
コメ:リーダーどこー?
コメ:ふぅ。
コメ:緑色の勇太が居たなー? んー?
勇太:オレ ゴブリン オマエラ スマン
コメ:馬鹿馬鹿しくてワロタwww
コメ:しょうもなw
コメ:俺は結構好きwww
俺の心に大きな傷を残した悲惨な事件があった気がするが、何事もなかったかのように行軍が再開された。
馬車が森を抜けると、小高い丘の上に聳え立つ巨大な城と、その麓に栄える街並みが見えた。
これからは城下町に行く機会が増えるだろうし、タイキンさんのように商品紹介なんかをやってみるのもいいかもしれない。
城での生活は長くなりそうだが、視聴者が楽しめるような企画を考えていくつもりだ。
『王様にドッキリをしかけてみた』なんてどうだろうか?
不敬すぎて首を刎ねられるかもしれないな。
さっきのゴブリンリーダーのように。
馬車は跳ね橋を渡り、巨大な城門を潜り抜ける。
そのまま街中を通り、緩やかな坂道を登っていく。
石畳の広場で馬車が停止した。
「これより王に面会する! 部隊は解散せよ!」
兵士達が俺に一礼しながら去って行く。
中には俺に握手を求める者までいた。
いよいよ、新しい生活の始まりを感じる。
解散という事で、装備を持って行かなくてはならない。
ノイマンが俺たちの衣服が入った鞄を背負ってくれている。
ナタリアは魔剣ゲイルウィングを持ち、ランデルは大剣を肩に担ぎ、俺は両手に枷をはめられた。
今回は、俺、アル、ナタリア、ランデル、ノイマンで王に面会する。
アルと俺が正式な夫婦として国に認められたからだろう。
長い坂道を登り、城の中に入ると、赤い絨毯の上でランデルとノイマンが跪いた。
俺は、体が重すぎて膝を曲げたくないので立っていた。
ナタリアはよく分からないという顔をしており、アルも当然のような顔で立っている。
「ネフィスアルバを倒し、戻って参りました!」
「報告は聞いておる! 場所を移動するとしよう!」
ランデルの声に、大臣が馬鹿でかい声で応えた。
伝令兵がスパイの存在を知らせた為か、別室で話す事になった。
案内された部屋は、黒檀のような黒く艶のあるテーブルを囲うように、金の意匠を施された真っ赤なソファーが配置された応接間だった。
一番奥の席に王が座り、その横に大臣が立っている。
俺達は、王と向かい合うように座った。
ノイマンだけは部屋の外に立ち、誰も寄せつけない警戒態勢のもと会議が始まった。
「大臣、あれを」
王の指示で大臣が金色に縁取られた黒い鞘を持って来た。
俺は立たされ、腰の左側にその鞘をつけられた。
剣を納めろと言われたが、重すぎて肘が曲がらない俺には無理な注文だ。
考えた結果、盾を地面に置き、剣を両手で逆さに持ち、鞘に突き刺すような形で納刀した。
聖宝剣ゲルバンダイが鞘に納まると、刀身から放たれていた光のオーラが消えた。
コメ:非力すぎて草
コメ:切腹かよw
コメ:ハラキリッ!w
コメ:動作の一つ一つがダサいんだよなぁ。
コメ:こんな勇者嫌だわwww
「ドラキュリオ皇帝に面会の約束を取り付けた。ランデルと勇者ユートルディスを護衛とし、その場で奴を討つ。アルテグラジーナとその娘は、城で待機して貰う。よいな?」
王の発言に耳を疑った。
ランデルの言っていた一年とはなんだったのか。
ドラキュリオ帝国を包む闇の中ではアルよりも強いという闇皇帝キディス・メイガス・ドラキュリオに勝てる筈が無い。
数カ国で同盟を組み、数で押した方がいいに決まっている。
という事で、答えはノーだ。
「いやぢぇしゅ!」
※嫌です!
「はっはっはっ、実に頼もしい! イエスアイドゥとは、ご機嫌な返事を貰ったものだ! ランデル、すぐに出るぞ!」
「はっ!」
俺は気を失った。
ゴブリンの死体は食べる訳にもいかず、放置しては腐敗による悪臭や他のモンスターを呼び寄せる原因にもなる為燃やすしかないらしい。
魔法使いが火を放つと、肉の焼ける嫌な臭いが広がった。
立ち昇る黒い煙がどこか怨念を含んでいるようで、背筋に寒気を覚えた俺は、その光景を見続ける事が出来なかった。
「わっ……私は、パパの顔って可愛い? ……と思いますけどねっ!」
アルが気を遣って俺を励ましてくれたが、あんまり頭に入ってこなかった。
コメ:おい! 何か言うことがあるんじゃないか?
コメ:ふぅ。
コメ:勇太、見えてるんだろ?
コメ:リーダーどこー?
コメ:ふぅ。
コメ:緑色の勇太が居たなー? んー?
勇太:オレ ゴブリン オマエラ スマン
コメ:馬鹿馬鹿しくてワロタwww
コメ:しょうもなw
コメ:俺は結構好きwww
俺の心に大きな傷を残した悲惨な事件があった気がするが、何事もなかったかのように行軍が再開された。
馬車が森を抜けると、小高い丘の上に聳え立つ巨大な城と、その麓に栄える街並みが見えた。
これからは城下町に行く機会が増えるだろうし、タイキンさんのように商品紹介なんかをやってみるのもいいかもしれない。
城での生活は長くなりそうだが、視聴者が楽しめるような企画を考えていくつもりだ。
『王様にドッキリをしかけてみた』なんてどうだろうか?
不敬すぎて首を刎ねられるかもしれないな。
さっきのゴブリンリーダーのように。
馬車は跳ね橋を渡り、巨大な城門を潜り抜ける。
そのまま街中を通り、緩やかな坂道を登っていく。
石畳の広場で馬車が停止した。
「これより王に面会する! 部隊は解散せよ!」
兵士達が俺に一礼しながら去って行く。
中には俺に握手を求める者までいた。
いよいよ、新しい生活の始まりを感じる。
解散という事で、装備を持って行かなくてはならない。
ノイマンが俺たちの衣服が入った鞄を背負ってくれている。
ナタリアは魔剣ゲイルウィングを持ち、ランデルは大剣を肩に担ぎ、俺は両手に枷をはめられた。
今回は、俺、アル、ナタリア、ランデル、ノイマンで王に面会する。
アルと俺が正式な夫婦として国に認められたからだろう。
長い坂道を登り、城の中に入ると、赤い絨毯の上でランデルとノイマンが跪いた。
俺は、体が重すぎて膝を曲げたくないので立っていた。
ナタリアはよく分からないという顔をしており、アルも当然のような顔で立っている。
「ネフィスアルバを倒し、戻って参りました!」
「報告は聞いておる! 場所を移動するとしよう!」
ランデルの声に、大臣が馬鹿でかい声で応えた。
伝令兵がスパイの存在を知らせた為か、別室で話す事になった。
案内された部屋は、黒檀のような黒く艶のあるテーブルを囲うように、金の意匠を施された真っ赤なソファーが配置された応接間だった。
一番奥の席に王が座り、その横に大臣が立っている。
俺達は、王と向かい合うように座った。
ノイマンだけは部屋の外に立ち、誰も寄せつけない警戒態勢のもと会議が始まった。
「大臣、あれを」
王の指示で大臣が金色に縁取られた黒い鞘を持って来た。
俺は立たされ、腰の左側にその鞘をつけられた。
剣を納めろと言われたが、重すぎて肘が曲がらない俺には無理な注文だ。
考えた結果、盾を地面に置き、剣を両手で逆さに持ち、鞘に突き刺すような形で納刀した。
聖宝剣ゲルバンダイが鞘に納まると、刀身から放たれていた光のオーラが消えた。
コメ:非力すぎて草
コメ:切腹かよw
コメ:ハラキリッ!w
コメ:動作の一つ一つがダサいんだよなぁ。
コメ:こんな勇者嫌だわwww
「ドラキュリオ皇帝に面会の約束を取り付けた。ランデルと勇者ユートルディスを護衛とし、その場で奴を討つ。アルテグラジーナとその娘は、城で待機して貰う。よいな?」
王の発言に耳を疑った。
ランデルの言っていた一年とはなんだったのか。
ドラキュリオ帝国を包む闇の中ではアルよりも強いという闇皇帝キディス・メイガス・ドラキュリオに勝てる筈が無い。
数カ国で同盟を組み、数で押した方がいいに決まっている。
という事で、答えはノーだ。
「いやぢぇしゅ!」
※嫌です!
「はっはっはっ、実に頼もしい! イエスアイドゥとは、ご機嫌な返事を貰ったものだ! ランデル、すぐに出るぞ!」
「はっ!」
俺は気を失った。
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