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真の勇者
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おそらく、角がある方がオスで爪が長い方がメスだろう。
迫り来る二体のプァルラグに怯むことなく、ランデルは巨大な剣を振り上げた。
大きく左足を前に出すと、込められた力で大地が砕けた。
仰け反らせた背をバネのようにしならせ、踏み込んだ力を全身で爆発させた。
「ぬうんっ!」
ランデルが大剣を振り下ろすと、目の前の地面が激しく炸裂した。
放たれた衝撃波が土煙を巻き上げながらプァルラグをに迫る。
驚いたプァルラグは急ブレーキをかけて立ち上がったが、ランデルの強力な一撃を受けると後方に吹き飛ばされた。
コメ:ジジイすげえええええ!【四千円】
コメ:タイキンより強くね?w【二千円】
コメ:ゴミ呼ばわりされてるとは思えないw
コメ:ランデルかっけえな!
コメ:人間業じゃねえぞw【二千円】
ゆっくりと起き上がったプァルラグは、警戒するようにランデルを睨みつけている。
下手に動けないその様子がランデルの剣撃の威力を物語っていた。
四足歩行の時も迫力があったが、立ち上がったプァルラグはその比ではない。
目の前に二本の大木が現れたかのようだ。
「ダディ、ちょっと借りるね!」
「ん? あ、ちょっちょ……」
※ん? あ、ちょっと……
俺の手からルミエールシールドと聖宝剣ゲルバンダインを奪い取ったナタリアが前傾に身を屈めて溜めを作った。
ナタリアの後ろ髪が鞭のように空気を打つと、目の前からその姿が消えた。
放たれた矢のように風を切り、一直線にプァルラグへと向かって行く。
コメ:え、何してんの?
コメ:ナタリアちゃんが危ない!
コメ:ランデル頼む、止めてくれ!
コメ:勇太お前マジでゴミだな。
コメ:ナタリアたそ戻って来てー!
「きょりゃ! にゃちゃりあ、みゃちにゃしゃい!」
※コラ! ナタリア、待ちなさい!
俺の叫びも、伸ばした手も、ナタリアには届かなかった。
異変に気付いたランデルがこちらを振り向き、大きく手を広げてナタリアを止めようとしている。
その時、均衡が崩れた。
ランデルの無防備な背後にプァルラグが襲いかかったのだ。
雌のプァルラグが一気に距離を詰めた。
振り上げた大爪が太陽の光で鋭く輝く。
「ハゲちゃん、お馬さん!」
ナタリアが叫ぶと、ランデルが四つん這いになった。
プァルラグの切り裂くような一撃がランデルの背中に掠り、鳴り響いた硬質な金属音がその爪の鋭利さを表していた。
ここ最近刷り込まれたお馬さんごっこのおかげで命拾いしたようだ。
腕を振り下ろしたプァルラグが無防備な姿を晒している。
ナタリアはランデルの背中を踏み台にして、天高く飛び上がった。
「炎よ……」
ナタリアが黒い炎に包まれる。
翼のように噴出した黒炎が地上への推進力となる。
巨大な熊の化け物に黒い流星が強襲した。
「燃え尽きろ! 燼滅獄炎斬《じんめつごくえんざん》!」
黒い炎を纏った伝説の剣が、プァルラグの頭蓋を易々と貫通し、そのまま胴体を真っ二つにした。
切断面から禍々しい漆黒の火炎が噴き出す。
優雅に着地したナタリアが立ち上がり、付着した血液を払うように剣を振ると、黒い炎が消失した。
コメ:ナタリアたんしゅんごおいいい!【一万円】
コメ:勇者ナタリアw【一万円】
コメ:そういえば、ユートルなんとかって偽勇者が居たなあ。
コメ:ナタリアたそマジツヨカワ!【三万円】
コメ:カメラマンご苦労!【五千円】
番の片割れが一瞬で死んでしまった恐怖からか、雄のプァルラグが尻尾を巻いて逃げ出した。
自分の十分の一程度の身長しかない女の子を前にして、まさか負けるとは思ってもいなかったのだろう。
「あらあら、情けない。パパなら逃げませんよっ? ナタリアちゃん、ママがお手本を見せてあげまちゅからねっ!」
アルの瞳が燃えるように輝きだした。
パチンッと指を鳴らすと、四足歩行で必死に逃げるプァルラグを炎の槍が地面に縫いつけた。
正確に心臓を撃ち抜いていたようで、泳ぐようにもがき苦しんだプァルラグは、すぐにぐったりと動かなくなった。
コメ:アルちゃんカッコヨス!【一万円】
コメ:俺の胸も撃ち抜いてくれ!【三万円】
コメ:勇太以外全員凄いな。
勇太:あの、一応俺も四天王を倒してるんですけど。
コメ:だから?
コメ:勝手に話に混ざろうとしないでね?
コメ:勇太のコメントウザいからブロックしたい。
コメ:アルたそ……しゅき……【一万円】
ナタリアが楽しそうにスキップしながら戻って来た。
アルの腰に抱きついて頬を擦りつける姿が微笑ましい。
コメントで傷ついた俺の心が癒されていく。
「ママ凄かったね! あんなに綺麗に倒すなんて!」
「雑魚は一瞬で肉にしてあげないと駄目でしゅよっ? パパは美味しい物が好きなんでちゅからっ!」
俺の為に倒してくれたらしい。
なんとできた妻だろうか。
「ダディもあんなに綺麗に倒せるの?」
「パパがやったら消し飛んじゃいますよっ! ですよねっ? パパっ?」
世のお父さん達は、こういう時なんと答えるのだろうか。
迫り来る二体のプァルラグに怯むことなく、ランデルは巨大な剣を振り上げた。
大きく左足を前に出すと、込められた力で大地が砕けた。
仰け反らせた背をバネのようにしならせ、踏み込んだ力を全身で爆発させた。
「ぬうんっ!」
ランデルが大剣を振り下ろすと、目の前の地面が激しく炸裂した。
放たれた衝撃波が土煙を巻き上げながらプァルラグをに迫る。
驚いたプァルラグは急ブレーキをかけて立ち上がったが、ランデルの強力な一撃を受けると後方に吹き飛ばされた。
コメ:ジジイすげえええええ!【四千円】
コメ:タイキンより強くね?w【二千円】
コメ:ゴミ呼ばわりされてるとは思えないw
コメ:ランデルかっけえな!
コメ:人間業じゃねえぞw【二千円】
ゆっくりと起き上がったプァルラグは、警戒するようにランデルを睨みつけている。
下手に動けないその様子がランデルの剣撃の威力を物語っていた。
四足歩行の時も迫力があったが、立ち上がったプァルラグはその比ではない。
目の前に二本の大木が現れたかのようだ。
「ダディ、ちょっと借りるね!」
「ん? あ、ちょっちょ……」
※ん? あ、ちょっと……
俺の手からルミエールシールドと聖宝剣ゲルバンダインを奪い取ったナタリアが前傾に身を屈めて溜めを作った。
ナタリアの後ろ髪が鞭のように空気を打つと、目の前からその姿が消えた。
放たれた矢のように風を切り、一直線にプァルラグへと向かって行く。
コメ:え、何してんの?
コメ:ナタリアちゃんが危ない!
コメ:ランデル頼む、止めてくれ!
コメ:勇太お前マジでゴミだな。
コメ:ナタリアたそ戻って来てー!
「きょりゃ! にゃちゃりあ、みゃちにゃしゃい!」
※コラ! ナタリア、待ちなさい!
俺の叫びも、伸ばした手も、ナタリアには届かなかった。
異変に気付いたランデルがこちらを振り向き、大きく手を広げてナタリアを止めようとしている。
その時、均衡が崩れた。
ランデルの無防備な背後にプァルラグが襲いかかったのだ。
雌のプァルラグが一気に距離を詰めた。
振り上げた大爪が太陽の光で鋭く輝く。
「ハゲちゃん、お馬さん!」
ナタリアが叫ぶと、ランデルが四つん這いになった。
プァルラグの切り裂くような一撃がランデルの背中に掠り、鳴り響いた硬質な金属音がその爪の鋭利さを表していた。
ここ最近刷り込まれたお馬さんごっこのおかげで命拾いしたようだ。
腕を振り下ろしたプァルラグが無防備な姿を晒している。
ナタリアはランデルの背中を踏み台にして、天高く飛び上がった。
「炎よ……」
ナタリアが黒い炎に包まれる。
翼のように噴出した黒炎が地上への推進力となる。
巨大な熊の化け物に黒い流星が強襲した。
「燃え尽きろ! 燼滅獄炎斬《じんめつごくえんざん》!」
黒い炎を纏った伝説の剣が、プァルラグの頭蓋を易々と貫通し、そのまま胴体を真っ二つにした。
切断面から禍々しい漆黒の火炎が噴き出す。
優雅に着地したナタリアが立ち上がり、付着した血液を払うように剣を振ると、黒い炎が消失した。
コメ:ナタリアたんしゅんごおいいい!【一万円】
コメ:勇者ナタリアw【一万円】
コメ:そういえば、ユートルなんとかって偽勇者が居たなあ。
コメ:ナタリアたそマジツヨカワ!【三万円】
コメ:カメラマンご苦労!【五千円】
番の片割れが一瞬で死んでしまった恐怖からか、雄のプァルラグが尻尾を巻いて逃げ出した。
自分の十分の一程度の身長しかない女の子を前にして、まさか負けるとは思ってもいなかったのだろう。
「あらあら、情けない。パパなら逃げませんよっ? ナタリアちゃん、ママがお手本を見せてあげまちゅからねっ!」
アルの瞳が燃えるように輝きだした。
パチンッと指を鳴らすと、四足歩行で必死に逃げるプァルラグを炎の槍が地面に縫いつけた。
正確に心臓を撃ち抜いていたようで、泳ぐようにもがき苦しんだプァルラグは、すぐにぐったりと動かなくなった。
コメ:アルちゃんカッコヨス!【一万円】
コメ:俺の胸も撃ち抜いてくれ!【三万円】
コメ:勇太以外全員凄いな。
勇太:あの、一応俺も四天王を倒してるんですけど。
コメ:だから?
コメ:勝手に話に混ざろうとしないでね?
コメ:勇太のコメントウザいからブロックしたい。
コメ:アルたそ……しゅき……【一万円】
ナタリアが楽しそうにスキップしながら戻って来た。
アルの腰に抱きついて頬を擦りつける姿が微笑ましい。
コメントで傷ついた俺の心が癒されていく。
「ママ凄かったね! あんなに綺麗に倒すなんて!」
「雑魚は一瞬で肉にしてあげないと駄目でしゅよっ? パパは美味しい物が好きなんでちゅからっ!」
俺の為に倒してくれたらしい。
なんとできた妻だろうか。
「ダディもあんなに綺麗に倒せるの?」
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