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食べたくないんだが
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「勇者殿、こちらが本日の昼食になります!」
いつもの麦がゆと……何だこれは?
握りこぶし大で、そら豆に似た形状の茶黒い物体が串に刺さっている。
気のせいじゃなければいいのだが、こんがり焼けたその物体からは、嫌な臭いのする湯気と微弱な黒くて禍々しいオーラが立ち昇っている。
コメ:キモwww
コメ:またゲテモノじゃねえか!
コメ:さすがに不味そう。
コメ:なんか黒いオーラ出てない?w
「きぇみょにょしゅうをぎょうしゅきゅしちゃようにゃきょうりぇちゅにゃあきゅしゅうをはにゃちゅきょりぇはにゃにきゃにゃ?」
※獣臭を凝縮したような強烈な悪臭を放つこれは何かな?
「はっ、こちらはライトニングビーストの睾丸を串焼きにしたものです! 先の四天王との激戦で、勇者殿が疲弊されているかもしれないとランデル殿に相談しまして、精のつきそうな部位をお持ちしました!」
ちょっとこいつが何を言っているのか理解できない。
俺は今、本当に正しい解答を聞けたのだろうか。
「えっちょ、ききみゃちぎゃいじゃにゃいちょいいんぢゃきぇりょ。きょりぇはにゃにきゃにゃ?」
※えっと、聞き間違いじゃないといいんだけど。これは何かな?
「はっ、こちらはライトニングビーストのキンタマを串焼きにしたものです! 戦の疲れに一番効くのは獣のキンタマですので、多少臭いますが、食べやすい調理法を選んだつもりです!」
勇太:イカれてんのかこいつらは! 睾丸が何か分からなかったから聞き直したんじゃないんだよ! 可愛く言い直されても困るんだが!
コメ:別に可愛くないけどなw
コメ:四天王なんて食えるのか?
勇太:多少ってレベルじゃないくらい臭いですよこれ。
コメ:見てるだけで吐き気するw
コメ:腹壊しそう。
「えっちょ……りゃんぢぇりゅ? きょりぇっちぇしゃっきにょしちぇんにょうぢゃよにぇ? いみゃみゃぢぇぢゃりぇきゃちゃびぇちゃきょちょありゅにょ?」
※えっと……ランデル? これってさっきの四天王だよね? 今まで誰か食べたことあるの?
「はっはっは、ご冗談を! 今回初めて討伐されたライトニングビーストを食べたことがある者などいるはずがありません!」
勇太:だから言ってるんだろうがよこのクソジジイ! ご冗談をじゃねえんだよ! 毒があるかもしれないし、食べるにしてもキンタマはありえねえだろ。
コメ:いつになくブチギレてるなw
コメ:勇太くん落ち着いて。ストレスゲージ真っ赤だよ!
コメ:ランデルおもろwww
ミノタウロスのように、内臓とか少なくとも睾丸よりは食べれそうな部位があると思う。
そもそも俺に戦いの疲れなんて皆無だし。
「いや、みょしぢょきゅぎゃあっちゃりゃおりぇしんじゃうよ?」
※いや、もし毒があったら俺死んじゃうよ?
「がははははは、面白い事をおっしゃいますな! 勇者であるユートルディス殿が毒ごときで死ぬはずがありません!」
ダメだ、会話にならない。
流石に勇者だって毒を食べたら死ぬだろ。
……死なないの?
いやいや、どのみち俺は勇者じゃないんだから食べたら駄目だろ。
ストレスでまた気を失いかけたんだが。
「おりぇはみゅぎぎゃゆぢゃきぇぢぇいい。きょりぇはりゃんぢぇりゅぎゃちゃびちきゅりぇ。ちゅぎにょしちぇんにょうしぇんにしょにゃえちぇしぇいをちゅきぇちぇおきゅひちゅようぎゃありゅぢゃりょうしにゃ!」
※俺は麦がゆだけでいい。これはランデルが食べてくれ。次の四天王戦に備えて精をつけておく必要があるだろうしな!
「何をおっしゃいますか。もし毒があったら死んでしまうではないですか。お戯れがすぎますぞユートルディス殿!」
どの口が言ってるんだよ。
オウム返しなんだが。
凄く嫌な臭いがするし、変なオーラも出ているし、流石に食べたくない。
「「「ユートルディス! ユートルディス!」」」
飲み会の一気コールみたいな使い方をするんじゃない!
「おりぇはちゃびぇにゃい……」
※俺は食べにゃい……
「ささ、お一つどうぞ」
フォークに刺した睾丸が口に放り込まれた。
『い』の発音の時に放り込まれたから、一回咀嚼してしまった。
鳥の砂肝のような食感と共に、噛み潰した部分からジューシーな何かが漏れ出し、脳天まで突き抜ける強烈な獣臭が襲いかかってくる。
口の中で雨に濡れた大量の野良犬が暴れ回っているようだ。
「ぴぇっぴぇっ、おえええぇっ……」
※ぺっぺっ、おえええぇっ……
あまりの不快さに、俺はたまらず吐き出してしまった。
胃の中が空っぽなのに吐き気が止まらない。
勇太:き、気持ち悪い……。
コメ:これは無理だったか。
コメ:食レポよろ!
勇太:コリッとした食感の後に、鼻腔内を大量の野生動物が走り回っているかのような不快な香りが続きます。いつから俺の鼻の穴は動物園になってしまったのでしょうか。ただただ気持ち悪い。
コメ:聞かなきゃよかった……。
コメ:うわ、最悪。
なんだろう、初めて感じるワナワナとした邪悪な感情が胸の奥底で湧き立っている。
そうか、これが殺意か。
俺は今、殺意を抱いてしまっているのか。
「それでは、ユートルディス殿から今回の四天王戦についてお話を頂く! よろしくお願いします!」
ランデルが立ち上がり、吐き気に苦しむ俺を気にも留めずスピーチを始めた。
俺は、ライトニングビーストの睾丸をランデルの口の中に放り込んだ。
これが俺の怒りだ。
これが真のオーディニアングリーだ!
「しちぇんにょうをきゅりゃえ!」
※四天王を食らえ!
「ぐわああああああああああああああ! ぐふぇっ……。おえええぇ……」
ランデルは、吐瀉物を撒き散らしながら、地面を転げ回っている。
屈強な体つきをした百戦錬磨の老兵が、涙を流しながら悶え苦しんでいる。
この世界に来てから、初めて晴れやかな気分になった気がする。
俺は、右手を天に向けて突き上げた。
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!」」」
「「「ユートルディス! ユートルディス!」」
なんと気持ちのいいユートルディスコールだろうか。
俺は、胸の底から込み上げる感情に任せて叫んだ。
「ゆーちょりゅぢしゅ! ゆーちょりゅりしゅ!」
※ユートルディス! ユートルディス!
突き上げた拳の先から、穏やかな春の日差しを感じた気がした。
いつもの麦がゆと……何だこれは?
握りこぶし大で、そら豆に似た形状の茶黒い物体が串に刺さっている。
気のせいじゃなければいいのだが、こんがり焼けたその物体からは、嫌な臭いのする湯気と微弱な黒くて禍々しいオーラが立ち昇っている。
コメ:キモwww
コメ:またゲテモノじゃねえか!
コメ:さすがに不味そう。
コメ:なんか黒いオーラ出てない?w
「きぇみょにょしゅうをぎょうしゅきゅしちゃようにゃきょうりぇちゅにゃあきゅしゅうをはにゃちゅきょりぇはにゃにきゃにゃ?」
※獣臭を凝縮したような強烈な悪臭を放つこれは何かな?
「はっ、こちらはライトニングビーストの睾丸を串焼きにしたものです! 先の四天王との激戦で、勇者殿が疲弊されているかもしれないとランデル殿に相談しまして、精のつきそうな部位をお持ちしました!」
ちょっとこいつが何を言っているのか理解できない。
俺は今、本当に正しい解答を聞けたのだろうか。
「えっちょ、ききみゃちぎゃいじゃにゃいちょいいんぢゃきぇりょ。きょりぇはにゃにきゃにゃ?」
※えっと、聞き間違いじゃないといいんだけど。これは何かな?
「はっ、こちらはライトニングビーストのキンタマを串焼きにしたものです! 戦の疲れに一番効くのは獣のキンタマですので、多少臭いますが、食べやすい調理法を選んだつもりです!」
勇太:イカれてんのかこいつらは! 睾丸が何か分からなかったから聞き直したんじゃないんだよ! 可愛く言い直されても困るんだが!
コメ:別に可愛くないけどなw
コメ:四天王なんて食えるのか?
勇太:多少ってレベルじゃないくらい臭いですよこれ。
コメ:見てるだけで吐き気するw
コメ:腹壊しそう。
「えっちょ……りゃんぢぇりゅ? きょりぇっちぇしゃっきにょしちぇんにょうぢゃよにぇ? いみゃみゃぢぇぢゃりぇきゃちゃびぇちゃきょちょありゅにょ?」
※えっと……ランデル? これってさっきの四天王だよね? 今まで誰か食べたことあるの?
「はっはっは、ご冗談を! 今回初めて討伐されたライトニングビーストを食べたことがある者などいるはずがありません!」
勇太:だから言ってるんだろうがよこのクソジジイ! ご冗談をじゃねえんだよ! 毒があるかもしれないし、食べるにしてもキンタマはありえねえだろ。
コメ:いつになくブチギレてるなw
コメ:勇太くん落ち着いて。ストレスゲージ真っ赤だよ!
コメ:ランデルおもろwww
ミノタウロスのように、内臓とか少なくとも睾丸よりは食べれそうな部位があると思う。
そもそも俺に戦いの疲れなんて皆無だし。
「いや、みょしぢょきゅぎゃあっちゃりゃおりぇしんじゃうよ?」
※いや、もし毒があったら俺死んじゃうよ?
「がははははは、面白い事をおっしゃいますな! 勇者であるユートルディス殿が毒ごときで死ぬはずがありません!」
ダメだ、会話にならない。
流石に勇者だって毒を食べたら死ぬだろ。
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いやいや、どのみち俺は勇者じゃないんだから食べたら駄目だろ。
ストレスでまた気を失いかけたんだが。
「おりぇはみゅぎぎゃゆぢゃきぇぢぇいい。きょりぇはりゃんぢぇりゅぎゃちゃびちきゅりぇ。ちゅぎにょしちぇんにょうしぇんにしょにゃえちぇしぇいをちゅきぇちぇおきゅひちゅようぎゃありゅぢゃりょうしにゃ!」
※俺は麦がゆだけでいい。これはランデルが食べてくれ。次の四天王戦に備えて精をつけておく必要があるだろうしな!
「何をおっしゃいますか。もし毒があったら死んでしまうではないですか。お戯れがすぎますぞユートルディス殿!」
どの口が言ってるんだよ。
オウム返しなんだが。
凄く嫌な臭いがするし、変なオーラも出ているし、流石に食べたくない。
「「「ユートルディス! ユートルディス!」」」
飲み会の一気コールみたいな使い方をするんじゃない!
「おりぇはちゃびぇにゃい……」
※俺は食べにゃい……
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フォークに刺した睾丸が口に放り込まれた。
『い』の発音の時に放り込まれたから、一回咀嚼してしまった。
鳥の砂肝のような食感と共に、噛み潰した部分からジューシーな何かが漏れ出し、脳天まで突き抜ける強烈な獣臭が襲いかかってくる。
口の中で雨に濡れた大量の野良犬が暴れ回っているようだ。
「ぴぇっぴぇっ、おえええぇっ……」
※ぺっぺっ、おえええぇっ……
あまりの不快さに、俺はたまらず吐き出してしまった。
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勇太:き、気持ち悪い……。
コメ:これは無理だったか。
コメ:食レポよろ!
勇太:コリッとした食感の後に、鼻腔内を大量の野生動物が走り回っているかのような不快な香りが続きます。いつから俺の鼻の穴は動物園になってしまったのでしょうか。ただただ気持ち悪い。
コメ:聞かなきゃよかった……。
コメ:うわ、最悪。
なんだろう、初めて感じるワナワナとした邪悪な感情が胸の奥底で湧き立っている。
そうか、これが殺意か。
俺は今、殺意を抱いてしまっているのか。
「それでは、ユートルディス殿から今回の四天王戦についてお話を頂く! よろしくお願いします!」
ランデルが立ち上がり、吐き気に苦しむ俺を気にも留めずスピーチを始めた。
俺は、ライトニングビーストの睾丸をランデルの口の中に放り込んだ。
これが俺の怒りだ。
これが真のオーディニアングリーだ!
「しちぇんにょうをきゅりゃえ!」
※四天王を食らえ!
「ぐわああああああああああああああ! ぐふぇっ……。おえええぇ……」
ランデルは、吐瀉物を撒き散らしながら、地面を転げ回っている。
屈強な体つきをした百戦錬磨の老兵が、涙を流しながら悶え苦しんでいる。
この世界に来てから、初めて晴れやかな気分になった気がする。
俺は、右手を天に向けて突き上げた。
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!」」」
「「「ユートルディス! ユートルディス!」」
なんと気持ちのいいユートルディスコールだろうか。
俺は、胸の底から込み上げる感情に任せて叫んだ。
「ゆーちょりゅぢしゅ! ゆーちょりゅりしゅ!」
※ユートルディス! ユートルディス!
突き上げた拳の先から、穏やかな春の日差しを感じた気がした。
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