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こんな男の姿を結子は想像すらしていなかった。
結子の手を触れていたその場所の近く。倒された切り株の年輪が見える内側ではなく側面。
切り倒された神木の太さから考えればあまりにも可愛らしい
双葉の枝というには小さな芽が出ていた。
結子も驚いて声を上げて芽を見つめ、じっと凝視した。
こんな風に樹木とは再生するのか、と関係のない感心した面持ちになる。
感動もしているが、それよりも樹木の人にはない逞しさを見て嬉しさが勝った。
結子は素直にただ嬉しい、と微笑んだ。
その隣で崩れるように膝をついた存在がいた。
もちろん、結子の傍にいたのは他でもない、他の誰でもない人しかいない。
だけれど、それまでの傲慢な態度からまさか彼がそんな態度に出るとは思わなかった。
ゆっくりと結子の隣でウィルの口が「何故」と声なき声で、唇だけが動くのを見た。
彼は本当に驚いているらしい。それは驚愕といっていい。
まるで天地がひっくり返りでもしたみたいに彼の顔はありえないといっている。
それほど驚くことなのか。この世界の住人じゃない結子はいまいちピンと来ないが、
この神木を切った大罪人でさえ、少なからずの畏敬が神木にあったことにこそ結子は驚いた。
なぜ、言葉を失うほど驚くほどに神木の些細な変化を見ただけで顔色を失うほど
驚くのに、神木をなぎ倒したのか?ますます、結子には分からなくなった。
そして分からない。そのことに歯がゆさを覚えた。
なぜ、今になって…
もうウィルの中には結子の存在など消えうせているだろう。
下を向いてうつむいた彼は王に最も近い王族とは思えない神妙さで
借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。
あのルイと言い争い、自分をあしざまにからかった彼とは同一視できない。
結子は彼の目から雫がこぼれるのを見た。
彼は神木を切った心無い人間ではないのではないか。
彼なりの深い、決意
何かしらの思い
そんなものを結子は図らずもからかわれた事と状況から彼に敵愾心を持っていた気持ちが
しゅるしゅると萎んでいってしまった。
もうただ悪い人には思えない。
どうしよう。
こんな男の姿を結子は想像すらしていなかった。
結子の手を触れていたその場所の近く。倒された切り株の年輪が見える内側ではなく側面。
切り倒された神木の太さから考えればあまりにも可愛らしい
双葉の枝というには小さな芽が出ていた。
結子も驚いて声を上げて芽を見つめ、じっと凝視した。
こんな風に樹木とは再生するのか、と関係のない感心した面持ちになる。
感動もしているが、それよりも樹木の人にはない逞しさを見て嬉しさが勝った。
結子は素直にただ嬉しい、と微笑んだ。
その隣で崩れるように膝をついた存在がいた。
もちろん、結子の傍にいたのは他でもない、他の誰でもない人しかいない。
だけれど、それまでの傲慢な態度からまさか彼がそんな態度に出るとは思わなかった。
ゆっくりと結子の隣でウィルの口が「何故」と声なき声で、唇だけが動くのを見た。
彼は本当に驚いているらしい。それは驚愕といっていい。
まるで天地がひっくり返りでもしたみたいに彼の顔はありえないといっている。
それほど驚くことなのか。この世界の住人じゃない結子はいまいちピンと来ないが、
この神木を切った大罪人でさえ、少なからずの畏敬が神木にあったことにこそ結子は驚いた。
なぜ、言葉を失うほど驚くほどに神木の些細な変化を見ただけで顔色を失うほど
驚くのに、神木をなぎ倒したのか?ますます、結子には分からなくなった。
そして分からない。そのことに歯がゆさを覚えた。
なぜ、今になって…
もうウィルの中には結子の存在など消えうせているだろう。
下を向いてうつむいた彼は王に最も近い王族とは思えない神妙さで
借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。
あのルイと言い争い、自分をあしざまにからかった彼とは同一視できない。
結子は彼の目から雫がこぼれるのを見た。
彼は神木を切った心無い人間ではないのではないか。
彼なりの深い、決意
何かしらの思い
そんなものを結子は図らずもからかわれた事と状況から彼に敵愾心を持っていた気持ちが
しゅるしゅると萎んでいってしまった。
もうただ悪い人には思えない。
どうしよう。
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