上 下
20 / 36

19

しおりを挟む
.


「Gランク、初心者クエストの薬草最終のクエスト達成申請お願いします。」

「はい、薬草クエストですね。ではギルドカードと薬草の提出をお願いします」

「はい」

ギルドのクエスト達成受付へ俺たちは順番を待ち大人しく並んだ。
並ぶ順番は俺、その後ろにダガー。
順番が来たので俺は持ち前の営業スマイルまではいかないが笑顔で受付嬢に愛想よく笑顔で声をかける。対して受付嬢は愛想もそっけもなく上の言葉をのたまって俺が薬草を出すのを待っている。俺は印象を悪くしてはいけないと日本人らしく愛想笑いしながら荷袋から一つ二つと10束で括った薬草の束を出す。
俺が自分で取ったのは20。後ろに控えているダガーは100だがもちろんその分を脅したりなだめすかしたり誤魔化してとってはいない。
ここら辺はね、真面目ですよ、俺は。

薬草20、ちゃんと束にしたのも数えなおしてきっちり数がそろっているのを確認してから提出用に出されている皿の上に乗せる。

「ありがとうございます」

受付嬢が受け取って再度確認するのを待つ。お互いに確認することで後顧の憂いを断つのも大事だ。

「はい、ちょうど20ですね。ギルドカードを確認します。あら、初クエスト達成ですね。おめでとうございます」

ここにきての初めての笑顔を向けられて俺もまんざらじゃなく嬉しさが浮かぶ。
うん、笑顔の安売りも良いけどこういうここぞってのも良いな。
ご機嫌にそんなことを思う。そんな俺を他所に受付嬢のお姉さんは手を動かして仕事している。ギルドカードを水晶の上に照らすように滑らせてそこになにやら書き込むような動作をしてそれがギルドカードに書き込まれていっているみたいだ。
たぶん、小さいけど魔力を使った魔法に近い。生活魔法の一つに区分される魔法かもしれない。

「達成でのクエスト報酬は薬草の場合発生しません。ただギルドが買い取りさせていただくことでお金を支払うことができますが、依頼されますか?」

「はい」

「では10束一つで50デナリスですがよろしいですか?不満の場合はお取引は成立しません。」

「それで構いません。よろしくお願いします」

「では100デナリスとなります」

銅貨10枚を皿に入れて窓口に出される。それを俺は受け取った。

「テグリスさんの活躍を期待しています。ありがとうございました」

俺の取引は終わり頭を下げる受付嬢に俺も頭を下げ窓口に並ぶ列の最前から外れ後列に並ぶ人間にその位置を譲る。まあ、ダガーなのだけど。
ダガーも同じような手続きを受けている。それを一瞥して受付から少し離れた人の邪魔にならない場所で俺は握っていた銅貨を手のひらを開いて確認する。

100デナリス。銅貨十枚。つまり銅貨一枚が10デナリスで日本円に当てはめるのもなんだが無理やり当てはめるならここらの相場だと100円くらいだろう。
この数日この街の相場でだが飲み物を買ったとき銅貨一枚だったのを思い浮かべそのくらいかとあたりをつける。ただそれもこの街での相場で流通の発達した日本のようにどこでもある程度安定した物価でどこでも変動がないかとなると自信がないためとりあえずの目安とそう思うことにする。
つまり薬草一つ50円ね。安いね。一番簡単なクエストだし、効果も切り傷用と限定的っぽいから仕方ないのかもしれないが

「初報酬は1000円相当か…。」

テンション上がらん。
宿代でも最低120デナリスだぞ、こら。って怒る意味も不明だが。

鱗を打って得た金貨の入った財布代わりの小袋に銅貨をしまう。

「ダガーもクエスト達成と買い取り済んだのか」

こくりと頷いたダガーに俺も頷いて

「じゃあ用も済んだしギルドを出て今日の宿でも探すか」

ギルドの出口へと足を向ける。
歩き出した俺の後にダガーが続く足音を聞いてそのまま出口のドアを開いて外に出る。

俺はここに来る前に事前に買い求めたストールほどのマフラーで再度口元を隠して周囲を軽く確認した。

見慣れた街並みは普段どおりで俺たちを見ているものも立ち止まるものもいない。
それを確認して安息の息を吐く。気にしすぎか。

だが、普段どおりの風景だが一方方向へと進む人の数は多い。理由はわかっている。


「おいマジかよ、この公爵領が攻撃を受けたって」

「ああ、だから城門に行けばわかるって」

「ここ襲うってどんな馬鹿だよ」

「なんでもモンスターか人かもわかっていないらしい」

「そうなのか?」

「ああ」

「ただすごい魔法を展開したように岩がびっしり街道を塞いでるとさ」

「俺聞いたんだけど竜のブレスじゃないかってっ」

「「「……」」」

「「「そんなわけないだろ。領主様じゃあるまいし」」」


そうですよー、竜がそんなことしないです。はい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『ラズーン』第二部

segakiyui
ファンタジー
謎を秘めた美貌の付き人アシャとともに、統合府ラズーンへのユーノの旅は続く。様々な国、様々な生き物に出逢ううち、少しずつ気持ちが開いていくのだが、アシャへの揺れる恋心は行き場をなくしたまま。一方アシャも見る見るユーノに引き寄せられていく自分に戸惑う。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

虹の向こうへ

もりえつりんご
ファンタジー
空の神が創り守る、三種の人間が住まう世界にて。 智慧の種族と呼ばれる心魔の少年・透火(トウカ)は、幼い頃に第一王子・芝蘭(シラン)に助けられ、その恩返しをするべく、従者として働く日々を送っていた。 しかしそれも、透火が種族を代表するヒト「基音」となり、世界と種族の繁栄を維持する「空の神」候補であると判明するまでのこと。 かつて、種族戦争に敗れ、衰退を辿る珠魔の代表・占音(センネ)と、第四の種族「銀の守護者」のハーク。 二人は、穢れていくこの世界を救うべく、相反する目的の元、透火と芝蘭に接触する。 芝蘭のために「基音」の立場すら利用する透火と、透火との時間を守るために「基音」や「空の神」誕生に消極的な芝蘭は、王位継承や種族関係の変化と共に、すれ違っていく。 それぞれの願いと思いを抱えて、透火、芝蘭、占音、ハークの四人は、衝突し、理解し、共有し、拒絶を繰り返して、一つの世界を紡いでいく。 そう、これは、誰かと生きる意味を考えるハイファンタジー。 ーーーーーーーーー  これは、絶望と希望に翻弄されながらも、「自分」とは何かを知っていく少年と、少年の周囲にいる思慮深い人々との関係の変化、そして、世界と個人との結びつきを描いたメリーバッドエンドな物語です。   ※文体は硬派、修飾が多いです。  物語自体はRPGのような世界観・設定で作られています。​ ※第1部全3章までを順次公開しています。 ※第2部は2019年5月現在、第1章第4話以降を執筆中です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

終焉の謳い手~破壊の騎士と旋律の戦姫~

柚月 ひなた
ファンタジー
理想郷≪アルカディア≫と名付けられた世界。 世界は紛争や魔獣の出現など、多くの問題を抱え混沌としていた。 そんな世界で、破壊の力を宿す騎士ルーカスは、旋律の戦姫イリアと出会う。 彼女は歌で魔術の奇跡を体現する詠唱士≪コラール≫。過去にルーカスを絶望から救った恩人だ。 だが、再会したイリアは記憶喪失でルーカスを覚えていなかった。 原因は呪詛。記憶がない不安と呪詛に苦しむ彼女にルーカスは「この名に懸けて誓おう。君を助け、君の力になると——」と、騎士の誓いを贈り奮い立つ。 かくして、ルーカスとイリアは仲間達と共に様々な問題と陰謀に立ち向かって行くが、やがて逃れ得ぬ宿命を知り、選択を迫られる。 何を救う為、何を犠牲にするのか——。 これは剣と魔法、歌と愛で紡ぐ、終焉と救済の物語。 ダークでスイートなバトルロマンスファンタジー、開幕。

処理中です...