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イレネに連れて行かれた場所は距離にするとややあった。街の外の郊外。つまりは城壁を越えた外側にその建物はひっそりとあり、馬車で行くのが本来ならだとうな距離で、それを一時間以上かかって二人は徒歩で赴いた。
城壁は内と外で空間を区切ったように景色を分断していた。
防衛のある安全な城壁内部は狭い敷地内に建物が所狭しと建てられている。
建物も平屋よりも何階建てと言うような背の高い建物もあり、アパートメントのように
住む居住も狭い。対して城壁の外に出てしまえば、新緑が目に入る。
ゆとりある土地は畑も草原もあり、街道は大きく、細道に分かれて時々、人の居住する建物が見えた。
土地に余裕があるから平屋もある。
その中で森の入り口近くにあるその建物は馬車で街道を通る人間には見落としがちな位置に
ひっそりと佇んでいる。
家の作りはレンガか石なのかしっかりとした塔もあるちょっとした城砦にも見える
貴族の別荘のような可愛らしい建物である。
その城門にさしかかりベルを鳴らすとその家の家人が応対し(たぶん庭師)
主人へと来客を知らせに行く。
走っていく使用人を尻目に二人はゆっくりと歩いて庭を眺めながら建物へと近づいていく。
庭に隠れた遠くには馬小屋も見えるので馬のいななきも聞こえる。
貴族でなくともジェントル、騎士階級か、それなりの人物のすまいなのだろうか。
華美たところはないがセンスのいいガーディナーにプランターが目に入る。
ハーブや薬草も目に付く。
この家の女主人の趣味か、コックが植えさせているのか。
「ようこそ、いらっしゃられました。イレネ様、それにレン様。主人がお待ちです」
執事の変わりにパーラーメイドが二人を屋敷に招きいれる。
これはいよいよ現役の貴族ではなく、現役を退いた引退組みの隠れ家か。
そうレンは当たりをつけて居住まいを正す。
先を案内するメイドにつづき、イレネ、レンが屋敷の内部に入る。
「ああ、よくきてくれたね。お二人さん」
案内されたのは応接室ほど堅苦しくないパーラー。サンルームも兼ねているのか
日の光も入る場所にそれは設置されていて窓を多く取り入れたテラスも付いたゆったり空間に
ビリヤードダイヤ、チェスの盤もうかがえる。
そこにソファに座った貴族風のエルフがいた。エルフと言うのはその耳を見れば一目瞭然である。
彼は狐目のつり目な目を糸のように細めている。組んでいた足を広げて立ち上がって
二人を部屋に向いいれた。
「ジェン、お茶を」
案内してきたメイドに次の指示を出して、二人にはゆったりとした席に案内する。
それから庭に咲き乱れる緑を愛しげに見つめる男はエルフ特有の長髪を後ろで一本にくくり
糸目の瞳を僅かに開いて、レンを見た。
「君の話はかねがね、イレネから聞いているよ。僕はマージェン。イレネの今は後見の一人だ」
イレネを自分の脇に誘導した貴族じみた仕草を見せる男はそう自分を自己紹介する。
仕草も相俟って悠久を生きる気品溢れる紳士に見える。
エルフとは癖はあるが、皆このように美しく気高いのだろうか。
「マージェン様はかつては国一番の軍師として国の賓客だった方なの。長い時間を生きるエルフ様で、知識も他に類を見ないほど。最近妥当してきたどこかの偽エルフとは品格も育ちもまったく違う真のエルフ様なのよ」
イレネも誇らしく彼のことを紹介した。しかし偽エルフとはなんだろうか?
「こらイレネ、褒めすぎだぞ。…それよりレン君が困っているだろう。あんな下賎なエルフともいえないものと比較しないでくれたまえ。君も知らないだろう。最近、賢者だと触れ回っている恥知らずのエルフ、シャルル・ローレンスなど…」
シャルル・ローレンス。ああ、あの奇術師か。かつては勇者の右腕として
今はさすらいの魔法使い。奇跡を起す賢者。
彼はエルフなのか。
レンは妙なところで納得する。口ぶりからするに二人は彼を知っているらしい。
知り合いらしいが、友好的ではないようだ。
「ああ、お茶がきた。面白くもない、まずい話はこれまでにして楽しい話をしよう。
僕は歓迎するよ。レン・アスフォード君。君がイレネの協力者になってくれることを」
※レンの苗字決めてなかった。なので即席に作りました。前にあったらごめんなさい。
イレネに連れて行かれた場所は距離にするとややあった。街の外の郊外。つまりは城壁を越えた外側にその建物はひっそりとあり、馬車で行くのが本来ならだとうな距離で、それを一時間以上かかって二人は徒歩で赴いた。
城壁は内と外で空間を区切ったように景色を分断していた。
防衛のある安全な城壁内部は狭い敷地内に建物が所狭しと建てられている。
建物も平屋よりも何階建てと言うような背の高い建物もあり、アパートメントのように
住む居住も狭い。対して城壁の外に出てしまえば、新緑が目に入る。
ゆとりある土地は畑も草原もあり、街道は大きく、細道に分かれて時々、人の居住する建物が見えた。
土地に余裕があるから平屋もある。
その中で森の入り口近くにあるその建物は馬車で街道を通る人間には見落としがちな位置に
ひっそりと佇んでいる。
家の作りはレンガか石なのかしっかりとした塔もあるちょっとした城砦にも見える
貴族の別荘のような可愛らしい建物である。
その城門にさしかかりベルを鳴らすとその家の家人が応対し(たぶん庭師)
主人へと来客を知らせに行く。
走っていく使用人を尻目に二人はゆっくりと歩いて庭を眺めながら建物へと近づいていく。
庭に隠れた遠くには馬小屋も見えるので馬のいななきも聞こえる。
貴族でなくともジェントル、騎士階級か、それなりの人物のすまいなのだろうか。
華美たところはないがセンスのいいガーディナーにプランターが目に入る。
ハーブや薬草も目に付く。
この家の女主人の趣味か、コックが植えさせているのか。
「ようこそ、いらっしゃられました。イレネ様、それにレン様。主人がお待ちです」
執事の変わりにパーラーメイドが二人を屋敷に招きいれる。
これはいよいよ現役の貴族ではなく、現役を退いた引退組みの隠れ家か。
そうレンは当たりをつけて居住まいを正す。
先を案内するメイドにつづき、イレネ、レンが屋敷の内部に入る。
「ああ、よくきてくれたね。お二人さん」
案内されたのは応接室ほど堅苦しくないパーラー。サンルームも兼ねているのか
日の光も入る場所にそれは設置されていて窓を多く取り入れたテラスも付いたゆったり空間に
ビリヤードダイヤ、チェスの盤もうかがえる。
そこにソファに座った貴族風のエルフがいた。エルフと言うのはその耳を見れば一目瞭然である。
彼は狐目のつり目な目を糸のように細めている。組んでいた足を広げて立ち上がって
二人を部屋に向いいれた。
「ジェン、お茶を」
案内してきたメイドに次の指示を出して、二人にはゆったりとした席に案内する。
それから庭に咲き乱れる緑を愛しげに見つめる男はエルフ特有の長髪を後ろで一本にくくり
糸目の瞳を僅かに開いて、レンを見た。
「君の話はかねがね、イレネから聞いているよ。僕はマージェン。イレネの今は後見の一人だ」
イレネを自分の脇に誘導した貴族じみた仕草を見せる男はそう自分を自己紹介する。
仕草も相俟って悠久を生きる気品溢れる紳士に見える。
エルフとは癖はあるが、皆このように美しく気高いのだろうか。
「マージェン様はかつては国一番の軍師として国の賓客だった方なの。長い時間を生きるエルフ様で、知識も他に類を見ないほど。最近妥当してきたどこかの偽エルフとは品格も育ちもまったく違う真のエルフ様なのよ」
イレネも誇らしく彼のことを紹介した。しかし偽エルフとはなんだろうか?
「こらイレネ、褒めすぎだぞ。…それよりレン君が困っているだろう。あんな下賎なエルフともいえないものと比較しないでくれたまえ。君も知らないだろう。最近、賢者だと触れ回っている恥知らずのエルフ、シャルル・ローレンスなど…」
シャルル・ローレンス。ああ、あの奇術師か。かつては勇者の右腕として
今はさすらいの魔法使い。奇跡を起す賢者。
彼はエルフなのか。
レンは妙なところで納得する。口ぶりからするに二人は彼を知っているらしい。
知り合いらしいが、友好的ではないようだ。
「ああ、お茶がきた。面白くもない、まずい話はこれまでにして楽しい話をしよう。
僕は歓迎するよ。レン・アスフォード君。君がイレネの協力者になってくれることを」
※レンの苗字決めてなかった。なので即席に作りました。前にあったらごめんなさい。
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