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ロミオとジュリエット
ロザリオを持つジュリエット
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貴族の一人に、ジュリエットという名前の娘がいました。
彼女の家は神を信仰をしており、ジュリエットは十字架のロザリオを持たされていました。
とある舞踏会でのこと、ジュリエットは一人の男性と恋に落ちました。
ところが、その男はジュリエットの家系が毛嫌い対立していた一族の息子だったのです。
彼らの正体は蝙蝠の怪物、ヴァンパイアでした。
「お前はあの化け物に騙されているのよ。あなたの血を吸うことだけが目的に違いないわ。」
互いの両親が二人の恋を応援してくれるはずがありません。
ジュリエットはバルコニーに立って夜空を見上げました。
「あぁ、どうしてあなたはヴァンパイアなの。」
神に信仰していたジュリエットは思い悩んでおりました。
彼がヴァンパイアでなければいいのに。ヴァンパイアであることをやめてくれたらいいのに。
彼が化けていれば、彼がヴァンパイアであることは隠したまま傍にいられるというのに。
親を騙してでも彼と一緒にいたいという気持ち。
もはやそれは神への裏切りも同然だと気づいたジュリエットは、それならばと願いました。
「私を本当に愛すると誓ってくださるのなら、このロザリオを投げ捨てでもあなたのものになるというのに。」
陰に隠れて様子を見ていたヴァンパイアの彼は、ジュリエットの思いのたけを聞いて心打たれていました。
「ジュリエット。君がそこまで思っていてくれただなんて。もはや私は天罰を受けてもかまわない。あなたの心が手に入るならば。」
いてもたってもいられずに、彼は羽を広げてジュリエットのもとへと降りたちました。
彼女は初めて人の姿でない彼の本当の姿を見ましたが、嫌悪することなくすぐに彼を受け入れました。
こうして二人は愛を語り合いながら一時の逢瀬を交わしたのでした。
「あなた様が望むのであれば、この私の血はいつでも捧げましょう。」
「ジュリエット。君の肌を傷つけるのは、君の血を汚すなんてことはできないよ。」
「あなたにかまれるならば、私は本望ですのに。」
それでも彼はジュリエットの血を吸うことを拒みました。
いつまでも、清い彼女でいてほしかった。太陽の登る場所にいてほしかったのでした。
しかしこれをキッカケに彼は一族から追放され、ジュリエットも他の者との結婚を迫られてしまいます。
彼女は家から解放されるためにと、助言を受けて仮死状態になる薬を飲みました。
そうとは知らず、葬儀に出されることになった彼女のもとへと彼は駆けつけました。
「こんなことになるならば、あなたの血を吸っていれば良かった。」
死んでしまっては遅すぎたのです。彼は、これが罪深い自分への神の天罰なのだろうと思いました。
そうして彼女を抱きながら、自分を焼き尽くす朝日を待ちました。
共にあの世で出会えることを信じながら、彼は彼女の首筋に歯をたてました。それが、彼女の願いでもあったからです。
「…あなた様は。」
朝日が昇ろうとしていた時、ジュリエットは目を覚ましました。
ジュリエットが生きていたことに歓喜した彼は彼女を抱きしめました。
目覚めたばかりのジュリエットも、彼を抱きしめ返します。
「私の血を、すってくださったのですね。これで、共に過ごせます。」
異変に気が付いた家の者たちが訪れたときには、すでに二人は消えていました。
朝日の眩しい光が、残されたロザリオを照らしていました。
その夜から、二匹の蝙蝠が踊るように仲睦まじく夜空を飛ぶ姿がありました。
彼女の家は神を信仰をしており、ジュリエットは十字架のロザリオを持たされていました。
とある舞踏会でのこと、ジュリエットは一人の男性と恋に落ちました。
ところが、その男はジュリエットの家系が毛嫌い対立していた一族の息子だったのです。
彼らの正体は蝙蝠の怪物、ヴァンパイアでした。
「お前はあの化け物に騙されているのよ。あなたの血を吸うことだけが目的に違いないわ。」
互いの両親が二人の恋を応援してくれるはずがありません。
ジュリエットはバルコニーに立って夜空を見上げました。
「あぁ、どうしてあなたはヴァンパイアなの。」
神に信仰していたジュリエットは思い悩んでおりました。
彼がヴァンパイアでなければいいのに。ヴァンパイアであることをやめてくれたらいいのに。
彼が化けていれば、彼がヴァンパイアであることは隠したまま傍にいられるというのに。
親を騙してでも彼と一緒にいたいという気持ち。
もはやそれは神への裏切りも同然だと気づいたジュリエットは、それならばと願いました。
「私を本当に愛すると誓ってくださるのなら、このロザリオを投げ捨てでもあなたのものになるというのに。」
陰に隠れて様子を見ていたヴァンパイアの彼は、ジュリエットの思いのたけを聞いて心打たれていました。
「ジュリエット。君がそこまで思っていてくれただなんて。もはや私は天罰を受けてもかまわない。あなたの心が手に入るならば。」
いてもたってもいられずに、彼は羽を広げてジュリエットのもとへと降りたちました。
彼女は初めて人の姿でない彼の本当の姿を見ましたが、嫌悪することなくすぐに彼を受け入れました。
こうして二人は愛を語り合いながら一時の逢瀬を交わしたのでした。
「あなた様が望むのであれば、この私の血はいつでも捧げましょう。」
「ジュリエット。君の肌を傷つけるのは、君の血を汚すなんてことはできないよ。」
「あなたにかまれるならば、私は本望ですのに。」
それでも彼はジュリエットの血を吸うことを拒みました。
いつまでも、清い彼女でいてほしかった。太陽の登る場所にいてほしかったのでした。
しかしこれをキッカケに彼は一族から追放され、ジュリエットも他の者との結婚を迫られてしまいます。
彼女は家から解放されるためにと、助言を受けて仮死状態になる薬を飲みました。
そうとは知らず、葬儀に出されることになった彼女のもとへと彼は駆けつけました。
「こんなことになるならば、あなたの血を吸っていれば良かった。」
死んでしまっては遅すぎたのです。彼は、これが罪深い自分への神の天罰なのだろうと思いました。
そうして彼女を抱きながら、自分を焼き尽くす朝日を待ちました。
共にあの世で出会えることを信じながら、彼は彼女の首筋に歯をたてました。それが、彼女の願いでもあったからです。
「…あなた様は。」
朝日が昇ろうとしていた時、ジュリエットは目を覚ましました。
ジュリエットが生きていたことに歓喜した彼は彼女を抱きしめました。
目覚めたばかりのジュリエットも、彼を抱きしめ返します。
「私の血を、すってくださったのですね。これで、共に過ごせます。」
異変に気が付いた家の者たちが訪れたときには、すでに二人は消えていました。
朝日の眩しい光が、残されたロザリオを照らしていました。
その夜から、二匹の蝙蝠が踊るように仲睦まじく夜空を飛ぶ姿がありました。
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