上 下
13 / 20

第13話 面白い

しおりを挟む
※※イーサン視点※※

今日も俺 イーサンは、ミルローズさんを実験室へ呼び出した。 
最近 ちょくちょく呼び出しては、彼女が受け取った魔力を活用する方法を模索している。

彼女が近くに居てくれると、体が軽くなる感覚があり、体調がすこぶるよい。

魔術師の塔で働く魔術師は、基本的に魔力量が多い。
各々制御しているものの、勝手に余分な魔力を取り去ってくれるのであれば、垂れ流してもいいわけで……
もっと長い時間、俺の傍に居てくれないだろうかと考えてしまう。

初めて彼女を実験室へ招いた時、彼女はなんと俺と二人きりであるにも関わらず、ソファーでスヤスヤ眠ってしまった。
普通、寝るか?
何とか目を開けて堪えるだろ?

受け取った俺の魔力が余程気持ち良かったようだ。
面談の時も『ほんわり温かい』と言ってたしな。

ミルローズさんは食堂の裏方をしている。
にも関わらず、最近 彼女の周りをウロウロするヤツが出てきた。
彼女の能力に気づいたのか?
それとも何となく心地よくて引き寄せられるのか?

まぁ俺も、周りをウロウロする一人なわけだが……

はぁー、どうするかな。
彼女が直接、魔術師と接する職場になったら、魔力が強ければ強いほど、彼女の能力に気づき、惹きつけられるのだろう。

マズイな。
せっかく俺がみつけたのに。
面白い彼女を奪われたくないな。

彼女は魔石に魔力を込められる魔術師を探している。

自分が余った魔力を勝手に受け取り、熱として放出してる事実を知り、『もったいない』と言った彼女。

もったいない。
確かにな。
俺は、彼女が受け取った魔力を活用できないか考えることにした。

活用できれば、魔石に移せれば、ミルローズさんは喜んでくれるはず。

俺の傍にいれば、俺の有り余る魔力を取り込んで、自分で魔石に魔力を移せるとなれば、故郷マドニーへ帰る必要もないよな。
その魔石を送ればいいわけだ。
俺が転移させてやってもいい。


※※ドリュー視点※※

愛犬フィンを連れて公園を散歩していたら、フィンが彼女をみつけた。

すごい勢いで引っ張られた先には、美しい二人の女性がいた。

僕は不覚にも見惚れてしまい、フィンがそのうちの一人に飛びつくのを防げなかった。

美しい彼女たちは魔術師の塔で働いているそうだ。
特に、ミルクティー色のふわふわした髪の子。優しげな見た目で、僕の理想そのもの。
犬好きなのもいい。

塔で採用されたということは、魔術師にとって好ましい存在、魔術にある一定以上の耐性があるということ。

来年からは僕も魔術師の塔で働くことが決まっている。

現時点で知り合えるなんて、僕は強運だ。

僕は必死に次の約束を取りつけようとした。
名前を聞き出そうとした。
うまくはぐらかされたけれど、フィンを柔らかな目でみつめ、フィンに抱きついて幸せそうにしていたから、もしかしたら……

そして次の週も、フィンに引っ張られ公園へ向かうと、『いた!』彼女だ。

彼女は、ミルローズさん。
友達は、ナタリアさん。
今回は名前を教えてもらい、少し話すこともできた。

ナタリアさんに『下の弟みたい』と言われ、ムッとした。
二人いる弟のうち下の弟って、あんまりだ。
そんなに年下に見えるのか?
確かに年下なのかもしれないが、そう変わらないはずだ。
弟枠に入れられては堪らない。

彼女たちがフィンを撫でる姿を見て、目の保養だ~と癒されていると、兄さんがやってきた。

僕の兄さんは優秀な魔術師だ。
魔術師の塔で働いてるんだが、最近やらかしたらしく、1ヶ月の謹慎中らしい。

謹慎中に公園?
バレたら、マズイのでは?
僕たちに少し絡んだ後、兄さんはフィンを撫でて去って行った。

キチッとしていれば、かっこいい兄さんなのに、前髪が長すぎて目元が隠れていた。

彼女らが兄さんに興味を持ったら、僕に勝ち目はないので、良かったのか。

ミルローズさんとナタリアさんが帰って行った後、なんだか体が軽くなった気がした。
兄さんが何かしてくれた?

最近 急に魔力量が上がり、制御するのが大変になっていたんだ。
学校の先生にも指摘されていて、フィンを散歩しながら、いろいろ試していた。
フィンは魔力耐性があるし、フィンの傍なら僕もリラックスできる。

でも、すぐにうまく制御できれば苦労しない。
まだまだ調整が必要で……今日はうまく制御できているってことか?

彼女たちといると、調子がいいんだよね。
また会えるといいなぁ。

今日会えたのもフィンのお手柄だ。
ご褒美にオヤツをやろう!


※※※マウル視点※※※

俺には、付き合って一年半の彼女がいた。

先日、彼女が頬を染めて、俺の耳元で囁いた。
「マウル、私と結婚して。そして私の故郷タリアに来て欲しいの」

彼女のことは好きだったし、プロポーズは嬉しかった。
嬉しかったのだが、俺は魔術師を多く輩出しているガートン家の嫡男で、王都を離れることなど考えたこともなかった。

「君の気持ちは嬉しいが、ごめん、タリアには行けない」と答えた俺に、
「わかった。じゃあ、いいわ」と去っていった彼女。

次の日から、彼女は別の魔術師たちに色目を使うようになった。
なんだそれはっ!!

頭にきた俺は、彼女を驚かせようと、彼女の職場にイタズラを仕掛けた。
魔石や幻影を用いたイタズラで、少しやり過ぎたようだ。
一ヶ月の謹慎を言い渡されてしまった。

まぁ、やってしまったことは仕方がない。
でもな~、俺の魔術が思いどおりにならなかったんだよね。
本来ならオーブンが加熱して、炎の幻影が見えた後、雪が舞って、オーブンが冷えて終了のはずだった。
雪が舞う前に、収まったのはなぜなんだ?

謹慎は退屈で、ちょっと公園をブラプラしたら、弟に会った。飼い犬のフィンとキレイな女の子が二人もいる。
ドリューにも春が?

ああ、弟も来年には魔術師の塔に来るんだった。学校でもモテてるんだろうな。

いいなぁ~、兄ちゃんはフラれたばかりなのに。

いや、ちょっと待て。
この二人、食堂にいなかったか?
イタズラの確認した時に、オーブン近くにいた子たちだ。

ふう~ん、面白い。

















    
しおりを挟む

処理中です...