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第6話 街で買い物

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今日はパン屋の定休日。

ノアの通う街の学校が休みの日を定休日にしているそうだ。

リュカに買い物へ連れていってもらう。

今 着ている服は、マーサおばさんが譲ってくれた。

もともとは白い服を身に付けていた私。
白だとすぐに汚してしまうだろうし、もっと動きやすい服がいるだろうと、私でも着られそうな服を探してくれた。

サイズが合わなくなったが、痩せたらまた着るかもしれないと棚にとっておいたらしい。

私には少しサイズが大きいが、ストンとしたデザインのワンピースなので、おかしくはない。

「サイズが大丈夫なら、そのまま使って返さなくていいからね。
とっておいても、もう着ることはなさそうだし…」
マーサおばさん、優しい。

替えの服など持っていない私。
おばさんの好意はすごくありがたい。

今日は普段着2枚、歩きやすい靴を1足。
下着が2セット。

予算が足りるようなら化粧品も欲しい。

髪をとめるバレッタ、もしくはリボンも買えたらいいな。
ずっとヒモでまとめるのもね…さすがに。

まだまだ欲しいものはあるけれど、働いて余裕ができたら、少しずつ揃えていけばいい。

***

リュカに連れられて、

まずは、衣料品店へ。

昨日、パン屋へ来たお客さんやここに着くまでにすれ違った女性の服を観察していたが、同世代と思われる女性たちは、ワンピースを着ている人が多かった。

今回は予算が足りるのであれば、ワンピースを2枚買いたい。

オフホワイトやクリーム色のワンピースにひかれ、鏡の前で体に合わせてみる。

「うん、よく似合う。」

後ろから、鏡にうつる私を見つめるリュカが誉めてくれる。

誉められたのが嬉しくて…
これにしよう!
会計へ向かおうとして、ふと考える。

私の普段着は、仕事着でもある。
上にエプロンをつけたとしても、汚れることもあるだろう。
白はやめよう。

今 着ているのはグリーン系だから…
ピンク系とブルー系のワンピースにした。

仕事でもエプロンの下に着ている服が見えるので、派手すぎず落ち着いていて、キレイな色を選んだつもりだ。

次は店の奥に並んでいる下着を選びたいな~と思い、モジモジしていたら、

「俺は少し出てくる。すぐ戻るから買い終わったらこの店で待ってて。」

リュカが店を出ていく。

気を利かせてくれたのかな。
彼がいる前で下着を買う勇気はないので、助かった。

買い物を済ませ、店に置かれたイスで待たせてもらう。


カランカラン

彼が戻ってきた。
荷物を持つ私を見て、

「荷物、持つよ。」

買った服と下着の入った袋を、リュカが私から受け取ろうと手を伸ばした。

気持ちはありがたいが、軽いものだ。
それに下着も入っている。

「ありがとう、でもこれは自分で持つよ。」

そう言いながら私の顔は赤くなっていたと思う。
下着が入ってるからね。
なんか変に意識してしまって。

二人で店を出て、街を歩いていると…

「これ、やるから使ってくれ。」

紙袋を目の前につき出された。

「ん? なに?」

袋をあけてみると、シルバーの髪飾りが入っていた。
ユリの模様が入った髪飾り。

なんて素敵なの~。

「やるって…、こんな高そうなモノ。
本当に私がもらっていいの?」

「ああ。リリーはパン屋の看板娘だからな。今はヒモで髪をまとめてるだろ?
そのままでも魅力的だけど…
この髪飾りはリリーにピッタリだろ?」

「ありがとう。本当に嬉しい!!
私、頑張って働くから。」

パチンッ

すぐに髪をまとめたヒモの上から、髪飾りをつけてみる。

「リュカ、どうかな?」

「……かわいいっ、いや、よく似合ってる。」


リリーの顔が、フニッと緩む。
ほんわかと柔らかい笑顔。

リリーのその笑顔はなんともかわいらしく、その笑顔を見た人々の心が、不思議とほっこり暖かくなる。


「あー、あのお嬢ちゃんの笑顔、なごむな~。」
つぶやいたおじさんが、奥さんと思わしきおばさんに引っ張られていく。

「イタッ、強く引っ張ったら痛いだろ。」

「あんたが若い娘にデレデレするからだよ。さぁー、しっかり働いとくれ。」

「あれは、リュカじゃないか?ということは、あの娘が噂の店員さんかー。確かにかわいいなぁ。」

どこからともなく街の人たちの声が聞こえる。
みんなリリーにデレデレである。


パン屋でさまざまな女性と接しているリュカ。
女性には慣れてるほうだと思う。
そんな彼も、リリーの笑顔にはーー
やられてしまった。

はぁー。
これでますますパン屋はお客でごった返すな…間違いない。

そう確信するリュカであった。


次は、靴店へ。

歩きやすそうなぺたんこ靴を探す。

イスに座り、気になった靴を履いてみようとしたが、サイズが合わず履けなかった。
大きいサイズを取りに行こうと、イスから立ち上がる。

「俺がとってくる。」

スタスタとリュカがワンサイズ大きな靴を取ってきてくれた。

「これはどうでしょうか?お姫様」

跪いたリュカが、靴を私の足元へ差し出し、おどけてみせる。

カァー、頬が火照る。
物語のお姫様になったみたい。

そんなことをイケメンにされたら…
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。

これって…この状態で履くの?

「あっ、あの~リュカ?」

「お姫様、どうぞ!」

きっと私の顔はーー真っ赤だろう。
おずおずと履いてみると、ピッタリ。

リュカが持ってきてくれた靴をそのまま購入する。


最後に、化粧品店へ。

うーん、肌にパタパタはたく粉は高い。
予算が足りない。

今の私の肌は、ツルツルすべすべ。
シミひとつない若々しい肌。

唇に塗る紅で、一番安価なものをほんの少しだけ買うことにした。

店員さんが、紅を唇にのせてくれる。

「キレイだ。」
惚けるような顔で、そんな言葉を。

リュカはずるい。








    
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