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第22話 やっぱり私は……

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康生のことを許せるのか。
正直なところ、私は彼に裏切られたことを忘れることはできないと思う。
それに今後は信用できるのか、女性関係については信用できないと思う。

『二度あることは三度ある』
結婚前から数えると、既に三度の裏切りを確認している。
二人の間に子供はいない。
私の意志で選択ができる状況だ。

私は仕事を続けており、結婚前は一人暮らしをしていた。
彼と別れたとしても、暮らしていけるだろう。

彼は「別れたくない。」と涙を流した。
再度、確認しても答えは変わらなかった。
それに、夫婦と言うより共同生活する相手として考えると、康生はとてもよい相手なのだ。

私は特に悪いこと、秘密にしたいことはしていないが、彼は私の行動に干渉しない。
生活費は半分負担で済み、家事も分担してくれるので楽だ。

私よりも彼のほうがキレイ好き。
私の掃除に不満はあるだろうが、それを口に出したことは一度もなく、気になるところは勝手に自分で掃除をしてくれる。

買い物も休日に二人で出かけ、大量にまとめ買い。
荷物は重いほうを自然と彼が持ってくれる。

人それぞれ、いろいろな考え方があると思う。
だが、このままの関係もいいかもしれないと思ってしまうのだ。

とりあえずお金の管理をさせてもらうことにした。
まずは、彼が一ヶ月に必要な金額を聞いた。
そして、彼が申告した金額をお小遣いとして渡す。私も同額を小遣いとした。
残りは一緒に管理し、余ったものは貯蓄にまわす。

お小遣い制にしようと提案した時に、彼は反対しなかったし、必要だと申告した金額は控えめな額だった。
きっと私への負い目があったのだろう。

結婚当初の約束
『生活費として決まった金額以外は自由だけれど、貯金はしてね。』
彼はこの時まで貯金していなかった。
私との約束は守られていなかったわけだ。

稼いだものは使い果たしていたのだ。
飲みたいだけ飲めるし、遊びたいだけ遊べたよね。


匿名の手紙は、今でも時々届く。
宛先が手書きだったのは、最初に届いた一通だけ。
二通めからは、パソコンで打って印刷した紙を切ってのりで貼ってあった。
宛名が『三浦 愛美様』になっている。
まなみの『み』が間違っている。
手書きでは『三浦 愛実様』と正しく書いてあったのに。
名前くらいちゃんと書いて欲しいと、地味にムカつく。

しばらく手紙が届かないと、気になってポストを見に行ってしまう。
何か具体的に書かれているのではと期待してしまうのだ。
私は少し変わっているのかな。
彼にも心当たりがないか確認したが、手紙の送り主はわからないままだ。

考えても仕方がないことで、イライラするのもバカらしくなり、手紙が届いた時、私は美味しいものを食べると決めた。

自分だけプリンを買ったり…プチ贅沢。
それで機嫌がなおるのならば、かわいいものだと思う。

今はまだ気持ちの整理がつかないが、そのうち笑い話にできる日がくるのだろうか。
棚1段に少しずつ増えていく手紙。
今まで届いた手紙の束を見つめながら思う。 

どんどん手紙が増えていく。
いつまで続くのだろう。
私たちが別れるまで続くのか?

手紙の送り主とは、直接、話をしてみたい気もするのだが、きっと相手を特定できないし、叶うことはないのだろう。

でも、それでいい。
危ない人だと怖いしね。

2LDKのアパートでの生活。
彼好みのカラフルな家具が置かれている。
私が結婚前に暮らしていた部屋よりも物が多く、でもきっちり片付いている。
私は全て隠す収納を好むが、彼は見せる収納と隠す収納を併用している。

康生との生活は、あまり気を使うこともなく、楽しいものだ。
二人でよくドライブへ出かけては、キレイな景色や美味しい料理を楽しむ。
私はペーパードライバーだが、彼は運転が好きなので、車であちこち連れて行ってくれる。

温泉にも二人でよく出かけている。
私は温泉が好きだが、近くにはないので、康生が車で連れていってくれるのは嬉しい。
温泉では、それぞれ男湯、女湯に別れる。
家族風呂へ入りたいとは思わないし、昔から一度も一緒に入ったことはない。

結婚当初から部屋も別々だ。
私は隣に誰かいるとなかなか眠れない。
寝不足では、疲れが残り、しっかりと働けないので、初めから分けている。

なんだろう。
既に新婚夫婦らしくない気がするな。
初めから、友人の延長みたいな感じだったから仕方がないんだろうか。

私たちはお互いに、お互いのことが好きなのだろうか。
ただの友人? 一緒にいて楽なだけ?

お金を私が管理するようになり、少しずつ貯蓄も増えている。
新たに作った二人のお金を管理する為の通帳。
通帳の金額が増えていくのは、やはり嬉しく、毎月ATMで書き込みをしては、ホクホクしている。

もう少し余裕が出てきたら、子供や家をどうするか、そのうち話し合ったほうがいいのだろう。
最近、両親がそわそわしている。
もしや孫を期待されている?
デリケートな問題なので、聞くに聞けないようだ。
彼も私も子供はあまり得意ではないのだ。
自分の子供だと、また違うのかもしれないんだけど、二人だけの生活もいいのかな。

きっと私は、今のまま康生との人生を歩む。
もちろん、彼から別れを切り出されても大丈夫なように、自分が我慢できなった時には決断できるように、貯蓄や資格取得など準備はしておこう。

そうやって保険をかけながら、ダラダラと続いていく今の生活。

私はいつまで経ってもダメダメだ。
でも変われない。
もうダメダメのままでいいやと開き直ることにした。
いろいろな夫婦の形があっていいじゃない。
一度しかない私の人生。
自分の好きに過ごすのだ。

おわり
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