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第5話 好きなのだ
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正直に言うと、将生くんとのお付き合いは楽しかった。
彼は私の気持ちを尊重し、嫌がることは一切しなかった。
きちんと私の気持ちを大切にしてくれたのだ。
将生くんは、私の気持ち、私の置かれた状況を知った上で、一緒に過ごしてくれたのだ。
見ていられなかったのかな。
私のことは、恋愛感情というよりは、ダメな妹の面倒をみるお兄ちゃんのような気持ちで、放っておけなかったのかな。
優しくて、かっこよくて、
こんなお兄ちゃんが欲しかったな……
そして、将生くんの卒業式。
彼は一足先に高校生となる。
将生くんは、卒業式の後で私に告げた。
「愛実、今までありがとう。
一緒に過ごせて楽しかったよ。
いつまでも今のままじゃダメだよ。
そろそろ新しい恋を探しなさい。」
まるで保護者のようだった。
付き合う話になった時は、軽い人だなと感じたんだけどな。
やっぱりーー
彼は私を見守ってくれていたんだ。
「将生くん、ありがとう。」
「あまり無理するなよ。」
彼は優しく私を抱きしめ、頭をポンポンしてくれた。
初めて男の人に抱きしめられた。
包まれるような感覚で、ドキドキして、緊張したー。
最後の最後に、そんな気持ちにさせるなんて、意地悪だ。…
私は将生くんに別れを告げらた。
結局、最後まで将生くんのことを呼び捨てにはできなかった。
***
私は、中学三年生になった。
小野寺くん、優衣ちゃんとは違うクラスになった。
それでも学校の廊下などで、小野寺くんを見かけると、つい目で追ってしまう。
だめだとわかっているのに、心はどうしようもないのだ。
自分から二人に会いに行くことはなくなったけれど、バッタリ遭遇した時は、自分の気持ちを隠して、今までどおりに友達として接する。
報われない恋だとわかっていても、少しだけでも傍にいたかった。
話していたかった。
今までと違ったのは、小野寺くん以外にも男友達ができたこと。
中学三年で初めて同じクラスになった岡田くん(おかだ)だ。
岡田くんとは同じ小学校出身。
それなのに、今の今まで一度も同じクラスにならず、話したこともなかった。
彼は小柄で私よりも少しだけ背が低い。
本人が知ったら怒りそうだが、童顔で、かわいい顔をしている。
席替えで隣の席になり、話してみるととても話しやすい人だった。
しかも家もかなり近いようだ。
確認すると、距離はあるけど、彼の家は高台にあり、彼の部屋と私の部屋からは互いの灯りが見えるとわかった。
なぜわかったのか。
ある時、彼に聞かれたからだ。
「佐藤さん家って公園の近くだよね?
昨日は遅くまで勉強してた?」
「うん。なんで?」
「佐藤さんの家かな?という辺りで、灯りが遅くまでついてたとこがあったんだ。
もしかしたら、佐藤さんの部屋なんじゃないかって思った。」
「そうそう。多分 私の部屋だよ。
私が一番最後まで起きてたから。
じゃあ私の部屋からも岡田くんの部屋の灯りが見えるかな?」
「見えるはずだよ。僕も最近は遅くまで起きてるから。高台にある家で、遅くなっても明るいのが僕の部屋。」
それからは、彼の部屋に灯りがついているのを確認しながら、彼が頑張っているのなら、私も頑張ろうと、遅くなるまで勉強していた。
学校で岡田くんと互いを称え合う。
「遅くまで頑張ってたね~。」
「いやいや、そっちこそ遅かったね。」
「あと少しで本番だね!!
もうここまできたら、早く終わって欲しい。」
「確かに。もうすぐ解放される~。」
岡田くんは、私の勉強友達になった。
とは言っても、各々が自宅で勉強しているだけなんだけどね。
一緒に乗りきる仲間がいるような気がして励みになったのは、確かだ。
そのおかげか、私は第一志望の高校へ合格することができた。
灯りを確認し、励まし合った岡田くんも、希望する高校へ合格していた。
彼は男子校へ進学するそうだ。
岡田くんは、話しやすくて…
一緒に闘った仲間みたいな感じで、彼とならいい関係が築けるかもしれないと少し考えていた。
私って気が多すぎるのかな。
一緒に居て、話しやすい人に心ひかれるようだ。
けれど、彼とは、ここでさよならだ。
卒業式の後、彼から連絡が入ることはなく、私から連絡することもなかった。
特に連絡先を交換もしていなかったしね。
卒業式の日、優衣ちゃんは小野寺くんに制服のボタンをもらっていた。
私はそれを偶然見ていた。
優衣ちゃんは、
「えへへっ、ボタンもらっちゃった!」
と嬉しそうに、私のところまで見せにきてくれた。
「よかったね!」
と言いながらも、私の心は…
優衣ちゃんは、本当に私の気持ちに気づいてないんだろうか……
小野寺くんと優衣ちゃんは別々の高校へ進学する。
彼女は、制服がかわいいと有名な女子高へ。
彼は、私と同じ共学の公立高校へ進学する。
二人は今も仲良く付き合っているので、学校が離れても問題ないのかな。
私だったら、不安になりそう。
卒業式が終わると、教室や校門前でパシャパシャと写真を撮る。
部活仲間で集まり撮った写真には、優衣ちゃんと小野寺くんも写っている。
「写真撮ってー。」
携帯を渡され、私の目の前に二人が並ぶ。
パシャリ
小野寺くんと優衣ちゃんが並ぶ写真を撮りながら思う。
小野寺くんと二人の写真が欲しい。
彼の制服のボタンが欲しい。
そんなこと頼めるわけもない。
小野寺くん、中学では一度も同じクラスになれなかった。
高校では、一度くらいは同じクラスになれるといいな。
彼は私の気持ちを尊重し、嫌がることは一切しなかった。
きちんと私の気持ちを大切にしてくれたのだ。
将生くんは、私の気持ち、私の置かれた状況を知った上で、一緒に過ごしてくれたのだ。
見ていられなかったのかな。
私のことは、恋愛感情というよりは、ダメな妹の面倒をみるお兄ちゃんのような気持ちで、放っておけなかったのかな。
優しくて、かっこよくて、
こんなお兄ちゃんが欲しかったな……
そして、将生くんの卒業式。
彼は一足先に高校生となる。
将生くんは、卒業式の後で私に告げた。
「愛実、今までありがとう。
一緒に過ごせて楽しかったよ。
いつまでも今のままじゃダメだよ。
そろそろ新しい恋を探しなさい。」
まるで保護者のようだった。
付き合う話になった時は、軽い人だなと感じたんだけどな。
やっぱりーー
彼は私を見守ってくれていたんだ。
「将生くん、ありがとう。」
「あまり無理するなよ。」
彼は優しく私を抱きしめ、頭をポンポンしてくれた。
初めて男の人に抱きしめられた。
包まれるような感覚で、ドキドキして、緊張したー。
最後の最後に、そんな気持ちにさせるなんて、意地悪だ。…
私は将生くんに別れを告げらた。
結局、最後まで将生くんのことを呼び捨てにはできなかった。
***
私は、中学三年生になった。
小野寺くん、優衣ちゃんとは違うクラスになった。
それでも学校の廊下などで、小野寺くんを見かけると、つい目で追ってしまう。
だめだとわかっているのに、心はどうしようもないのだ。
自分から二人に会いに行くことはなくなったけれど、バッタリ遭遇した時は、自分の気持ちを隠して、今までどおりに友達として接する。
報われない恋だとわかっていても、少しだけでも傍にいたかった。
話していたかった。
今までと違ったのは、小野寺くん以外にも男友達ができたこと。
中学三年で初めて同じクラスになった岡田くん(おかだ)だ。
岡田くんとは同じ小学校出身。
それなのに、今の今まで一度も同じクラスにならず、話したこともなかった。
彼は小柄で私よりも少しだけ背が低い。
本人が知ったら怒りそうだが、童顔で、かわいい顔をしている。
席替えで隣の席になり、話してみるととても話しやすい人だった。
しかも家もかなり近いようだ。
確認すると、距離はあるけど、彼の家は高台にあり、彼の部屋と私の部屋からは互いの灯りが見えるとわかった。
なぜわかったのか。
ある時、彼に聞かれたからだ。
「佐藤さん家って公園の近くだよね?
昨日は遅くまで勉強してた?」
「うん。なんで?」
「佐藤さんの家かな?という辺りで、灯りが遅くまでついてたとこがあったんだ。
もしかしたら、佐藤さんの部屋なんじゃないかって思った。」
「そうそう。多分 私の部屋だよ。
私が一番最後まで起きてたから。
じゃあ私の部屋からも岡田くんの部屋の灯りが見えるかな?」
「見えるはずだよ。僕も最近は遅くまで起きてるから。高台にある家で、遅くなっても明るいのが僕の部屋。」
それからは、彼の部屋に灯りがついているのを確認しながら、彼が頑張っているのなら、私も頑張ろうと、遅くなるまで勉強していた。
学校で岡田くんと互いを称え合う。
「遅くまで頑張ってたね~。」
「いやいや、そっちこそ遅かったね。」
「あと少しで本番だね!!
もうここまできたら、早く終わって欲しい。」
「確かに。もうすぐ解放される~。」
岡田くんは、私の勉強友達になった。
とは言っても、各々が自宅で勉強しているだけなんだけどね。
一緒に乗りきる仲間がいるような気がして励みになったのは、確かだ。
そのおかげか、私は第一志望の高校へ合格することができた。
灯りを確認し、励まし合った岡田くんも、希望する高校へ合格していた。
彼は男子校へ進学するそうだ。
岡田くんは、話しやすくて…
一緒に闘った仲間みたいな感じで、彼とならいい関係が築けるかもしれないと少し考えていた。
私って気が多すぎるのかな。
一緒に居て、話しやすい人に心ひかれるようだ。
けれど、彼とは、ここでさよならだ。
卒業式の後、彼から連絡が入ることはなく、私から連絡することもなかった。
特に連絡先を交換もしていなかったしね。
卒業式の日、優衣ちゃんは小野寺くんに制服のボタンをもらっていた。
私はそれを偶然見ていた。
優衣ちゃんは、
「えへへっ、ボタンもらっちゃった!」
と嬉しそうに、私のところまで見せにきてくれた。
「よかったね!」
と言いながらも、私の心は…
優衣ちゃんは、本当に私の気持ちに気づいてないんだろうか……
小野寺くんと優衣ちゃんは別々の高校へ進学する。
彼女は、制服がかわいいと有名な女子高へ。
彼は、私と同じ共学の公立高校へ進学する。
二人は今も仲良く付き合っているので、学校が離れても問題ないのかな。
私だったら、不安になりそう。
卒業式が終わると、教室や校門前でパシャパシャと写真を撮る。
部活仲間で集まり撮った写真には、優衣ちゃんと小野寺くんも写っている。
「写真撮ってー。」
携帯を渡され、私の目の前に二人が並ぶ。
パシャリ
小野寺くんと優衣ちゃんが並ぶ写真を撮りながら思う。
小野寺くんと二人の写真が欲しい。
彼の制服のボタンが欲しい。
そんなこと頼めるわけもない。
小野寺くん、中学では一度も同じクラスになれなかった。
高校では、一度くらいは同じクラスになれるといいな。
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