44 / 49
第44話 反対される
しおりを挟む
僕はツムギを我が家へ招き入れ、もうすぐ彼女は僕の妻となるのだと有頂天だった。
彼女と同じ屋敷に生活していると思うと…あぁ幸せだ。
彼女も僕の想いに応えてくれ、辺境伯夫人になるべく、努力してくれている。
その為、母と過ごす時間が長くなるのは仕方がない。
だが、もう少し、もう少しだけ一緒にいたいと思ってしまう。
ツムギとの時間を作りたい僕は、初日の夕食後に彼女と二人で庭を散策した。
彼女との時間は楽しくて、甘くて…
まだまだ一緒に居たかった。
だが、夜が更けてくると寒くなる。
仕方なく、彼女を部屋へ送り届ける。
翌朝、僕は彼女付きの侍女であるマノンから苦情を受けた。
「ツムギ様が真っ赤な顔で戻ってきましたが、婚姻前ですので自重をお願いします。」と、
マノンは僕が生まれる前から、この屋敷に勤めるベテランだ。
生まれた時から世話になっている彼女に、そんな苦情を言われるとは…
何とも居たたまれない。
失敗したな。
それから僕がツムギと二人になろうとすると、マノンの目が厳しい。
無言の抗議である。
もう少し彼女のほてりを冷まして、部屋に戻すべきだった。
*
先程、執務中に父から聞かされた内容に、僕は驚愕した。
とっくに僕らの婚約の許可が出ているものと思っていたが、実はまだ保留中らしいのだ。
ラウンド辺境伯である父、賢者と呼ばれるキリノ男爵が、王家へ抗議を申し入れたが、まだ返答がない。
それだけでなく、第二王女アリーローズ様の釣書が父の机に無造作に置かれているのを見てしまった。
アリーローズ様は、ツムギと同じく僕の2歳年上だ。
剣を握るじゃじゃ馬で、本人は「私は一生婚姻しない。」と宣言したと聞いたのだが…
なぜ彼女の釣書があるんだ?
彼女は弟 テオよりも4歳年上だ。
さすがに僕宛ではないと祈りたい。
父からはまだ何も聞いていない。
王家はいったいどういうつもりだ。
まさか辺境伯家と賢者を敵にまわすつもりなのか。
*
席を外していた父が戻ってきた。
「父上、申し訳ありません。王女の釣書を見てしまいました。」
「いや、構わん。テオにアリーローズ様との縁談がきておるのだ。」
「えっ、テオに?」
「実は、『ラウンド家の魔法』で、アリーローズ様と巡りあったようなのだ。」
「いつの間に… そうか、テオも16歳になっていましたね。」
「そうだ。授業で行われた狩りの演習で、トラブルがあり、出逢ったそうだ。」
「となると、テオも王女と困難を乗り越えたのですか?」
「そう、そのとおりだ。」
彼女と同じ屋敷に生活していると思うと…あぁ幸せだ。
彼女も僕の想いに応えてくれ、辺境伯夫人になるべく、努力してくれている。
その為、母と過ごす時間が長くなるのは仕方がない。
だが、もう少し、もう少しだけ一緒にいたいと思ってしまう。
ツムギとの時間を作りたい僕は、初日の夕食後に彼女と二人で庭を散策した。
彼女との時間は楽しくて、甘くて…
まだまだ一緒に居たかった。
だが、夜が更けてくると寒くなる。
仕方なく、彼女を部屋へ送り届ける。
翌朝、僕は彼女付きの侍女であるマノンから苦情を受けた。
「ツムギ様が真っ赤な顔で戻ってきましたが、婚姻前ですので自重をお願いします。」と、
マノンは僕が生まれる前から、この屋敷に勤めるベテランだ。
生まれた時から世話になっている彼女に、そんな苦情を言われるとは…
何とも居たたまれない。
失敗したな。
それから僕がツムギと二人になろうとすると、マノンの目が厳しい。
無言の抗議である。
もう少し彼女のほてりを冷まして、部屋に戻すべきだった。
*
先程、執務中に父から聞かされた内容に、僕は驚愕した。
とっくに僕らの婚約の許可が出ているものと思っていたが、実はまだ保留中らしいのだ。
ラウンド辺境伯である父、賢者と呼ばれるキリノ男爵が、王家へ抗議を申し入れたが、まだ返答がない。
それだけでなく、第二王女アリーローズ様の釣書が父の机に無造作に置かれているのを見てしまった。
アリーローズ様は、ツムギと同じく僕の2歳年上だ。
剣を握るじゃじゃ馬で、本人は「私は一生婚姻しない。」と宣言したと聞いたのだが…
なぜ彼女の釣書があるんだ?
彼女は弟 テオよりも4歳年上だ。
さすがに僕宛ではないと祈りたい。
父からはまだ何も聞いていない。
王家はいったいどういうつもりだ。
まさか辺境伯家と賢者を敵にまわすつもりなのか。
*
席を外していた父が戻ってきた。
「父上、申し訳ありません。王女の釣書を見てしまいました。」
「いや、構わん。テオにアリーローズ様との縁談がきておるのだ。」
「えっ、テオに?」
「実は、『ラウンド家の魔法』で、アリーローズ様と巡りあったようなのだ。」
「いつの間に… そうか、テオも16歳になっていましたね。」
「そうだ。授業で行われた狩りの演習で、トラブルがあり、出逢ったそうだ。」
「となると、テオも王女と困難を乗り越えたのですか?」
「そう、そのとおりだ。」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる