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第10話 丹後家
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その頃、丹後家では。
丹後アヤメとなった雛子が、ベッドでスヤスヤと眠っていた。
ジリリリッ、ジリリリッ
大きな目覚まし時計の音が鳴り響き、驚いた彼女は飛び起きた。
なに? すごい音。
ん? ここはどこよ。
狭い部屋、小さな固いベッド、鏡もない。
机には各種教科の参考書が並んでいる。
えっ、ま、さ、か。
自分の体を観察する。
私の願いが、願いが叶ったのね!
スラリとしたこの体。
手足も長くて、髪も艶々滑らか。
シャンプーのCMのように、サラサラとした髪を持ち上げ、上からハラハラとおろしてみる。
部屋の中をモデルのように歩いてみる。
あー、全身がうつる大きな鏡がなぜないの?
大きな鏡が欲しいわね。
なに? 最高!
最高の気分だわ。
神様、ありがとう。
部屋のドアを開けて、キョロキョロしてみる。
「あっ、姉ちゃん、おはよう。」
凛々しい男の子がいた。
えっ、だれだれ?
かっこいいじゃない。
私のこと、姉ちゃんと呼んだ。
アヤメさんの弟?
中学生ってところね。
アヤメさんを男にしたら、こんな感じだろう。
身長はアヤメさんになった私と同じくらい。
本当にそっくり。
「姉ちゃん、朝から何なの?ニヤニヤして変。」
そ、そう? えへへと笑ってみる。
「どうした? 気持ちわるっ。」
そっか、アヤメさんならここで笑わないのか。
笑って誤魔化さず、どうしてるんだろう。
「早くごはん作ってよ。俺、もうお腹ペコペコ」
えー、私が朝食作るの?
困る、困ったよ。
「ん?どうした姉ちゃん。具合でも悪いのか?」
「うん、ちょっとね。」
「じゃあ、仕方ない。今日は俺が作るから明日は頼んだよ。俺、姉ちゃんの作るご飯好きだからさ。」
なに、なに。
めちゃくちゃかわいいんだけど。
このかわいい弟も私の弟なんだ。
兄弟欲しかったから嬉しい。
アヤメさんのものは、全て私のものよ。
ほんの一瞬、目尻と口角がグイッとあがる。
彼は棚から出した食パンをトーストにして、目玉焼きとウインナーを焼いてくれた。
サラダとスープが欲しいところだ。
コーヒーはお湯を注ぐだけのインスタント。
インスタントコーヒー、初めて飲んだ。
ふぅ~ん、こんな味なのか。
食パンもバターの風味が弱い。
我が家で食べていたパンとは違うのだろう。
「昼は俺、適当にカップ麺食べとく。姉ちゃんはもうすぐ試験で、勉強あるんだろ?」
「うん、そうなんだ。助かる。」
「ああ。」と何だか照れくさそう。
アヤメさん弟、かわいいな。
食べ終わった彼は、部屋へと戻って行った。
ところで、彼はなんて名前なんだろう。
アヤメさんのこと、もっと調べないと。
すぐにボロが出ちゃいそう。
別人だとバレそうで、緊張したー。
アヤメさんは家事とかできるんだ。
何でもできる彼女、無敵じゃない?
すごいなぁ。
試験、忘れてた。
アヤメさん、確か勉強もできたよね。
マズイ。
今回は本腰入れて勉強しなきゃ。
急に順位が下がったら…おかしいよね。
でも両親はどこに?
仕事?
お手伝いさんは?
私、自分でいろいろできるかなぁ。
不安だ。
丹後アヤメとなった雛子が、ベッドでスヤスヤと眠っていた。
ジリリリッ、ジリリリッ
大きな目覚まし時計の音が鳴り響き、驚いた彼女は飛び起きた。
なに? すごい音。
ん? ここはどこよ。
狭い部屋、小さな固いベッド、鏡もない。
机には各種教科の参考書が並んでいる。
えっ、ま、さ、か。
自分の体を観察する。
私の願いが、願いが叶ったのね!
スラリとしたこの体。
手足も長くて、髪も艶々滑らか。
シャンプーのCMのように、サラサラとした髪を持ち上げ、上からハラハラとおろしてみる。
部屋の中をモデルのように歩いてみる。
あー、全身がうつる大きな鏡がなぜないの?
大きな鏡が欲しいわね。
なに? 最高!
最高の気分だわ。
神様、ありがとう。
部屋のドアを開けて、キョロキョロしてみる。
「あっ、姉ちゃん、おはよう。」
凛々しい男の子がいた。
えっ、だれだれ?
かっこいいじゃない。
私のこと、姉ちゃんと呼んだ。
アヤメさんの弟?
中学生ってところね。
アヤメさんを男にしたら、こんな感じだろう。
身長はアヤメさんになった私と同じくらい。
本当にそっくり。
「姉ちゃん、朝から何なの?ニヤニヤして変。」
そ、そう? えへへと笑ってみる。
「どうした? 気持ちわるっ。」
そっか、アヤメさんならここで笑わないのか。
笑って誤魔化さず、どうしてるんだろう。
「早くごはん作ってよ。俺、もうお腹ペコペコ」
えー、私が朝食作るの?
困る、困ったよ。
「ん?どうした姉ちゃん。具合でも悪いのか?」
「うん、ちょっとね。」
「じゃあ、仕方ない。今日は俺が作るから明日は頼んだよ。俺、姉ちゃんの作るご飯好きだからさ。」
なに、なに。
めちゃくちゃかわいいんだけど。
このかわいい弟も私の弟なんだ。
兄弟欲しかったから嬉しい。
アヤメさんのものは、全て私のものよ。
ほんの一瞬、目尻と口角がグイッとあがる。
彼は棚から出した食パンをトーストにして、目玉焼きとウインナーを焼いてくれた。
サラダとスープが欲しいところだ。
コーヒーはお湯を注ぐだけのインスタント。
インスタントコーヒー、初めて飲んだ。
ふぅ~ん、こんな味なのか。
食パンもバターの風味が弱い。
我が家で食べていたパンとは違うのだろう。
「昼は俺、適当にカップ麺食べとく。姉ちゃんはもうすぐ試験で、勉強あるんだろ?」
「うん、そうなんだ。助かる。」
「ああ。」と何だか照れくさそう。
アヤメさん弟、かわいいな。
食べ終わった彼は、部屋へと戻って行った。
ところで、彼はなんて名前なんだろう。
アヤメさんのこと、もっと調べないと。
すぐにボロが出ちゃいそう。
別人だとバレそうで、緊張したー。
アヤメさんは家事とかできるんだ。
何でもできる彼女、無敵じゃない?
すごいなぁ。
試験、忘れてた。
アヤメさん、確か勉強もできたよね。
マズイ。
今回は本腰入れて勉強しなきゃ。
急に順位が下がったら…おかしいよね。
でも両親はどこに?
仕事?
お手伝いさんは?
私、自分でいろいろできるかなぁ。
不安だ。
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