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第14話 試された?

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おばあさんの話は続く……

「私は魔女だ。孫のニーナは魔女と呼べるような力は持っていないよ。
しかし、髪と瞳の色は私の色を引き継いでしまった。
ニーナは娘夫婦とともに街で暮らしていたんだが、外で遊ぶようになると瞳の色が原因で孤立してしまった。
塞ぎ込んだニーナを心配した娘サマンサが私にニーナを預けに来たんだ。

この森で一緒に暮らし始めたニーナが、初めて友達ができたと笑顔で報告してくれた時、それはそれは嬉しかった。
飛び上がりたくなるくらいにね。

その友達が病にかかっていて、医師や薬師の手におえないという。
あとは、魔女の秘薬しか……
それで私が娘のサマンサに足りない薬草の手配を頼んだんじゃ。
私やニーナが取りに行くのは難しい場所だったからな。
すぐに擦り潰す必要がある薬草も含まれていたから、ペースト状にして持ってきてもらった。
そのペーストに『アカメメソウ』が紛れていたんだろう。」

「アカメメソウ?」
ニーナさんが首を傾げている。

「ああ、ニーナはまだ見たことない特別な薬草さ。アカメメソウは濃い緑の草で葉のフチが赤い珍しい薬草で、成分が体内に入ると、どんな色の瞳も赤く変化する。無味無臭で含まれているかどうかは見ただけじゃわからん。
飲んで2週間ほどで瞳が赤くなり、3ヶ月ほどで元の色に戻る。
少しの間赤い瞳を体験できる薬草なんだ。

さっきから彼女は俯いて、彼の目を避けてるようだが、赤い瞳に何か効力があるわけじゃないよ。

ニーナの父親にも体験させたことがある。
そのことを覚えていたサマンサがアレク様を試したんだろう。
赤い瞳が人々に敬遠されることを身に沁みて知っているから、それを体験させたかったんだろう。
アレク様は貴族じゃろう?
ニーナは友達で、恋仲ではないのじゃろう?
サマンサの早とちりじゃ。
本当に申し訳ない。」
おばあさんが申し訳なさそうに頭を下げた。


「いいえ。僕は『魔女の秘薬』という貴重な薬をいただいたんですね。
貴重な薬だけにニーナさんのお母様に試されても仕方がなかったんだと思います。」

そこまで普通に話していたアレク様。
突然、おばあさんの座る岩に近づくと、ボソボソと何か話して、深々と頭を下げた。

話の内容は聞こえない。
すごくすごく気になる。
ニーナさんにも聞こえなかったみたいで、私と同じく彼女もソワソワしている。

「そう、そうかい。怒ってないようで安心したよ。
お前たち、気に入った。困ったことがあったら会いにおいで。力になるよ。」

おばあさんはそう言うと、顔に似合わず、アハハッと豪快に笑い、ニーナさんと私の方をチラチラと見た。

えっ? 私の話? ニーナさんの話?
すごく気になる。
アレク様がわざわざ小声で話したということは、教えてもらえないのだろう。

アカメメソウの効果は約3ヶ月。
あと1ヶ月もすれば、アレク様の瞳は元に戻るのだろう。
アレク様と視線を合わせても問題はないのか。
初対面の時に、私が彼の瞳にドキドキしたのは何だったんだろう? 
不思議だ。

彼の瞳が自然と元に戻るとわかり、嬉しい。嬉しいんだけど、
アレク様の瞳が元に戻ったらーー
私はどうなるんだろう。
彼の担当から外されるのだろうか。

約束どおり私が成人するまで働けるのだろうか……
我が家の支援は続けていただけるのだろうか。
まぁ、考えても仕方がないか。

「ありがとうございました。」
「また来ます。それまでお元気で。」
ニーナさんとおばあさんに別れを告げ、馬車を停めた場所まで戻る。

護衛の彼が、私たちを迎えてくれた。

馬はその辺りに生えた柔らかそうな草を食んでいる。
御者は日陰に停めた馬車に座り、コクコクと昼寝中だ。

アレク様と私が近づくと、ビクッと起きて、目を擦り、慌てて口元を拭っている。

ヨダレが出てないか気にしてる?
私が『ヨダレついてませんよ。』と口パクで伝えると、口元から手を離しニコリと笑った。

馬車に乗り、マリオン侯爵家へと戻る。
帰りはうっすらと暗くなり、遠くに夕陽が見える。

「暗くなると危ないですので、少し飛ばします。しっかり捕まっていてくださいね。」
御者は私たちに告げると、馬車のスピードをあげた。

急遽、ニーナさんのおばあさんから話を聞くことになり、予定より遅くなってしまった。

ガラガラ、ガタンガタンと大きな音をたてながら馬車は走る。
窓からは、空は茜色、山へ向かってゆっくりと下りていく夕陽が見える。

「オリアンナ、今日はありがとう。
ニーナに会って、お礼を伝えられて、本当によかった。君のおかげだ。」

「赤い瞳のことがわかってよかったです。スッキリしました!」

今はアレク様の顔を見ることができる。
赤い瞳が煌めいてとてもキレイ。
しっかりと視線を合わせると、彼は目を細め、優しく優しく微笑んだ。











    
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