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第42話 違う世界の人々

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王族から夕食に誘われるなんて……

ドーラの案内で食事をする部屋へ向かう。
私をロナが心配そうに見ている。

「リナ様、顔が、顔が、大変なことになってます」
そう言われても自分でもどうしたらいいのかわからないのよ。
触ってみると口角が下がっているのがわかる。
両手を頬にあて、ぐりぐりと頬の筋肉をほぐしたり、ぐいっと指で口角を持ち上げてみる。
少しは強ばりが和らいだかしら……

ロナの様子をうかがうと、下を向き、肩が震えてる。
ドーラを見ると、彼女の口元がプルプル動いていて、何かに耐えてるみたい。

パッと顔をあげたロナは口元を手で隠した。
「リナ様、その顔は勘弁してください。私は何とか耐えましたが、ドーラさんには衝撃的だと思います。ドーラさん、よく耐えましたねぇ。あの顔を見て笑わずに我慢するなんて侍女の鏡です」

いえね、ロナ 耐えれてないよね?
あなた肩が震えていたもの。
目尻も拭っていたよね?
ドーラさんも口元が震えていたよ?

ちょっと強く頬をぐりぐりしすぎちゃったかもしれない。
別に変顔するつもりじゃなかったんだよ?
キツネ顔になってた?
しわくちゃだった?
侍女2人とじゃれているうちに、食堂に着いてしまった。

使用人らしき人の姿はあれど、王族の方々はまだみたい。
私が最初に着いて待つものなのだろう。
案内された席に座る。
ドアを入ってすぐ、ドアに背を向ける形になる。
暇だ、何もすることがない。

ぼーっと待っていると、男性が入ってきて、「もうすぐ皆様がいらっしゃいますので、お立ちになってお待ちください」と告げられた。

私がイスから立ち上がり、ドアに向かって立っていると、次々ときらびやかな人々が入ってきた。
最後に陛下が入ってきて、これで揃ったのかな。
「リナ様、リナ様、頭を下げてください」
小声でドーラに言われ、慌ててあたまを下げる。

「彼女は礼儀もまだよくわかっていないのだろう。まぁよいよい」

「リナ様、挨拶を……」
またまたドーラのフォローを受け、何とか挨拶することができた。

食事が始まっても、誰も私に話しかけることなく、まるで1人で食事をしているようだ。
長いテーブルの向こう側から視線だけは感じる。
私はジロジロと観察されているようだ。
私が見るのはどうなんだろう。
何かマズイかもしれないと思うと、誰とも視線を合わせられない。
俯きかげんで食事を取るのは行儀が悪いし、だからといってバーンと正面を向くと誰かと視線が合いそうで、なかなか辛い。

王族について知る機会だ。
視線に気づかいながら、なんとなーく様子をうかがう。
男性はみな金髪に瑠璃色の瞳だ。
色の濃さや他の色が混ざったような違いはあるものの、遠目で見たら同じじゃないかな。

顔は彫りが深く、目鼻立ちがはっきりしている。太めの眉で何だか強そう。
まるで美術館に並んでいた彫刻のようだ。
陛下と王子様たちはそっくりだ。

女性は王妃様と王太子妃様だよね。
うわぁーどちらも細いなぁ~。
鎖骨がくっきり出ている。
顔、ちっちゃいなぁ。
肌はツヤツヤで、シミやソバカスも見当たらない。
いったいどんなお手入れしてるんだろう……

気を付けていたつもりなのに、ついつい見すぎてしまったようだ。

「どうしたの?」
私の視線を無視できず、王太子妃アリエラ様が声をかけてきた。

「あっ、あまりの美しさに目が離せなくなってしまいました……もし失礼があったのでしたら、申し訳ございません」

正直に答えた私に、彼女のキレイな白い肌がうっすら桜色に染まる。

「いいえ、大丈夫よ。あなたの髪、とっても綺麗ね。それにその色、まるで夜空のようだわ」

彼女をじっくりみつめても失礼ではないようなので、しっかりとアリエラ様をみつめる。
銀色の髪に、神秘的な紫の瞳。
銀色に輝くストレートの髪はとても軽やかで憧れる。
ただよーく見ると、少しバサつき、あほ毛が出ていた。なんてこと?残念だ。

「私の髪、今の季節は乾燥してうまくまとまらないのよ」
彼女の言葉に傍に控える女性が申し訳そうに俯く。

いや、侍女のせいじゃないと思うよ。
今の季節は空気が乾燥してるから、手入れしていても時間の経過とともに、髪がバサついてしまうのだろう。
私のクリームを使ってもらえたら……きっと美しい髪を維持できるはず。

「私が使っているヘアクリームを試してみませんか?」
つい心の声が……出てしまった。

はっ、と顔をあげたアリエラ様は隣へ視線を向けた。
旦那様である王太子フィンレー様へ意見を求めたのだ。

「アリエラが試してみたいならいいんじゃないか?君はいつでも美しいが、更に美しくなるのならば大歓迎だ。但し、他の者が試してからだ」

そうね、アリエラ様は本当に美しいわ。
確かお子様もいらっしゃるのよね?
とても子持ちには見えない。

「あら、私も試してみたいわ」
ずっと無言を貫いていた王妃ステラ様からも声があがった。
彼女の髪は少し赤みを帯びた金色で、ゆるゆると波うっている。

「はい、もちろんです。用意ができ次第、お届けしますね」

「それなら明日、お茶の時間にあなたを招きましょう。あなたと話してみたいわ。もちろんアリエラもいらっしゃいね」
ステラ様に誘われてしまった。

これはまた断れないお誘いだよね?
ドーラを見ると、小さく頷いている。
ですよね……





    
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