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第31話 実験結果は

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ザブン滞在最終日の夜。
私は魚の配送方法を考え、一睡もできないまま朝を迎えた。

ねっ、眠れなかったー。

朝食の席では、私の酷い顔にドン引きされた。
ロナのメイク技術をもってしても隠しきれなかったクマ。
もうどうしようもないよね……

思いついた配送案をみんなに伝える。
ケント様は水魔法を使って、ロニー様は『状態維持』と思われる魔法で。

ロニー様の魔法の発動方法がわからない為、バラの花を切り取った時の行動を思い出し、再現するようお願いした。

魚が傷むともったいないので、小さな切り身にして帰り道を輸送に見立てて実験する。

1ヶ月後にケント様が主催する舞踏会で実験結果を報告することになった。

楽しかったザブンでの時間も終わり、馬車に揺られてデリーノへ帰ってきた。
馬車の中で、ケント様と実験。
料理した時と同じように楽しかった。

***

デリーノ伯爵家へ帰りつくと、いつもの日々が戻ってきた。
ケント様の仕事を手伝ったり、ダンスを習ったり、ケント様主催の舞踏会の準備を手伝ったり……
魚の代わりに肉を使って、実験は続けていた。

1ヶ月はあっという間に過ぎていき、デリーノ伯爵邸での舞踏会の日がやってきた。

朝からケント様も私もバタバタ忙しい。
会場の準備が終わっているか、料理のできあがり予定など確認していく。
私は準備に時間がかかる為、またまたジョセフィーヌ様の手配された方々に連れていかれ、しっかりと磨かれた。

この世界に来たばかりの頃は、コルセットの代わりに腰痛コルセットで済ませてもらっていたが、今はもう通常のコルセットに耐えられるようになった。

今回はセレストブルーのドレスが用意されていた。
スカイブルーよりも少し深みがある水色。
神が存在するという天空の色なんだそう。
恐れ多く感じ、身が引き締まる。

会場でケント様とともにお客様を迎える。
私が隣に立っていていいのか……
ケント様の縁談に悪影響を与えないものかと不安になり、ジョセフィーヌ様に確認したのだが、
「ケントが隣に居て欲しいと言ったのでしょう?なら何も問題ないはずよ」とニッコリ微笑みを残して去っていった。

主催者であるケント様に挨拶を済ませたご令嬢方が私たちのことを話している。
聞き耳立てているつもりじゃなくても、『ケント様』という単語が自然と耳に飛び込んでくる。

「ほらっ、2人はお付き合いしているのよ」
「ケント様が婚約した話は聞かないわ」
「まだ婚約はしてないけれど、婚約間近なのでは?」
「最近のケント様、素敵だから狙ってたのに……」
「ダンス中のケント様ってかっこいいわよね」

やはりケント様の隣でお客様へ挨拶するのは、勘違いされますよねぇ。
勘違いされた上でも、人気があるようだ。

「ケント、リナさん、久しぶり。実験はどうだった?」
ロニー様ったら、馴れ馴れしくなったものだ。
「ケント様、リナさん、お招きありがとう。
もうっ、ロニーったら、実験の話は後で、後でよ。ケント様たちは忙しいんだから……」
ユリナーテ様に腕を引っ張られ、離れていくロニー様。
すっかり尻にひかれているようだ。 

お客様と会話やダンスを楽しみつつ、問題が起きていないか目を光らせる。
主催者は大変だ。 

今回は鶏の唐揚げを料理に加えてみた。
先日、ザブン伯爵邸のみなさんにブリの竜田揚げが好評だったので、同じようにしょうが醤油で味付けする唐揚げもいける!と思ったのだ。
デリーノ伯爵邸での試食会で手応えを感じ、メニューに加えることになった。
もちろん私が食べたかったのもある。
鶏の唐揚げは好評で、追加で揚げたてが並べられた。

何度か舞踏会で会って、話をするようになったご令嬢方に、ケント様との関係を聞かれたが、
「以前と変わりはないですよ」とだけ答えた。
関係に変わりはないのだが、私の気持ちは……全く同じではない。
彼には幸せになって欲しいと思っている。
思っているが、彼が他のご令嬢とダンスしたり、話している姿を見るとキリリと胸が痛む。

舞踏会が閉会した後、ロニ-様、ユリナーテ様と部屋を移動する。
2人は明後日までここに滞在する予定なのだ。
また4人で一緒に過ごせる。

夜、ケント様に連れられて、4人でバルコニーへ出た。
バルコニーには小さな丸テーブルとイスが4脚置かれていた。
イスに腰かけ、夜空を見上げる。
キレイな星空だ。
星は日本と同じだったりしないかと、北極星やオリオン座を探す。
やはり知ってる星は見当たらない。
私は違う世界にいるんだと実感する。

「で、実権結果はどうだった?」
ロニー様がテーブルへ身を乗り出した。
雰囲気も何もない。
一気に現実へと戻される。

「いろいろ試したけれど、水魔法だけでは難しいな。氷魔法も使えるのなら、水を一気に凍らせたりできるらしいんだが……残念だ」
ケント様が悔しがる。

「そうか……俺は君の予想どおり『状態維持』の魔法が使えることがわかったんだ。予め俺が魔法を施した箱に入れておけば状態が維持できる。箱の大きさによって、魔法の込め方によって、維持できる日数が変わることもわかった」

「凄いじゃないかっ!!」
ケント様が我が事のように喜んでいる。

「ロニーがザブンに居てくれたら、配送の問題は解決するのね……」
ユリナーテ様も感慨深げだ。

「ロニー様、凄いです!見直しました!ただ『状態維持』魔法は信頼のおける相手以外には内緒にしたほうがいいです」

「えっ、なぜ?」

「希少な魔法ゆえに、その身を狙われる可能性があります。『状態維持』は使い方によっては危険な魔法です。使用するモノを限定すべきです」

「そう、そうか……家族を見返してやりたかったんだが……諦める。俺のせいでユリナーテを危険な目に合わせるわけにはいかないからな」








    
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