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友人

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伯爵姉妹の襲来から少し時がたった頃。
公爵家に正式な来客があった。



「やぁ、ジルグンド。ご無沙汰だな。」

「...何の用だ、バーヴェル。」

「ははは!嫌そうな顔を隠しもしないなんて、相変わらずだな!!」

午後の業務に取り掛かって早々、やってきたのは隣の国で公爵位をもつ旧友のバーヴェルだった。筋骨隆々な体をしているが、片目は5年前の戦争で無くし、今では黒い眼帯をつけている。

服の袖はいつも何故か引きちぎれており、今日もその硬そうな上腕の筋肉が顕になっている。
昔と変わらず大口を開けて笑う声は些か部屋の中で聞くには大きい。

「で、何の用?」

「うむ、最近ある噂を聞いたんだ。なんでもお前が獣人を拾ったとな。いや、見つけたのか?」

「...後者だ。」

「おぉ!そうか!!それはめでたいな!!顔色も随分良くなったようだし、中々相性がいいんじゃないか?」

「ああ。」

古い友人であるバーヴェルには、昔出会った獣人を探しているという話をした事があったため、その相手が見つかった事に喜んでくれているようだ。

私がなぜこの男に獣人の話をしたのか。それは、こいつも特別な能力持ちで、獣人と暮らしているからだが、私はまだ一度も会ったことがない。どうやらバーヴェルの獣人も人は苦手らしい。

「お前は早死にしそうなぐらい顔色がずっと悪かったからなぁ。これで寿命も100年は伸びただろ。」

「流石にそこまでは伸びないだろうけど...そうだね。あの子のおかげで、とても生きやすい。君の声もちゃんと聞き取れる。...うるさいけど。」

「うむ。ぜひ会ってみたいな!最近はレオンも外に出るようになったから、連れてきたんだ!獣人同士で友達にでもなれればと思ってな!」

「へぇ、確かにそれはいい考えかもしれないな。で、そのレオンという子は今どこに?姿が見えないようだけど。」

馬車で待機でもしているのかと思ってそう聞けば、バーヴェルは辺りを見回し始める。そして一通り、ソファの後ろや机の下を確認した後に私の顔を見てこう言った。

「..........どこだ?」

「知らないよ。」

「レオン!!!」

「うるさいうるさい。常人でも耐えられない声量だ。」

「レオーーーーン!!!!」

「ウェーゲル、つまみ出せ。私が許可する。」

「はい。」














最近は自分の足で虎さんのお家まで行けるようになったんだ。それと、メイドさん達とも仲良くなった。
今日も道端で会うメイドさん達に元気に挨拶をすれば、笑顔で挨拶を返してくれる。虎くんにも挨拶してくれるから、虎くんの手を持ってバイバイとすると皆とっても嬉しそうにするんだ。

それが僕も嬉しくてルンルンで虎さんの元まで庭の中を歩いていく。今日はとても天気がいいから外で日向ぼっこをする「おいお前!!!」

「ひゃぁ!」

突然の知らない声に驚いてしゃがみながら虎くんを守る。

「ビビんなよ。何もしねぇって。」

「...え...?」

執事さんでもない若い男の子の声だった。
そろりとその声の主を確認する。


するとそこに居たのは、大きな三角の耳とふさふさの尻尾を持つ、獣人だった。
目はとうもろこしと同じ色。いや、ジル様の服のボタンと同じ色。そう、綺麗な金色だった。



「じゅう...じん...?」

「ああ。お前もだろ?」

「は、ぇ...ぁ、はい!」

「ほら立てよ。驚かせて悪かった。」


大きな声だったけどその獣人に悪意は無いようで、親切に手を差し伸べてくれた。その手を掴むと、とても強い力で引っ張られる。

「わっ。」

「うお!かる!」

持ち上げられるように勢いよく立ち上がったせいで、その人の腕の中に飛び込んでしまう。それでも頭ひとつ分以上は大きい相手がしっかり受け止めてくれた。

「お前...軽過ぎだろ。ちゃんと食ってるか?1日に何回食べてる?おやつは貰えてるのか?」

「ぁ、あさと、おひると、よるにおなかいっぱいたべる。おやつも、もらえるよ。たべすぎはだめっていわれるけど...。」

「そうか。ならいい。ここの公爵もまともな奴みたいだな。」

「あ、あのえっと、あなたは...?」

ずっと気になって居た事を聞くと、その人はカッコよくにっと笑った。キラキラ輝く目が太陽みたい。

「俺はレオン。狼の獣人だ。」

「れおん...。」

「お前は?」

「あ、ぼく、ぼくはね、なまえは、るのっていって、あ!このこはおともだちのとらくん!」

「そうか。ルノ、それに...虎くん?もよろしくな。俺、自分以外の獣人を見るのは久しぶりだ。」

「あ、よっ、よろしく!ぼくは、はじめてだよ!みみとしっぽがあるこ、はじめてあった!ぼくと、おなじ!!すごい!!」

はじめて見る同類の子に目を輝かせながら、その子の周りをぐるぐると回ってほんものだぁと感激する。そしてふさふさのしっぽが右と左にゆらゆら揺れているのに目が釘付けになった。

「しっぽ!ぼくととらさんとちがって、ふさふさだ!!」

「...さわってもいいぞ。」

「ほんと!?...わぁ...ふわふわだ。おふろでまいにちあらうの?」

「そうだな。」

「えらいねぇ。ぼくはね、おふろにがてだから、いつもい゛ぃ~!ってなるの。でもじるさまが、ふわふわのたおるでふいてくれるんだよ。あとあったかいかぜで、かわかしてくれるの。そうしたらけがすべすべになる。」

「風呂嫌いなのか?あ、じゃあルノは猫科か。確かに尻尾細いもんな。」

「ねこか?」

「そうだな。この虎くんも猫科だ。つまり同じ種類って事。」

「おなじ?ぼく、とらくんととらさんと、おなじ?」

「ああそうだ。...虎くんと虎さんは別なのか?」

「そうだよ!あ!いまからとらさんにあいにいくの!れおんも、いっしょにくる?」

「うーん...勝手に抜け出してきたんだけど...まあいいか。俺も行く。」

「わぁい!じゃあてをつなごうね。まいごになっちゃうからね。」

「...ああ。」


レオンの尻尾はまだ左右にふりふり動いて居た。僕は嬉しい時にいっぱい動いちゃうから、レオンもきっと楽しんでくれてるんだろう。

あれ、そういえばレオンはなんでここにいるのかな?

「れおんは、おきゃくさん?」

「まぁ...そうだな。」

「じゃあ、じるさまのとこいく?」

「いや、俺をここに連れてきた奴が会いに行ってるだろうから、俺はいい。ルノと居る。」

「んふふ!じゃあ、いっぱいあそぼうね!」

僕と居てくれるんだって。
僕と歳の近い、それも獣人の子と遊べるなんて思ってもみなかった。とっても嬉しい。

レオンの尻尾もさっきより激しく揺れているから、きっと僕と同じように喜んでくれているのだろう。








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