カエル化したけど……最強夫婦になりました！

カエル化女子と溺愛彼氏

不安の終わりと、そしてはじまり2

「でも、今日はちゃんと予約をとってきているし、カウンセリングします」
　予約時のタブレット上の問診票に視線を落とす。主訴を見ると、
「肩こりと不眠？」
　とあった。

「それはもういいから。白那、もう無理なのかよ？もう、しろって言わない。いやなら無理に触らない。それでも？」
　私は蒼真の問いに頷く。

「無理だよ。楽しく一緒にいられなくなった。付き合う前は楽しく話せたし、一緒に出歩くだけで楽しかったよ。でも、私が蒼真の期待には応えられなかったから。あのとき、もう終わってる」
　私が言うと、蒼真は眉根を寄せる。

「あのとき、付き合わなきゃ良かった。今だったら……」
　蒼真の視線がまっすぐに向かってくる。言いたいことは分かったけれど、私の中の選択肢にはなかった。私は首を横に振る。

「蒼真の言動に傷ついたのはやっぱり本当だから。それにね、今もあれだけはきっと無理。これっぽっちも感じなくて、悪かったな」
　私が皮肉を込めて言えば、多少なりとも響いたのか、蒼真が言い返して来るまでに、時間がかかった。

「あれは……。言い訳だけど、どーすればいいかわかんねー。舐めてほぐしても無理、別のとこ刺激しても、エロい言葉や体勢にして煽っても無理。マジでお手上げ」
「そ、それ、今言うんだ……。大してほぐしてないよ。すぐに、本番ていう雰囲気満々で。それに会えば、すぐに、じゃん」

　反撃として言ってみれば、蒼真は多少決まり悪そうな顔になる。
「白那といると焦るんだよ。早くやって手に入れておかないと、いなくなるんじゃねーかって。でも、手に入んないから」
「やっても、手に入んないよ」
「どーだか。やった奴から聞きたいわ」
　と白けた調子で言う。

　蒼真に、高校の頃フラれていなければ、推し活をしていない。そうなれば、多分、瑠璃也とは出会っていない。だから、結局は無駄な経験じゃないと思う。

「蒼真と一緒に経営するのは無理だし、結婚なんてもっと無理。一度振ったくせに、未練がましく来るなって感じ」
「な……」
「でも、今日はお客様なので、マッサージはするよ」
　私は蒼真を見る。
　たしかに、蒼真の肩や背中の辺りに、黒いもやが見えた。

「施術室に来て」と私は言って、蒼真を施術室に案内する。