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カエル化女子と好きだった人
破れた殻4
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蒼真の気配が部屋からすっかり消えたところで、瑠璃也がおもむろに壁に頭をぶつけはじめる。
「えぇ!?なに?」
「何アイツ、目力バキバキ。こわー輩かよ~」
壁に頭をあてて、そのまま下へとずるずると下へ下がっていき、しゃがみ込むのだった。
「瑠璃也、大丈夫?」
私は蒼真にずらされた下着を整えて、ベッドから降りる。近づいていくと、私の方を見上げて、瑠璃也は眉を寄せた。
「下、ボタン外れてる」
スタッフウェアのボトムスに手をかけて、ボタンを留めてくれる。そのまま瑠璃也の視線がボトムスから離れない。
意図することが分かる気がしたので、
「変なとこ見せてごめん、あの人、一応元カレ」
と私は言う。
「うん。摘出候補の。忌々しいな」
と瑠璃也は言った。
「なにそれ」
と私が聞くと、瑠璃也は私の方に手のひらを向けてきて、
「あ、ごめん。ちょっと一度方向性整理するから。感情が追いつかない」
と言うのだった。
瑠璃也は、そのままへなへなとしゃがみ込んで、すっかりと腰を抜かしている。
なんだこの、瑠璃也は、と思う。こんな瑠璃也は見たことがない。
「何しに来たの?」
蒼真にも聞いたことを、私は瑠璃也にも聞く。
「サロンに見慣れない車がとまってるって、うちのスタッフが連絡くれたから」
「え?スタッフ?」
「いや、えーと。嘘嘘。白那と昼一緒に食べようと思って」
「瑠璃也、何か変じゃない?」
と言えば頭を横に振る。
「いや、全然変じゃないって」
「話し方といい仕草といい、何か違うよね?」
今の瑠璃也は表情豊かで、言葉が柔らかい。
「やっぱり急なことが起こると、上手く対応できないことがあるみたいだ。心底頭にくるわ、怖いわで。正直パニック」
「え、パニック、なんだ?」
「距離感が近いとか、話し方が嫌だとか、嫌だったら言って」
顔を両手で塞ぎながら、眉を下げて申し訳なそうに言う瑠璃也は初めて見た。
「双子の兄弟とかじゃないよね。本当に瑠璃也?」
と聞くと、瑠璃也は頷く。それから、私の顔をじっと見てくるのだ。
「白那、ハグしていい?」
と言うのだけれど、あまりにも甘いニュアンスで聞いてくるので、こっちがパニックになる。
これは、誰だ?と思うのだった。
答えないままでいたら、
「白那。沈黙は同意だと思われる。いい?」
と言って瑠璃也は笑う。私はなぜか頷いていた。
瑠璃也の両腕が伸びてきて、包み込まれる。反射的に身構えたけれど、身体が冷えてくる感覚はなく、むしろぬくぬくとした温度にうっとりととろけそうになった。
自分の変化に驚いてしまう。
「痛かったね。ごめん、遅くなって」
身体を離し、頭を撫でられながら顔を見つめられていると、なぜか顔が熱くなってるのを感じた。瑠璃也の長い睫毛や端正な顔立ちが好きなのはもちろんだけど、顔に浮かぶ表情があまりにも柔らかくて、愛おしいと思ったのだ。
その時ばかりは、触らないで、と口にするのを忘れていた。
「えぇ!?なに?」
「何アイツ、目力バキバキ。こわー輩かよ~」
壁に頭をあてて、そのまま下へとずるずると下へ下がっていき、しゃがみ込むのだった。
「瑠璃也、大丈夫?」
私は蒼真にずらされた下着を整えて、ベッドから降りる。近づいていくと、私の方を見上げて、瑠璃也は眉を寄せた。
「下、ボタン外れてる」
スタッフウェアのボトムスに手をかけて、ボタンを留めてくれる。そのまま瑠璃也の視線がボトムスから離れない。
意図することが分かる気がしたので、
「変なとこ見せてごめん、あの人、一応元カレ」
と私は言う。
「うん。摘出候補の。忌々しいな」
と瑠璃也は言った。
「なにそれ」
と私が聞くと、瑠璃也は私の方に手のひらを向けてきて、
「あ、ごめん。ちょっと一度方向性整理するから。感情が追いつかない」
と言うのだった。
瑠璃也は、そのままへなへなとしゃがみ込んで、すっかりと腰を抜かしている。
なんだこの、瑠璃也は、と思う。こんな瑠璃也は見たことがない。
「何しに来たの?」
蒼真にも聞いたことを、私は瑠璃也にも聞く。
「サロンに見慣れない車がとまってるって、うちのスタッフが連絡くれたから」
「え?スタッフ?」
「いや、えーと。嘘嘘。白那と昼一緒に食べようと思って」
「瑠璃也、何か変じゃない?」
と言えば頭を横に振る。
「いや、全然変じゃないって」
「話し方といい仕草といい、何か違うよね?」
今の瑠璃也は表情豊かで、言葉が柔らかい。
「やっぱり急なことが起こると、上手く対応できないことがあるみたいだ。心底頭にくるわ、怖いわで。正直パニック」
「え、パニック、なんだ?」
「距離感が近いとか、話し方が嫌だとか、嫌だったら言って」
顔を両手で塞ぎながら、眉を下げて申し訳なそうに言う瑠璃也は初めて見た。
「双子の兄弟とかじゃないよね。本当に瑠璃也?」
と聞くと、瑠璃也は頷く。それから、私の顔をじっと見てくるのだ。
「白那、ハグしていい?」
と言うのだけれど、あまりにも甘いニュアンスで聞いてくるので、こっちがパニックになる。
これは、誰だ?と思うのだった。
答えないままでいたら、
「白那。沈黙は同意だと思われる。いい?」
と言って瑠璃也は笑う。私はなぜか頷いていた。
瑠璃也の両腕が伸びてきて、包み込まれる。反射的に身構えたけれど、身体が冷えてくる感覚はなく、むしろぬくぬくとした温度にうっとりととろけそうになった。
自分の変化に驚いてしまう。
「痛かったね。ごめん、遅くなって」
身体を離し、頭を撫でられながら顔を見つめられていると、なぜか顔が熱くなってるのを感じた。瑠璃也の長い睫毛や端正な顔立ちが好きなのはもちろんだけど、顔に浮かぶ表情があまりにも柔らかくて、愛おしいと思ったのだ。
その時ばかりは、触らないで、と口にするのを忘れていた。
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