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無自覚な誘惑

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 その後まもなく、柳が帰ってきたので、衣服が乱れていなくてよかった、と心底思う。けれど、柳とともに執務室を出たとたん、柳が話を始めてきた。

「蓮見様にまんまと魔法を使わせたな」
「魔法?」
「だからこそ、その身体なんだろ?」
「麗史様は魔法を使ったのか?気づかなかったけど」
「そして、お前は蓮見様を誘惑していた、と」
「誘惑なんかしてねぇよ!麗史様が女になったとたん、あまりにも過剰な反応するから。帝王としては、女の身体に慣れた方が今後いいのかと思って。協力したいとは言ったけど」
「協力ね。どんなことを言ったのか、想像はできるが」

「妻帯に関しては柳にも言われたって、麗史様は言ってたし。柳も賛成だろ?」
 執務室を出て、階段を下がればオレや柳のいる特別棟の宿舎だ。
 階段を下り、柳の部屋に差しかかったところで、ちょうどそんな話をしていた。

「賛成か反対かと言えば賛成だ。ただ、花菱、お前は」
 柳が部屋の戸を開けたので、オレはまた明日、と挨拶をするつもりで片手をあげる。
 柳は上げた手を掴んできて、オレもろとも部屋の中に入った。


 強引にベッドに引き倒され、馬乗りにされる。
 柳がオレのシャツのボタンを引きちぎってきて、強引に胸元を開けられた。
「おいお前!ボタン付けが大変なの知ってるだろうな?」
「終わったらつけてやるよ」
 言いながら、胸を揉みしだき、その後で唇で露になった胸の先を甘噛みしてくる。
 初めての感覚に、背筋が震え、声が上がった。

「慣れた方がいい?よく言う。お前こそ、自分の身体に慣れた方がいいんじゃないか?」
 たちまちボトムスのボタンを外され、みるみるうちに下着姿にされてしまう。
 下着の上から、慣れない場所を指でなぞられた。
 身体が思わずのけぞりそうになる部分があり、オレは思わず柳の目を見る。

「お前も、したことがあるはずだろ?」
 といじわるに笑って、下着の中へと手を差し入れてきた。

 性急にことを急ごうとする気配を感じて、
「おい、生娘になにすんだよ」
 と水を差してみる。
「よく言う。オレの身体で慣れてみてください、とか言って迫ったんだろうに」
「な、お前なんでそれを」

「やはりな。こちらも許したか?」
 深く指を沈めてくる感覚に、まるで身体に強い電気が走ったかのように感じた。
 オレは首を横に振る。
 柳の指の動きに合わせて水音が聞こえるが、それを「こちら側」の立場で聞いたことはない。


 首筋や胸へと口付けを繰り返しながら、柳は丹念にその場所をならしていく。
 まるでさばかれるのを待つ魚のように、ただ横たわっているのは、男のオレからすれば、情けない話だ。

 ただ、柳がまるで愛でるがごとく丹念に口付けをしてくる様には、心が熱くなるものがある。
 こんな風に女を抱いてきたんだろうか?だとすれば、そんな相手は幸福だ。

「蓮見様の未来を案じる気持ちは分かるが、お前はオレのものだよ。まずは、オレからというのが筋だろう?」
 柳の言わんとすることが分かり、顔が熱くなる。
 しかしオレにはそんなつもりがあって、麗史様に提案をしたわけじゃなかった。

「そういうつもりで麗史様に言ったわけじゃない」
「どういうつもりだろうが、ダメだよ。花菱はオレを煽ったんだから」
 少し砕けた口調になり、柳もシャツの前をひらいていく。
 憎たらしいくらいに、鍛え抜かれた上半身があらわになり、見事な様子に思わず息を飲んだ。

「ずるいな。見事すぎる。オレだって、そんな身体が欲しかった」
 とぼやいてしまう。
 いくら鍛えても、柳のような先天的な体質や遺伝子をベースとした、努力や鍛錬の妙にはなかなか到達できない。

「くれてやるよ」
 と言いいじわるに笑うと、ずるり、とオレの中から指を引き抜いた。
 ズボンの前を開き、熱を帯びている柳自身をぐんと突き刺してくる。

 まず異物感と違和感が襲ってきて、声が上がる。
 こんな感覚を経験したことはなかった。柳は腰を引き、打ちつける。
 そんな寄せては引く動きに、声が共鳴する。

 柳が深く口付けてきて、それからオレの目をとらえた。
 精悍な顔には今、焦りがにじんでいる。そして、瞳の中にはどこか柔らかい蜜のような優しさもあった。

 なんだコレ?
「柳?」
「壮也と、呼んでくれ」
 熱い息の狭間で柳は言う。
 何度も口付けられ、顔中が熱い。
 柳の勢いが増し、内側を強くこすりあげられたため腰がはねた。

「はやく」
 せかす合図だったらしい。
「壮也」
 ほとんど息のような声で囁くと、柳は一層強く突きあげてきて、
「やっと、手に入れた。葉」
 とオレの身体に沈み込んできた。

 内部の膨張で、柳が達したことを知る。
 脱力しオレの身体に覆いかぶさってきた。
 柳の熱く重い身体を全て受けとめていたら、無性に愛おしくなる。

 一方で、頭の中に浮かぶ一つのイメージがあった。
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