ワンナイトだって言ったのに！

ワンナイトだけでお願いします

　その人が私めがけて口撃をしかけてきたのは、覚えている。
　二次会として移動した先のバーで、その人は誰かと飲んでいたように記憶していた。

　私は隣りあっていた同僚の男友達と話をしていて、
「さっき聞いたんだけど。篠井さん、ワンナイトしかしないって本当？オレもありなの？」
　と聞かれる。
　複数人の飲み会で、そんな話も出ていたし、中々盛りあがっていたように思った。恋人いらないという意味で、ワンナイトだけ、と言っている。

「あり。でもゴムの常備ないから、今日はダメ」
「えーなんで？」

　今話している目の前の彼は、どうも彼女が欲しい気配を醸しだしている。彼女と別れたこと、友達が結婚して寂しいことを話していたのだ。
　さらに勢いでガンガン来るわけでもなく、ゆるやかーな探り合いを続けているので、のれない。

「彼氏二年いないって本当？」
「本当だよ、遠距離で別れてるから」
「近距離で探す気ないの？」
「な～い」

「移動する？」
　と手を重ねてきて言われたけれど、あまり軽くない感じがしたので、検査を促して、話をおしまいにしようと思っていた。
「また次回、検査しといて～」
　と返していた。

「えーなんで？」
「私は検査結果を今すぐにでも出せるよ。元カレでこりたから」
　相手が引くかどうかを測ってみる。すぐに出せるはさすがに嘘だけど。とにかく面倒はいやだった。引いてくれていい。帰りたい。


　相手は、やば、と言葉を切るけれど、なおも押してくる。
「えーないって、病気。風俗とか行かないし」
「元カノが風俗嬢じゃないかどうか、証明できる？」
「ないない」
「逆に女風行ってない保証は？浮気されてない？」
「ないよ、絶対。軽い子いなかったし」

「じゃあ、また今度～」
「本当にダメ？」
　と甘えてくるので、軽口を叩きあいながらさらに相手を分析する。