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身に覚えのない恋人
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「冬茜あやせと申します」
公用スペースの一画で話をしていた私たちの元に、声がかかる。
ダークブラウンの髪とデュルブルーの瞳を持つ、顔の柔和な青年が登場した。
「初めまして、僕は冬茜あやせと申します。環さんとお付き合いをさせていただいております」
折り目正しく挨拶をして、頭をさげる。丁寧な所作は思わず目を奪われてしまうほどだ。冬茜あやせと付き合っている事実はない。
それにしびしびっと痺れてしまう声音を環が間違うわけがない。
――――輝夜?
「冬茜?風紀委員の君がなぜここに?」夏嶺は気づいていない様子だ。
「環さんのご両親がここにいらっしゃると聞いて、参りました。お付き合いをさせていただいております」
「聞かない名前だ。政界関係者じゃないな」
環の父は言う。冬茜は心導国出身ではない、と環は聞いていた。
「移住してきました。ルーツは盗心国です」
彼はそう告げて、今日はご挨拶に留めさせていただきますね、と言って去って行く。環はその後姿をじっと見つめていた。
「軽やかな男だ。あれがお前の恋人なのか?」
「そう、みたい」
曖昧な返事をしておく。輝夜はどうしてあんな姿に?と思ったのだ。けれどどんな姿であっても、環が輝夜を間違うわけがない。
「おかしいな、春黎党首がお付き合いしているのはたしか」
夏嶺は首をかしげる。
「というわけで、結婚の話はなかったことに。連立政権云々はご勝手にして。結局は心投票権を持つ、有権者次第だものっ」
環はそうして何とかその場をやり過ごした。
公用スペースの一画で話をしていた私たちの元に、声がかかる。
ダークブラウンの髪とデュルブルーの瞳を持つ、顔の柔和な青年が登場した。
「初めまして、僕は冬茜あやせと申します。環さんとお付き合いをさせていただいております」
折り目正しく挨拶をして、頭をさげる。丁寧な所作は思わず目を奪われてしまうほどだ。冬茜あやせと付き合っている事実はない。
それにしびしびっと痺れてしまう声音を環が間違うわけがない。
――――輝夜?
「冬茜?風紀委員の君がなぜここに?」夏嶺は気づいていない様子だ。
「環さんのご両親がここにいらっしゃると聞いて、参りました。お付き合いをさせていただいております」
「聞かない名前だ。政界関係者じゃないな」
環の父は言う。冬茜は心導国出身ではない、と環は聞いていた。
「移住してきました。ルーツは盗心国です」
彼はそう告げて、今日はご挨拶に留めさせていただきますね、と言って去って行く。環はその後姿をじっと見つめていた。
「軽やかな男だ。あれがお前の恋人なのか?」
「そう、みたい」
曖昧な返事をしておく。輝夜はどうしてあんな姿に?と思ったのだ。けれどどんな姿であっても、環が輝夜を間違うわけがない。
「おかしいな、春黎党首がお付き合いしているのはたしか」
夏嶺は首をかしげる。
「というわけで、結婚の話はなかったことに。連立政権云々はご勝手にして。結局は心投票権を持つ、有権者次第だものっ」
環はそうして何とかその場をやり過ごした。
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