46 / 90
神獣の目覚め
2
しおりを挟む
そのとき、再び大きな気の高まりを感じる。
三名はそれぞれ気配の出どころを探り、見まわしていると、坤宮の洞窟の奥から何十本何百本もの蔦や、緑葉がこちらへ向かって伸びてくるのが分かった。その後、勢いよくやって来た木の根が壁を伝い、樹木がどんどん生えていく。
「なぜ」
「一体、これは?」言葉を漏らす瑠亀と劉龍を尻目に、
「これはちょうどよい」
麗虎が伸びすぎた樹木を刈っていく。洞窟内は木気が充溢していった。劉龍は木気に碧羅の両親の気配に似たもの、あるいは自分に加護を与えてくれた神獣の気配に似たものを感じる。
水気を吸って土気を使い、どんどん草木が育っていく様を、劉龍は見守るほかない。花や樹木を愛でる李龍や桃龍を思い出させる感覚もある。そして、勢いよく育つ、静の樹木のような伸びやかさも感じた。
「これは、碧羅の神獣の気配だな」と麗虎は劉龍が感じたことを形容する。
「静、か?」
自分ではないとなれば、神獣に関係があるのは、静だ。静の身に何かがあったのかもしれない、と劉龍は思う。静の気を探るが、強すぎる木気により、なかなか難しい。あの静がそう簡単に倒れるわけがない、とは劉龍は思っているが、鬼脈では何が起こるか分からないとも思う。
無事でいてくれ、静。と劉龍は祈るのみだ。
一方で艮宮からの部隊では、飛鳥を始め、虎牙や璃蛇もまた、強い木気を感じていた。
金気の強い空間をすぎ、水気の高い鍾乳洞を歩いていたところ、苔やシダなどの草木が天井や壁へと次から次へと芽生えていく。水気を吸いあげていくと、どんどん蔦を伸ばしていき、花を咲かせていった。
「静?」
飛鳥は自身の爪に結びついてきた蔦に、静の気配を感じ、辺りを見回す。
「凄まじい木気だな、本当に静龍か?」
虎牙がそう言ったときに、鐘の音が響いた。坤宮からの部隊が鐘を鳴らしたようだ。
「こんなに早く制圧できるでしょうか」と璃蛇は言うが、鳴り響く鐘の音はどんどん大きくなっていく。そよ風が洞窟の中から吹いてきたかと思えば、風がどんどん強くなっていき、突風となった。根を張った草木の葉が散り、三人は目をつぶる。
飛鳥は自身の羽毛に、何者かが触れる感覚を感じた。
「ただいま、飛鳥」
清浄な鈴の音が聞こえる。馴染みのある香りのするそよ風を感じ、飛鳥は変化を解いた。
三名はそれぞれ気配の出どころを探り、見まわしていると、坤宮の洞窟の奥から何十本何百本もの蔦や、緑葉がこちらへ向かって伸びてくるのが分かった。その後、勢いよくやって来た木の根が壁を伝い、樹木がどんどん生えていく。
「なぜ」
「一体、これは?」言葉を漏らす瑠亀と劉龍を尻目に、
「これはちょうどよい」
麗虎が伸びすぎた樹木を刈っていく。洞窟内は木気が充溢していった。劉龍は木気に碧羅の両親の気配に似たもの、あるいは自分に加護を与えてくれた神獣の気配に似たものを感じる。
水気を吸って土気を使い、どんどん草木が育っていく様を、劉龍は見守るほかない。花や樹木を愛でる李龍や桃龍を思い出させる感覚もある。そして、勢いよく育つ、静の樹木のような伸びやかさも感じた。
「これは、碧羅の神獣の気配だな」と麗虎は劉龍が感じたことを形容する。
「静、か?」
自分ではないとなれば、神獣に関係があるのは、静だ。静の身に何かがあったのかもしれない、と劉龍は思う。静の気を探るが、強すぎる木気により、なかなか難しい。あの静がそう簡単に倒れるわけがない、とは劉龍は思っているが、鬼脈では何が起こるか分からないとも思う。
無事でいてくれ、静。と劉龍は祈るのみだ。
一方で艮宮からの部隊では、飛鳥を始め、虎牙や璃蛇もまた、強い木気を感じていた。
金気の強い空間をすぎ、水気の高い鍾乳洞を歩いていたところ、苔やシダなどの草木が天井や壁へと次から次へと芽生えていく。水気を吸いあげていくと、どんどん蔦を伸ばしていき、花を咲かせていった。
「静?」
飛鳥は自身の爪に結びついてきた蔦に、静の気配を感じ、辺りを見回す。
「凄まじい木気だな、本当に静龍か?」
虎牙がそう言ったときに、鐘の音が響いた。坤宮からの部隊が鐘を鳴らしたようだ。
「こんなに早く制圧できるでしょうか」と璃蛇は言うが、鳴り響く鐘の音はどんどん大きくなっていく。そよ風が洞窟の中から吹いてきたかと思えば、風がどんどん強くなっていき、突風となった。根を張った草木の葉が散り、三人は目をつぶる。
飛鳥は自身の羽毛に、何者かが触れる感覚を感じた。
「ただいま、飛鳥」
清浄な鈴の音が聞こえる。馴染みのある香りのするそよ風を感じ、飛鳥は変化を解いた。
1
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる