魂レベルでビッチです～ヤンデレ彼氏に殺されて悪役令嬢に転生したらしいので、処刑上等で自由な異世界ライフを楽しみます！～

処女受胎

4

　今、目の前で私の額を撫でるランスにそっくりな彼は、
「お姉さん大変ですね」
　と言ってハンバーガーを手に取る。

「ほとんど受け付けないけど、なんとか食べられるものがそこのピクルスとポテトだって言うから。私が期間限定でお姉ちゃんちにデリバリーやってるんだ。つわりってコックピットで操作されるロボット気分なんだって。完全に胎児に操られてるらしいよ。女の人って大変みたいだね」
「たしかに大変だとは思いますけど。舞日さんはどこか他人事みたいですね」

「私は結婚予定もないし、今彼氏もいないからなぁ」
　言ってみてから、あ、これだと狙ってるみたいに聞こえるな、と思ったのだ。
　匂わせないように、セフレはいるけどね、と付け加えたら、悲緒がそこまで聞いてませんよ、と苦笑する。

「差し入れなにがいいですか？今もらってしまったから、舞日さんの好きなもの教えてください」
「気にしないで、今回のはもらってくれるだけでありがたいから。あ、でも、噂のチョコレート欲しいなぁ？どこのなの？美味しそう」
　と返す。

　悲緒がいつもチョコレートを配っているのを知っていた。甘党な男の子っていいなぁ、と女性社員の中で話題になっていたのだ。

「ハイスクールの友達がショコラティエなんです。今はパリで出店してて。じゃあ舞日さんには、来週のバレンタインデーに本命としてプレゼントします」
　と言うので、わぁ、さすがぁ、本場のリップサービスっと言ったらまた苦笑いされてしまった。




「酸味のある果物でも持ってこさせるよ」
　とランスは言う。
「誰の子であれ、君には無事に産んで欲しいんだ」

　ランスの柔らかな笑顔を見て、姉の子どもが生まれたと報告したときに、「おめでとうございます」と喜んでくれた悲緒の顔を今思い出した。

　あ、そっか。そんな時もあったんだね、付き合う前には悲緒はそんな顔をしていた。
　でも、今さら思い出してもしょうがないね。

　ランスは一人の伝令を残していき、「何か欲しいものがあれば、彼に伝えてくれ」と言って去って行く。

　その日のうちに、グレープフルーツに似たハート型の果物が届いた。味はピンクグレープフルーツに似ていて、ハート型の皮の中にハート型の粒の果肉がついている。こんな果実は前世では見たことがないので、恐らくこの世界独特の食べ物なのだと思う。

　お礼の文を書いて、遣いを出して届けてもらった。