魂レベルでビッチです～ヤンデレ彼氏に殺されて悪役令嬢に転生したらしいので、処刑上等で自由な異世界ライフを楽しみます！～

最低の殺人鬼・出雲悲緒

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　帰国子女だから勝手に早熟だ、と周囲から誤解を受けつづけながらも実際には経験がない。キスやハグ以上の親密な関係は経験がなかったからだ。俺はすっかり途方に暮れてしまった。
　一方で彼女の経験は両手両足を合わせても足りないようで、俺の経験がどうであるかなんて、どうでもいいようだ。
　楽しければいいし、その空間が心地よければいい。シンプルシンキングの彼女が好きだった。
　彼女が諸々の雑味を取り払ったシンプルな付き合いが好きなのは、感じている。
　けれど、恋愛以外ではリードせよ、強くあれ、賢くあれ、と教育されてきて、それなりに上手くこなしてきた自分の虚像が邪魔をしていた。
　スマートにこなさなければいけない、と思っているのに、どれもこれも上手くできない自分に愕然として、結果彼女に当たることになる。
　彼女はどこまでも受け入れてくれて、何でも開示してくれる。嘘もなければ虚栄もない。そんな彼女といると、自分の矮小さを悟るのだった。

　楽華と付き合ってすぐに、彼女の元恋人を名乗る人物からソーシャルメディア経由で連絡があった。
「楽華は、あんたじゃ合わない。早く解放してやった方が身のため」
　と嫉妬や煽りを含んだメッセージが日々届く。
「解放してやった方が身のため」
　はたしかに的を射ている。

　何度も届くメッセージでは、相手が彼女と付き合って来たときの写真やメッセージのスクリーンショットが送られてくる。

　媚態から明るい笑顔まで、どこまでも飾り気のない姿の彼女を見て、五臓六腑に墨が流し込まれたように感じていた。俺には見せない姿が、そこにあったからだ。

　何度も繰り返し送って来るメッセージを見るたびに、その人物に、俺は敵わないと感じる。楽華は俺にこんな風に微笑まない。
　そう思ったとたんに、彼女との関係はさらに歪んだ。