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ロアシュ・プディング

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「危ないですよ、西区で護衛もつけずにフラフラしてるなんて。オレが見かけたから良かったですけど」
 ジョーがいたけど、知り合いなの?と聞きたくて、衝立の向こう側を指差してみる。

「あ?あっちに行きたいんですか?無理ですよ。お嬢にはやってもらいたいことがあるんで」
 やってもらいたいこと?口の形だけで尋ねてみる。ロアシュはうなずいた。

「ここは娼館です。しばらくお嬢にはここにいてもらいます。場合によってはお客がくるかもしれませんけど、お相手してやってください」

 しょーかん?と繰り返す。耳慣れない言葉だった。召喚?サモンのこと?と思うけれど、私が口唇の動きで尋ねれば、ロアシュはははっと軽薄な笑い声をあげる。

「箱入りのお嬢が知らないのも無理ありませんよね。天下のリーブル家のご令嬢だ。こんなところに縁はない。本当なら」
 言いぶりにどこか刺があった。
「ここは、男が女を買う場所ですよ。お嬢のようなご令嬢には一生縁がない場所かもしれないですね」

 風俗店かぁ、と頭で変換する。けれど、なんでここにいなくちゃいけないんだろう?
 話すことも出来ずに、動くことも出来ないのでロアシュの顔を見あげていたら、彼は舌打ちをしてくる。

「あんな腑抜けな婚約者、クラド・ルイドランのために、とんでもないことをしたって知ってます?」
 ベッドの上に乗って来て、私の顔を覗き込んできた。
 とんでもないことをした覚えはないので、首を振る。まだ私は大した悪さはしていないのだ。ロアシュが唇を噛みしめるのを見た。

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