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落ちたら、戻れないから

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 店から出て、輝夜の家に行った。
 彼はいくつかの秘密を明かしてくれる。

「父は雅さんを求めてやまないんだ。彼に似なかったオレは、父のお眼鏡にはかなわなかったらしい」

 私が見つけた適合リストの本当の意味を、私はその時知る。そして妊活契約を持ちかけてきた輝夜の意図も、聞かせてもらった。
 春黎雅の遺伝子を最適化する組み合わせをはじき出したリストらしいのだ。

「どんな事情であっても、環を傷つけたことには変わりない」
「輝夜にもう一度ふられたら。私の心は壊れてしまうと思うの。ううん、壊れてもずっと好きかもしれない」

「試すような真似をして、悪かった。オレの本意じゃなかったとはいえ、決めたのはオレ自身だ。環は環境を追われてしまったし、謝っても許されるとは思わない」
「私は試験に合格したの?」

 輝夜は頭をふって、
「最低な試験だ、軽蔑してくれてもいい」
 と言う。
「ただ条件は厳しいね。あと何日くらいあるの?」

「百日は切っているな」
「だとすれば……約三クール」

 私達は見つめ合う。

 正常の排卵でそのクールに毎日行為をしていれば、私達の年齢なら四割弱の受胎率があるようだ。正常であるかどうかは、初めてみなければ分からない。原因不明の不妊だってあるはずだ。

「冬茜あやせが再婚すれば関係ない。環に無理強いはしない」
「無理強いしていたのに」

「囲い込まれているんだ。実らなければ、オレ達は義理の姉弟になるのかもしれない」
「え。まさか、夏嶺さんが?」

「結婚するんだろ?」

 鋭い眼差しがこちらを向く。咎められたわけじゃないけれど、真意を問われているような気がして、私は唇を噛みしめた。
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