悪女で候。十回の前世で聖女はやめました、現世は聖痕を血痕で塗りかえます。

初恋を捧ぐ

3

　行くよ、いった声がけと共に、腿の間にぬるっと入り込むそれは、十分な弾力性があり私の中を割っていく。
　
　息が止まりそうになったところで、口づけが来る。口唇を割るように舌が入って来て、すっと腰の力が抜けた。

　必死でゼリュードの背中につかまって奥まで這い入ってもらう。
　ジェラートの中は温かい、とゼリュードが言う。

　動くよ、と言われて内臓が押しあげられるようで、急に息が苦しくなった。自分の中からじゅぷっと音がたつのと同時に、おのずから短く悲鳴のような声があがってしまう。

　初めてゼリュードと正面から繋がっていることに、私は目頭が熱くなった。目いっぱい抱き合えば彼の髪が鼻元をかすめる。
　ゼリュードの髪からする香ばしいパンのような香りをかぎ、愛おしくなった。孤児院の匂いが残っている。

　私たちのはじまりの場所の匂いだ。
　やはり痛みはあったけれど、目元につたう涙をゼリュードが指で拭ってくれた。

　私たちは人間らしい最後の夜を、過ごしたのだ。