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悪魔の相談

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「聖女を餌に近づいてきた人を一網打尽にしてしまえば、聖女信仰は消えるかもしれない」
「正気か?」
「聖女に近づけば死が近づく。そんな風説がたてば、聖女を求める人が消えると思う」

 仄暗い相談話だ。私の言葉にゼリュードは生唾を飲み込む。こんなひどい話には当然の反応だ。彼には孤児院に帰ってもらえばいい。
 私は自分に近づいてきた者を片っ端から、屠っていくつもりだ。聖女の祝福の力を破滅のために、使えばいい。

「もし、ジェラートが望むなら。この剣はジェラートのために使うよ」
「待って、剣を使う?それは」
「どんな形であっても、ジェラートを護れるならば。捧げる。それが例えば悪魔に魂を売るようなものであっても」

 ゼリュードは私の手を取り、その甲に口づけをする。まるで騎士が主人にするように。
 小さい頃から、聖女の剣士になると言ってくれていたゼリュード。
 今もまたこうして、私のそばにいてくれる。どうしてだろう。
 
 とんとんとん、と壁の板が風で揺れる音がした。
「どうして、ゼリュードは聖女の剣士を目指したの」
「聖女の剣士じゃない。ジェラートの剣士だよ」
 ゼリュードの眼差しはいつも変わらない。真っすぐ私をとらえている。婚姻しなければこんなにも真っすぐな視線を向けてくれるのだ。

「どうして」
「ジェラートのことが好きだから」
 それは、私も同じだった。
 彼は初恋の相手だ。

 ずっと結ばれたいと思って、何度も転生した相手なのだから。
 私の手の甲を頬に寄せるようにして、慈しむかのように触れる。ゼリュードは私を裏切ったことはない。ずっと義理堅くそばにいてくれた。

「私も、ゼリュードのことが」
 ゼリュードの瞳が、それ以上言うなと告げている。婚姻を目指さないと決めたのだから、と諫める視線を送って来た。
 好きだとも言わせてくれないの?
 聖女だから?
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