悪女で候。十回の前世で聖女はやめました、現世は聖痕を血痕で塗りかえます。

娼婦デビュー

3

　ドレスの裾を持ちあげて、腿を割る。身体を間に挟みこんできて、逃げられないように固定された。
　カチャカチャとベルトを外す音がしてひゅんっと背中が寒くなる。

　下着を引きずりさげて、あっという間に指を入れ込んできた。技術もなにもいらない。これは、これまでの婚姻と同様に足を開けばいい種類のものだ。額の熱が伝播し、体中が熱くなってくる。

「はぁっ」

　思わず声が出れば、相手は私の声を興奮の種にしてせわしなく動き始めた。身体を沈めてくる気配があったので、即座にいやっ、と身体をひねる。そしたら後ろ髪を引っ張られて、今度は後ろからドレスをめくりあげてきた。お尻が丸出しになり、その左右のふくらみを叩かれる。

「逃げるな、後で神殿に連れていく」
　背中に吐息を受けていたら、ゼリュードのことが思い出されてしまう。

　――――だめ、そんなバカな想像はしちゃいけない。

　私は娼婦になる。

　ジェラートと結ばれたいと思っていた、と言ってくれていた。彼との婚姻が死ぬほどいやだったわけじゃない。聖女である自分と決別したかっただけだ。聖女である以上、本当の意味で愛されることなんてないと思ったから。