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娼婦デビュー

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 私は女性に案内されて、屋敷の一室を用意される。そこで一夜を過ごすように言われた。
「客をとってみて、評判を聞いてみるよ。腕前を見せてごらん」
 私が部屋で待機しはじめて間もなく、声がかかる。
 相手は軍の役職付きの男だ。私はその人を見て、驚く。何回か前の人生で婚姻したことがある人だった。
「小娘じゃないか」
 言い捨てる唇は相変わらずだ。不躾に私の顎に手を当てて、品定めをしてくる。
「ただ、器量はそう悪くはない、か」

 ツンと取り澄ました表情が印象的な男で、口ぶりは冷たい。けれど私の胸元に視線を向けたかと思えば、ふん、と鼻を鳴らして、即座に脱げ、と言ってくる。

 脱げと言われた記憶が蘇ってきて、身体が硬直した。彼の婚姻では無理矢理寝台に引き倒されて抱かれた記憶しかない。
 私が棒立ちになっていると、明らかに不機嫌な顔になる。どんくさい小娘だな、と言いながら、強引にドレスをめくりあげ下腿に手をねじり込んで触れてきた。

「あぁっ」
 と声を出したら、その瞬間に額に熱いものを感じた。じりじりと焼けるような痛みを感じて、私は自分の額に触れる。目の前の男が目を見開いて驚いていた。

「その印は、聖女の印だな」
「う、そ……」
 額に感じる熱はたしかに、聖痕が出るときの感覚だ。これまでの十回の人生で経験してきている。男は私の手を取って来た。

「聖女の加護を、こんな場所で得られるとは思わなかったな」
 男の歪んだ口元を見て、あぁ、とため息がもれる。
 ここで、また、終わってしまうの?聖女として見つけられて、誰かの妻にされるの?

 男は私を寝台に引き倒した。冷たい瞳の中には、私の姿は移っていないように思える。見えているのは聖痕だけだ。
「まずは、いただいておこうか。それから」

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