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十一回目の宣言
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「もしジェラートが聖女になったら。オレは剣となり君を護るよ」
追って来たゼリュードは言う。
それは、前の十回の人生でも言われたことだ。その言葉を信じていたし、だからこそ、彼との婚姻を夢見ていたけれど。
もう、夢を見るのはやめた。
「その剣はもっとふさわしい、清らかな方に使ってさしあげたらいい」
「誓いをたてるのはジェラートにだって、昔から決めている」
固い意志を告げる真っすぐな瞳。綺麗なラピスラズリ色の瞳に私の顔が映る。
私はその瞳が好きだ。
護ってもらうことを夢見ていた。でも、それは彼が私を誤解していてくれたからだ。
「私は聖女にもならないし、将来誰とも婚姻もしない」
「婚姻をしないのか?なぜ?」
とっくに経験しているからです、と言っても、きっと通用しない。
「髪を乾かしてから中に入るから」
「あまり、機嫌がよくないのか?」
「そうじゃない、別に普通だよ」
ゼリュードは探るような目で見てくる。戸惑いの視線を受けるのは辛かった。目の前にいる一つ年上の幼なじみ、ゼリュードが私を傷つけたわけじゃない。
「ジェラートは機嫌が悪いと、別にって言うんだよ」
「そう?知っているようでいて、ゼリュードは私のことを知らないのかもしれない」
「分かった、また後で」
ゼリュードは肩をすくめて去って行った。
私が婚姻したのは、聖印騎士の訓練の末に聖女付きの剣士となった22歳のゼリュードだ。
彼は幼い頃の約束通り、聖女付きの剣士になってくれた。そして九回の人生ではあちこちに召し抱えられた際には私の側近になっている。
十回目のとき国外追放された私を探し出してくれたのはゼリュードだ。彼に見つけてもらう前に、あちこちに身を寄せていた私にまつわる噂をすべて信じ切っていたらしい。
その後、婚姻したときには、すっかり態度が変わっていた。
彼は義理堅い剣士だ。
けれど婚姻したら豹変するに違いない。
それに聖女にならないと決めた私には、縁がない。
追って来たゼリュードは言う。
それは、前の十回の人生でも言われたことだ。その言葉を信じていたし、だからこそ、彼との婚姻を夢見ていたけれど。
もう、夢を見るのはやめた。
「その剣はもっとふさわしい、清らかな方に使ってさしあげたらいい」
「誓いをたてるのはジェラートにだって、昔から決めている」
固い意志を告げる真っすぐな瞳。綺麗なラピスラズリ色の瞳に私の顔が映る。
私はその瞳が好きだ。
護ってもらうことを夢見ていた。でも、それは彼が私を誤解していてくれたからだ。
「私は聖女にもならないし、将来誰とも婚姻もしない」
「婚姻をしないのか?なぜ?」
とっくに経験しているからです、と言っても、きっと通用しない。
「髪を乾かしてから中に入るから」
「あまり、機嫌がよくないのか?」
「そうじゃない、別に普通だよ」
ゼリュードは探るような目で見てくる。戸惑いの視線を受けるのは辛かった。目の前にいる一つ年上の幼なじみ、ゼリュードが私を傷つけたわけじゃない。
「ジェラートは機嫌が悪いと、別にって言うんだよ」
「そう?知っているようでいて、ゼリュードは私のことを知らないのかもしれない」
「分かった、また後で」
ゼリュードは肩をすくめて去って行った。
私が婚姻したのは、聖印騎士の訓練の末に聖女付きの剣士となった22歳のゼリュードだ。
彼は幼い頃の約束通り、聖女付きの剣士になってくれた。そして九回の人生ではあちこちに召し抱えられた際には私の側近になっている。
十回目のとき国外追放された私を探し出してくれたのはゼリュードだ。彼に見つけてもらう前に、あちこちに身を寄せていた私にまつわる噂をすべて信じ切っていたらしい。
その後、婚姻したときには、すっかり態度が変わっていた。
彼は義理堅い剣士だ。
けれど婚姻したら豹変するに違いない。
それに聖女にならないと決めた私には、縁がない。
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