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聖女はかく語りき。
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しおりを挟む初めてだと知ったとたんに、彼はおろおろしだして、
「単なる嫉妬だった。あちこちで媚態の話を聞くのが我慢ならなくて。あんなのただの煽り文句だ」
と言い訳じみたことを言いだしたので、百年の恋も冷める。
ひどい形で純潔が奪われてしまってから、優しくなるなんてひどい。泣けてきてしまった。
どの方々も、私を愛していたわけではない。聖女を抱くこと、純潔の乙女を抱くことに価値を求めていた。
幼なじみの剣士もそうだ。
自分以外が手を触れたお手付きの女には優しくない。自分が最初の男だと思ったとたんに豹変して、愛妻家となる。
聖女を初めて手に入れた男としての謎の誇りを持って、
「昔誓った通り。ジェラート、君を護るよ。この剣は君のために捧げる」
と言い始めた。
ごめんなさい、私の心は純潔ではありません。
あなたの好きな清らかな乙女ではないです。
あなたのことが好きだったから、婚姻は嬉しかったけれど。あなたの好きな女性ではないのでしょう。もう、婚姻は十回目です。
さめざめと泣いても、何にもならない。
私には親も後ろ盾もないのだから。ただ聖女の力だけがあった。でもその力では、自分を幸せにはできないらしい。
私は聖女をやめることにしたのだ。
さよなら、と初恋の剣士に別れを告げて、十回目の聖女人生に幕を閉じた。
盗賊に殺されたことにして、自害する。
十一回目は悪女として生きることにした。悪女、ジェラートとして。
幼なじみの剣士、ゼリュードさようなら。
私はもう、泣きません。あなたとの婚姻を目指しません。
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