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28.学園生活

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「マルスさまぁ」

「ルチア! 身体はもう、大丈夫なのか?」

「はい、マルス様のおかげで元気になりましたぁ!」

 ルチア様が、殿下に向かって駆け寄っていきます。そして、殿下のうでに馴れ馴れしくも巻き付きました。

 その姿を見たわたくしは、高位の貴族令嬢として、苦言を呈します。

「ルチア様? そのように殿方にべたべたとお触りになって……下品でいらっしゃいますわ? そのようなお方が、この王立学園にふさわしいのかしら?」

「ナリアンヌ!? どうしたんだ、そんな物言い!」

 わたくしの発言を、お兄様が慌ててお止めになります。どうして? だって、わたくしこそ公爵令嬢。下劣な聖女を名乗る女に……。わたくし、今、なんてことを考えていたのかしら?

「お兄様……? わたくし、今……なにを?」


「ナリアンヌ・ハーマート! いつもいつも聖女ルチアをいじめて、その無礼な言葉はなんとかならないのか!?」

「も、申し訳ございません、殿下。わたくし、気づいたらルチア様に失礼なお言葉を……」

「ナリアンヌ様がこわかったですわぁ。マルスさまぁ」

「……そ、そのように謝るのならば、今日のところは許してやろう! さぁ、ルチア。こちらにおいで」


 わたくしを見て、にやりと笑みを浮かべるルチア様。何かがおかしい気がしますわ。

「ナリアンヌ……」

 わたくしたちの様子を見て、学園の皆様は混乱した表情を浮かべていらっしゃいます。

 アル先生が慌てた様子でルチア様の近くに走っていらっしゃいました。アル先生が走るお姿、はじめてお見かけいたしました。そんなアル先生にも抱きつくルチア様。そんなルチア様に、マサットウ公爵令息様が愛をささやき、殿下とサタリー様がルチア様を取り合っていらっしゃいます。

「きっと攻略なさったのね、ルチア様は」

 攻略って何だったかしら。

「なにがどうなっているのだ?」

 お兄様も、皆様同様混乱していらっしゃるようです。ルチア様一行を見送ると、メルテウス様が転移していらっしゃいました。

「ナリアンヌ。大丈夫? ほら、これを読んでごらん」

「メルテウス様……?」

 メルテウス様が差し出したのは、わたくしのノート。何を書き留めたのかしら……。


”ゲームの内容

ある日、聖女としてルチア(確か召喚当時十歳前後?)(たしか、神殿が召喚術を行った)

王立学園に通うこととなった聖女ルチア(十五歳)。その愛らしさと天真爛漫さ、癒やされる性格で攻略対象者たち癒やす。共に魔物を倒すことで次々と恋に落としていく。”



「ゲーム……?」

「ナリアンヌ、思い出した?」

「……えぇ、思い出しましたわ。わたくし、悪役令嬢ですの」

 わたくしがすべてを思い出すと同時に、メルテウス様に視線を向けます。

「……メルテウス様は、いったい?」

「今は何も言えないけれど、必ず君を救うと誓うよ、ナリアンヌ」

 そう微笑んで、メルテウスさまは転移なさいました。


「ナリアンヌ?」

「お兄様。心配をおかけして申し訳ございません。わたくし、すべてを思い出しましたわ」

「ナリアンヌが大丈夫というのなら、大丈夫だね。安心したよ」

「えぇ」








 そう微笑んで、わたくしは教室へと向かうのでした。


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